多くの会社では、「常勤社員の所定労働時間は8時間」とされていますが、1日8時間は「法定の上限勤務時間」ですので、必ずしも8時間に設定する必要はありません。例えば、会社によっては「7時間45分」と定めることも可能です。
この場合、法定で与えなければならない「休憩時間」は何分なのか?が疑問として生じます。
労働基準法にのっとり、会社の所定労働時間ごとの正しい休憩時間の理解を深めて、働く側と雇う側が納得のいく労働環境を整えましょう。
目次
7時間45分勤務の場合は、休憩45分で大丈夫?
日本の労働基準法第34条では、労働時間が6時間を超えて8時間以内の場合は、45分の休憩時間を確保する義務があるため、7時間45分労働であれば休憩45分で大丈夫です。
7時間45分を超えても8時間00分以内の勤務時間であれば、休息45分で法的な問題はありませんが、従業員への負担が大きくなることを懸念して十分な休息を設けることも大切です。
5時間勤務の場合の休憩時間は?
5時間勤務の場合は、労働基準法が定める6時間を超えていないため、法律上は休憩時間を設ける必要がありませんが、必要に応じて休憩時間を設けてもOKです。
原則、5時間勤務の場合は休憩時間なしで仕事をしても違法になりませんので、働く側と雇う側で相談したり、基本的なルールを決めて休憩の導入を明確にすると良いです。
残業した場合の休憩時間の考え方とは?
労働基準法では労働時間が6時間を超えるのであれば45分以上、8時間を超えるのであれば60分以上の休憩時間を与えることが義務付けられていて、残業にも適用されます。
この法律は推奨ではなく「使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない」と記載されている義務ですので、残業によって時間が伸びたのであれば必ず休憩を設けましょう。
5時間勤務の労働者が、1時間超の残業をしたケース
もともと労働時間が5時間と決まっていた労働者が、1時間超の残業をすることになった場合、労働時間は6時間を超えるため、45分の休憩を設ける必要があります。
早い段階で6時間超えの労働が確定したのであれば1働いて45分休憩して3時間働くというタイムスケジュールにすると負担が減ります。
急遽、労働時間が伸びたのであれば、その時点で45分休憩を設けて、残り1時間の労働をする流れになります。
5時間勤務の労働者が、3時間超の残業をしたケース
もともと労働時間が5時間と決まっていた労働者が、3時間超の残業をすることになった場合、労働時間は8時間を超えるため、1時間の休憩を設ける必要があります。
早い段階で長時間の残業が確定したのであれば、働く時間が偏らないように中間のタイミングで休憩を挟むのがおすすめです。
6時間超の勤務の労働者が、2時間残業したケース
もともと労働時間が6時間超の労働者が、2時間以上の残業をすることになった場合、労働時間は8時間になるため追加で15分の休憩を設ける必要があります。
すでに休憩を終えた後に残業が決まったのであれば、追加で15分の休憩をするようにしてください。
一方、早い段階で残業を含めて8時間以上の労働が決まったのであれば、1時間まとめて休憩を取るか、30分を2回に分けるかなど工夫できるでしょう。
12時間労働の場合の休憩は?
労働基準法には6時間超え、8時間超えの労働に対する休憩時間の義務化は明確にしているものの、12時間など長時間労働について追加の休憩を設ける義務は設けていません。
ただし、6時間超え労働で45分の休憩が必要であるならば、その2倍の12時間労働に対しては1時間30分ほど休憩時間を設けたほうが良いのではないか?と感じる方もいるでしょう。
実際、長時間労働に対する休憩時間の設け方は企業によって異なるようですが、8時間を超える超過労働にならないようにすることが理想です。
とは言っても、企業の事情によってはどうしても長時間労働をせざる負えないケースもありますので、労働者と相談しながら怪我や事故のリスクのないようにしましょう。
12時間労働が違反になる場合とは?
12時間労働は、必ずしも違法になるわけではありません。
ただし、違反になるケースもあるため、以下の項目に注意してください。
- 休憩を取得させていない
- 36協定の上限を超えて労働させている
- 残業代が未払い
それぞれの違反になるケースについて解説します。
休憩を取得させていない
労働基準法では、6時間以上の労働で45分、8時間以上の労働で1時間の休憩が義務付けられているため、12時間労働では1時間の休憩時間を設ける必要があります。
1時間以上の休憩時間を適切に設けていれば「違法」になることはありませんが、休憩時間がなかったり、休憩時間が1時間未満になったりする場合は違法になります。
もともと、労働時間は1日8時間と定められているため、それ以上になってしまうのであれば労働者の心身的な負担を考えるうえでもしっかりと休憩時間を設けましょう。
36協定の上限を超えて労働させている
原則、12時間労働は法定労働時間に抵触しているため認可されていないのですが、36協定を届け出た場合のみ、12時間労働が可能になります。
36協定とは、企業が法定労働時間を超えて労働するときに申請する必要がある協定で「時間外・休日労働に関する協定届」が正式名称です。
12時間労働が許可されているものの、当たり前に12時間労働の環境づくりをするのではなく、計画的に時間外労働をおこなう取り組みが求められています。
残業代が未払い
法定労働時間以上の残業を命じた場合、企業側は通常の賃金よりも割高の残業代の支払いが義務付けられていて、それに応じないと違法になります。
種類 | 支払う条件 | 賃金の割増率 |
時間外労働 | 法定労働時間を超えたケース | 25%〜 |
時間外労働 | 時間外労働が1ヶ月60時間を超えたケース | 50%〜 |
休日労働 | 法定休日に勤務させたケース | 35%〜 |
深夜労働 | 22時から5時までの間に勤務させたケース | 25%〜 |
条件を満たせば従業員に長時間労働を要求することはできますが、それに応じた賃金の支払いが必要なため、人件費が高くつく可能性があります。
通常の賃金で支払うことは違法であり、後々大きなトラブルに発展するケースもあるため、残業代は正しい金額を支払うように徹底してください。
労働基準法における休息時間の考え方とは?
日本の労働基準法第34条1項に、休息の取得時間について以下のように明確な規定が設けられています。
- 労働時間6時間超8時間以内の場合は、最低45分の休息時間を確保すること
- 労働時間が8時間超になる場合は、最低60分の休息時間を確保すること
- 労働時間が6時間以内の場合は、休息時間を確保する義務なし
日本では1日の基本労働時間が最大8時間までと定められているため、定時で働く場合は45分以上、6時間以内の短時間労働の場合は休憩時間なしでもOKです。
8時間を超える労働では1時間以上の休息時間を設けるべきなのか?と考える方もいるかもしれませんが、特に明記されていないため1時間確保できれば法的な問題はありません。
しかし、長時間労働になればなるほど、従業員の精神的、肉体的な疲労が蓄積されて事故や病気のリスクが高まるため、任意で休息時間を設ける企業も多くあるようです。
勤務時間を7時間45分にする背景とは?
勤務時間7時間45分は中途半端な時間設定のように感じる方もいるかもしれませんが、7時間45分と8時間の労働では、休日の日数を変えることができるのが、大きな違いとしてあります。
- 8時間労働:毎月9日間の休みを設ける必要がある
- 7時間45分労働:31日ある月は9日休み、30日と28日ある月は8日休みを設ける必要がある
労働基準法に定める「法定労働時間」を元に、休日数を設定することができます。
1週の法定労働時間:40時間、とされていることから、
1年間の法定労働時間:40時間×365日/7日=2085.7時間
以上より、それぞれの「年間労働日数」(年間休日数)を割り出してみます。
【1日:8時間労働の年間労働日数】2085.7時間 ÷ 8時間 = 260日(休日数105日)
【1日:7.75時間労働の年間労働日数】2085.7時間 ÷ 7.75時間 = 269日(休日数96日)
8時間労働の場合は年間休日は105日であるのに対して、7時間45分労働の場合は年間休日は96日となります。
会社の業種・業態により、多い勤務日数を確保したい場合などは、この所定労働時間の設定が有効となります。
参考)公務員の勤務時間は7時間45分
労働基準法の勤務時間が8時間であるのに対して、国家公務員・地方公務員の勤務時間は7時間45分と定められていて、1週間で38時間45分の労働になります。
- 午前の仕事:8:30〜12:00(3時間30分)
- 休憩時間:12:00〜13:00(1時間)
- 午後の仕事13:00〜17:15(4時間15分)
職場によって多少の変動はあるものの、一般的な公務員の勤務時間は上記のとおりであり、17:15をすぎると残業として残業時間に応じて残業代が発生します。
平成21年4月1日より、公務員1日の勤務時間が7時間45分に短縮され、裁量による勤務を行っている第1号任期付研究員に関しても労働時間が8時間から7時間45分に変更しました。
労働基準法では休憩時間を2時間おきに取得することは可能?
労働基準法によって義務付けされている労働時間をしっかりと確保できるのであれば、何回かに分割して休憩することはできるため、2時間おきの取得も可能です。
そのほかに、休憩時間の確保の方法については、以下のような決まり事があります。
- 労働時間の途中に休憩すること
- 事業所ごとに一斉に休憩を付与すること
- 休憩時間中は従業員が自由に過ごせるようにすること
休憩は労働者の心身的な負担や疲労を軽減することが目的であることを理解したうえで、雇う側は、労働者側の休憩環境を整えるようにしてください。
勤務時間7時間45分について理解しよう
この記事の結論をまとめると、
- 労働基準法では、1日6時間超の勤務で45分の休憩、1日8時間超の勤務で1時間の休憩を設けることが義務付けられている
- 7時間45分勤務の場合は、6時間超8時間以下のため45分の休憩で問題なし
- 5時間勤務の場合は、休憩を設ける義務のある6時間に満たないため、勤務中に休憩時間を設けなくても法律的に問題なし
- 残業によって、6時間超の勤務時間になるのであれば45分の休憩、8時間超の勤務になるのであれば1時間の休憩を設ける義務がある
- 12時間労働の場合は、8時間超の労働と同様に1時間の休憩時間を設ける義務があるが、追加での休憩時間は必ずしも必要ない
- 12時間労働が違反になるケースとして「休憩を取得させない」「36協定の上限を超えて労働させる」「残業代の未払い」がある
- 勤務時間を8時間ではなく7時間45分にする背景には、年間出勤数を増やす(休日数を減らす)ということが挙げられる
- 勤務時間が7時間45分の場合、法定で必要な年間休日は96日となる
- 平成21年4月1日より、公務員職員の勤務時間は7時間45分に変更された
- 労働基準法では勤務時間に応じた休憩時間の義務付けがあるため、休憩時間を確保できれば分割して休憩することは可能
ということが分かりました。
このような休憩時間・所定労働時間・所定勤務日数・所定休日を正しく定めたうえで、給与計算において反映していくことが必要になります。
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