女性役員の産休・育休をサポートする制度を解説|出産手当金・育児休業給付金

女性社長など女性役員の方向けに産休・育休をサポートする国の制度はどんなものがあるでしょうか?

この記事では女性役員が使える産休・育成の制度を紹介します。
女性役員は産休中の社会保険料控除や出産育児一時金など国からのサポートを受けられます。
女性役員や女性従業員は対象となる法律で異なるため、使える制度に違いがあるので注意が必要です。

女性役員の出産をサポートする制度を有効活用しましょう。

<この記事で分かること>
・女性役員が産休・育休を取得する際に使える制度とは?
・女性役員が育休を取得する際の注意点
・女性フリーランス(個人事業主)が使える産休・育休に関する制度

女性役員が産休を取得するために使える制度は制限される?

役員 産休

女性役員であっても従業員のように産休を取得する際に社会保険料免除の制度は有効でしょうか?

役員は法律上、労働者には定義されていないため労働基準法で定められている労働者の権利は利用できません。
ただし、労働基準法以外にも健康保険法や厚生年金保険法など一部の法律は適用対象となります。

女性役員に関する法律上の定義や適用対象となる法律の種類について確認しましょう。

役員の定義

役員とは会社の業務執行や監督を行う幹部職員です。
会社法の定義によると役員は「取締役」「会計参与」「監査役」の三役とされています(会社法第329条)。

役員と従業員(一般社員)の違いは従業員が企業と雇用契約を結ぶのに対し、役員は企業と委任・準委任契約を結ぶことです。
そのため、役員は労働者には該当せず、労働基準法の適用対象とはなりません。

ただし、役員であっても健康保険法や厚生年金保険法の対象とはなるため、役員は産休を取得するために利用できる制度があります。

役員には労働基準法・育児介護休業法が適用されない

役員は労働基準法の対象ではありませんが、健康保険法や厚生年金保険法の対象となります。

以下は役員と従業員に適用される法律の違いです。
従業員(労働者)には「労働基準法・健康保険法・厚生年金保険法・育児介護休業法・雇用保険法」が適用されますが、役員には「労働基準法・育児介護休業法・雇用保険法」が適用されません。

対象となる制度従業員役員
労働基準法×
健康保険法
厚生年金保険法
育児・介護休業法×
雇用保険法×
表:従業員と役員に適用される法律の違い

女性役員が産休を取得するために使える制度

役員 産休

役員は労働者としての制度は利用できませんが、産休を取得する際に経済的な支援を受けられます。

女性役員が産前産後休業(産休)を取得した場合、以下の制度を利用できます。

  • 社会保険料の免除
  • 出産手当金
  • 出産育児一時金

社会保険料の免除

女性役員は産休中に社会保険料(厚生年金保険料)の免除を受けられます。
厚生年金保険では産休取得前6週間(42日間)から産休取得後8週間(56日間)の期間における保険料が免除される制度があります。

ただし、保険料が免除になるのは産休取得期間中のみです
育児休業中の社会保険料は免除にならないため注意しましょう。

出産手当金

出産手当金は出産のために会社を休む期間、給与の支払いがなかった場合に支給される制度です。

役員の場合における出産手当金は役員報酬の3分の2に相当する金額が出産手当金として支給されます。
役員報酬の金額によって出産手当金は増減できますが、役員報酬は原則として1年間変更ができないため経営上の損益に影響が出ないようにしましょう。

出産育児一時金

出産手当一時金は出産に対する手当金です。
児童1人につき42万円が一律で支給されます。

出産育児一時金は役員であっても従業員であっても一律で受けられる制度です。

女性役員は育休を取得できる?

役員 産休

女性役員は一般従業員と違い、育休を取得する際に「育児・介護休業法」の対象外となります。
そのため、女性役員が育休を取得する際に受けられる制度は育児・介護休業法で定められたもの以外の制度が対象です。

役員は育児・介護休業法の対象外

育児・介護休業法は正式名称を「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」と言い、育児や介護に携わる労働者について定めた法律です。
育児・介護休業法の対象者は労働者に限られるため、役員は法律の対象外となります。

育児・介護休業法では労働者の育児休業(育休)に関する決まりを定めており、労働者が仕事と育児を両立することが目的です。
育児・介護休業法においては育児休業以外にも「子の看護休暇制度」「介護休業制度」「介護休暇制度」に関して定められています。

事業者は労働者が適切にこれらの休業および休暇をとれるように周知しなければなりません。

育児休業制度

「育児休業制度」は1歳未満の児童を育てることを支援するための制度です。
「育児休業給付金」や「育児休業保険料免除制度」で育児休業期間において給付金を受けられるほか、期間中の保険料が免除されます。

育児休業制度は全ての従業員が取得できますが、女性役員は制度の対象外となります。

子の看護休暇制度

「子の看護休暇制度」は従業員の子供が病気や怪我になった際に休暇を取得できる制度です。取得可能な休暇日数は年間で5日までとされていますが、子供が2人以上いる場合は10日まで取得可能です。

子の看護休暇制度は全ての従業員に適用されますが、役員は制度の対象外となります。

介護休業制度

「介護休業制度」は家族が介護を必要としている場合に介護休業を取得できる制度です。
介護休業制度における要介護者とは負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害によって2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態のことをいいます。

厚生労働省では事業主が従業員の仕事と介護を両立できるように「介護離職を予防するための両立支援対応モデル」を策定しています。

参照:仕事と介護の両立支援 ~両立に向けての具体的ツール~|厚生労働省

兼務役員(兼務使用人)は雇用保険法の対象になる

兼務役員(兼務使用人)は役員と従業員(使用人)の肩書を兼務していることです。
例えば、「取締役兼営業部長」は役員としての肩書と従業員としての肩書を有しています。

厚生労働省によると、兼務役員の雇用保険について以下の通り回答しています。

Q.取締役や会社の役員は雇用保険に加入できるのでしょうか。
A.会社の取締役や役員は、原則として被保険者となりません。
ただし、会社の役員と同時に部長、支店長、工場長等の従業員としての身分を有する者は、服務態様、賃金、報酬等からみて、労働者的性格の強いものであって、雇用関係があると認められる場合に限り、雇用保険に加入できます。
この場合、雇用の実態を確認できる書類等をハローワークに提出していただく必要があります。

引用:厚生労働省

兼務役員は育児休業給付金がもらえる

兼務役員は雇用保険に入れるため、兼務役員が産休を取得する場合は従業員としての給与について育児休業給付金の対象となります。
また、兼務役員は労働者であるため、育児休業期間(育休)における社会保険料の免除を受けることが可能です。

女性フリーランス(個人事業主)は産休を取得できる?

役員 産休

フリーランスは企業に属さず、自身が事業主となって自由に契約を結ぶ働き方です。
女性フリーランスは労働者ではなく事業主であるため、会社員のように産休や育休を取ることはできません。

女性フリーランスの方は国が提供している公的なサービスや国民年金保険料の控除を受けられます。

  • 国民年金保険料の免除
  • 妊娠健診補助
  • 出産育児一時金
  • 児童手当

国民年金保険料の免除

2019年4月からフリーランスの方は出産前後4ヶ月間の国民年金保険料の免除を受けられるようになりました。
予定日または出産日が属する月の前月から4カ月間の国民年金保険料が免除されます。

お住まいの地域にある役所に申請することで国民年金保険料の免除を受けられます。
申請に必要な書類等に関する情報は年金事務所で入手可能です。

保険料を前納している場合でも還付金を受けられるため、フリーランスの金銭負担を軽減してくれます。
なお、出産前に申請する場合は母子健康手帳の提出が必要です。

参照:国民年金保険料の産前産後期間の免除制度|日本年金機構

妊娠健診補助

妊娠健診補助は妊娠中の女性が受けられる補助です。
妊娠中の母体や胎児が健康であるかどうか確認するための費用について自治体から公的な補助を受けられます。

妊娠検診補助を利用した場合、助成限度額まで補助を受けられます。
補助限度額は自治体によって異なりますので、お住まいの自治体で情報を確認してください。

妊娠週と健康診査の回数に関する目安は以下の表の通りとなります。

妊娠週数健康診査の回数
妊娠満23週まで4週間に1回
妊娠満24週から35週まで2週間に1回
妊娠満36週から分娩まで1週間に1回

出産育児一時金

フリーランスの方も役員の方と同様に、出産育児一時金を受け取れます。
出産育児一時金では児童1人につき42万円が一律で支給されます。

児童手当

フリーランスの方は児童手当制度を利用できます。
児童手当制度は中学校卒業までの自動を養育している方が利用できる制度です。

毎年6月、10月、2月に、以下の通り前月分までの手当を受けられます。
児童手当を受けるためにはお子さんが生まれたタイミング、あるいは他の市区町村から転入したタイミングで「認定請求書」を提出します。

児童の年齢児童手当の額(一人あたり月額)
3歳未満一律15,000円
3歳以上(小学校修了前)10,000円
((第3子以降は15,000円))
中学生一律10,000円

児童手当制度では以下のルールが適用されます。

【児童手当制度のルール】
1.原則として、児童が日本国内に住んでいる場合に支給
2.父母が離婚協議中などにより別居している場合は、児童と同居している方に優先的に支給
3.父母が海外に住んでいる場合、その父母が日本国内で児童を養育している方を指定すれば、その方(父母指定者)に支給
4.児童を養育している未成年後見人がいる場合は、その未成年後見人に支給
5.児童が施設に入所している場合や里親などに委託されている場合、原則その施設の設置者や里親などに支給

まとめ:女性役員の出産をサポートする制度を活用しよう

役員 産休

役員は労働基準法における労働者には定義されていないので、一般従業員が受けられる「育児休業給付金」や「育休期間中の社会保険料の免除」といった制度を利用できません。

また、フリーランスも役員と同様に労働者が受けられる給付金などの制度を利用できません。
近年はフリーランスの社会的立場向上を目指しており、2019年4月からは女性フリーランスの方も出産期間において国民年金保険料の免除を受けられるようになりました。
今後、女性フリーランスの働き方が見直されて、このような出産をサポートしてくれる制度が増えるかもしれません。

女性役員の方は一般労働者と比べると産休・育休中に利用できる制度は限られるのですが、女性役員の方を支援する制度は用意されています。
正しい制度の活用方法を知り、産休中に役立ててください。

【まとめ】
・女性役員が使える制度は「産休中の社会保険料の免除」「出産手当金」「出産育児一時金」
・女性役員が使えない制度は「育休中の社会保険料の免除」「育児休業給付金」

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