中小企業経営者のための雇用助成金情報メディア

歯科クリニック 採用&労務最新トレンド 10のポイント【2024年版】

ITを使った給与計算の適正化、スタッフニーズをとらえた労務管理が不可欠です。

ますますスタッフの獲得競争が激しくなる歯科クリニックですが、ITを活用したりスタッフにとってうれしい福利厚生・勤務ルールを設けることで、スタッフ採用や定着を有利に進めるよう、多くのクリニックで様々な工夫をしています。

これからクリニックを立ち上げる開業医の先生、さらにクリニックを伸ばしていきたい先生にお読みいただきたい内容です。

目次

効果的な採用媒体・採用ルートの使い分け

歯科衛生士の定番媒体 ~グッピー/ジョブメドレー

歯科衛生士を募集する採用媒体は数多くありますが、奇をてらわずに、定番といえる媒体に掲載されるのが近道かと思います。

媒体ごとの特徴・料金形態が異なります。

ジョブメドレー
グッピー
  • https://job-medley.com/dh/?select=1
  • 掲載無料/採用決定時の成功報酬(歯科衛生士1名20万円~)の料金形態 ※正確には運営会社までお問合せ下さい。
  • 掲載期間:無制限のため、長期掲載してもコストがかからない
  • https://www.guppy.jp/dh
  • 掲載料金1万円+閲覧課金(120円/回)※正確には運営会社までお問合せ下さい。
  • 短期で採用が決まれば、求人コストが安く済む

両方とも、管理画面内でご自身で掲載内容・写真を編集する形式ですので、ある程度の慣れや研究は欠かせません。

歯科助手は「indeed」中心で

歯科助手・受付については、有資格者でなく、近隣で就職先を探す方が多いため、専門媒体よりも、一般的に普及しているindeedなどの媒体での採用が可能です。

indeedの場合は、クリック課金方式で、広告予算を医院側で設定できるため、無駄なコストをかけずに、短期集中で募集がかけられる利点があります。

利便性が向上した「ハローワーク」も、ぜひ活用を

無料で利用できる国の職業紹介機関「ハローワーク」も、なかなか侮れない採用手段です。転職先を探す際には、多くの求職者がハローワークを活用しているという実態があります。

かつては、直接ハローワークに出向かないと求人を出せませんでしたが、近年はインターネットを通じて求人を出せる仕組みが整っています。

ハローワークインターネットサービス

https://www.hellowork.mhlw.go.jp/

クリニックでも増えてきた「instagram」

SNSを採用に活用するなら、facebookではなくinstagramが効果的です。特に若年層を募集する際には有効です。開院前からinstagramを運用し、応募者を獲得しているクリニックもあります。

ただし、あまりページ更新されないアカウントですと魅力が半減しますので、院長自らが運用されるか、慣れているスタッフがいれば任せるかして、継続して使っていくことで中期的に見てクリニックの財産となります。

キャリアアップ助成金を活用した「勤続お祝い金」スキーム

グッピーの掲載項目にある「勤続お祝い金」

一定期間を継続勤続したスタッフに、「勤続お祝い金:〇万円」の支給を表示できる項目があります。勤続何か月でいくら支給するか?はクリニックが任意に決定し、3か月/6か月程度が多いようです。

勤続していただくことはクリニックにとっても非常にありがたいので、募集時に打ち出す効果は確かにあると思います。但し、その金額目当ての応募となってしまうと、応募者の質が低下する恐れがありますので、支給するとして数万円程度に抑えておくべきでしょう。

また、応募媒体ごとに支給の差があると、スタッフ同士で不公平に感じますので、どの採用ルートであっても金額は一定にされたほうが良いでしょう。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)のスキーム活用

多くのクリニックが申請・活用している「キャリアアップ助成金」という雇用関連助成金があります。

これは、入社当初は「有期雇用」で採用し、6か月以上経過後に「正社員(無期雇用)」にステップアップ&昇給(3%以上)により処遇を改善した事業所が、対象者一人当たり57万円を申請できる制度です。

【令和6年度版】キャリアアップ助成金正社員化コースが1人80万円へ拡充。申請の留意点と手順は?

この助成金を申請するには、「最短でも入社1年」の勤続が前提となることから、先ほどの「勤続お祝い金」の支給サイクルと連動させることで、クリニックとしても「原資」を確保したうえでお祝い金を支給することが可能です。

「固定残業無し/残業手当1分単位」が主流に

「固定残業制」(みなし残業という場合もあります)とは、例えば、固定残業手当10,000円を、月間5時間分の残業手当とみなして支給し、実残業時間が5時間以内であれば、追加での固定残業は支払わない、とする方法です。ちなみにこの場合、実残業時間が5時間以内でも、10,000円は減額せずに支給します。

この方式によるクリニックのメリットとしては、『人件費のコントロールがしやすい(変動が抑えられる)』点にあります。

一方で、スタッフ側に「一定時間残業しても、残業時間がもらえない」という印象を持たれる可能性もあります(合法的な取り扱いではあるのですが)。

そこで最近の募集広告では、「固定残業無し/残業1分単位で支給」といった記載がよく見られます。勤怠管理をより厳密に適正に、という流れは確実にありますので、これからの新興クリニックでは、主流になってくると思います。

勤務時間(終業時刻)も重要なファクター

従来は、クリニックの所定労働時間として、

9:00~13:00/休憩13:00~15:00/15:00~19:30

のように、仕事終わりの患者様の来院に備えた時間設定がよく見られました。

ただ最近開院したクリニックを見ていると、スタッフのワークライフバランスも考慮して早めの終業時刻を意識した設定が目立ちます。

9:00~13:00/休憩13:00~14:00/14:00~18:00

小さいお子様がいるスタッフであれば、早めの退勤時刻は必須条件ともなりますので、採用がより難しくなってくる環境を踏まえれば、このトレンドも無視しづらいものになってきます。

給与よりも「休暇」

休みやすいか?(有休が取れるか?)が重視される

給与額については、地域相場並みであればよいかと思います。

今は、「少しでも高い給与を」という希望より、「しっかり休める(有休がとれる」ところ」の方が、安心して応募できる傾向にあります。

私どものクライアント企業で見ても、クリニックに勤務される方と、それ以外の業種に勤務される方とでは、明らかにクリニック勤務者の方が、有休に対しての意識は高い、と感じます。そして、院長よりもスタッフの方が、有休についての知識をお持ちであったりします。

そもそも「有休の日数管理ができていない院」はちょっとまずい…

中小のクリニックでは、スタッフごとの有給の日数管理(いつ付与されて、いつ取得されて、今の残日数が何日で、いつ消滅するか?)があいまいであったり、不正確なところが多いようです。

もちろん、院長も労務の専門家ではありませんし、通常の診察業務に加えてそういった管理作業に割く時間がない方が大半です。

しかしその状態では、スタッフから見た安心感は著しく損なわれます。

このように非常に重要な有休日数管理は、もはや人の手で管理するのではなく、汎用的なシステムにより、手間なく管理できる時代になっています。

私どもが普段お勧めしている「クラウド勤怠システム」であれば、ほとんど「有休日数管理」機能が備わっています。有休の付与から取得(申請&承認)、残日数管理までをシステム化でき、紙やExcelでの管理は不要となります。

採用および採用後に重要となる、「給与計算方法の設定」「有休管理システム」のアドバイス&運用支援は、以下によりご利用いただけます。

「計画有休」を取り入れるクリニックは多い

有休の消化は、クリニックにとってもリスクヘッジになる

「うちのスタッフはよく有休をとる。。」と言うと嘆き節のようにも聞こえますが、有休の消化が多いことは、クリニックにとってもメリットがあります。

有休の消化が進まないことのリスクは、退職時にまとまって有休が申請されることです。勤続年数が長いスタッフであれば、20日×2年分で最大40日分の有休が溜まっている場合があります。これをまとめて申請・取得されると、ほぼ2か月分の給与を一気に支払うことになります。

放っておいても、スタッフが有休をとる風土のクリニックであればいいですが、そうでない場合は、クリニック側で有休の取得を促す方策が必要です。その際によく取られるのが「有給休暇の計画的付与」という方法で、労働基準法に定めがある合法的な運用方法です。

これは、あらかじめクリニックが、一斉に有休をとってほしい日を指定し、有休を消化させる方法です。本人が自由に有休日を決められる日数を最低5日分残しておけば、それ以外の有休日をクリニック側で決められるルールです。

「クラウド勤怠システム」は必須アイテム

すでに述べたように、「1分単位での勤務時間集計」「有給休暇の日数管理」を効率的に行っていくには、「クラウド勤怠システム」は必須です。毎月の利用コストとしては、スタッフ一人当たり300円が相場です。

クリニックが導入できるクラウド勤怠システムとしては、以下がお勧めです。両システムの機能的には大差ありませんので、いずれも問題なくお使いいただけます。

また、システムの選定とともに、「打刻方法」も選ぶことができます。

導入コストが安いのは、PCにICカードリーダーを接続する方法(ICカードリーダー:3,000円~5,000円程度、ICカード:1枚200円程度)です。

また、最近は「指紋認証による打刻」も人気があります。認証機器の費用も、20,000円~40,000円程度です。

いずれにせよ、勤怠システムはスタッフの目に毎日触れるものですので、今だに「紙のタイムカード」ということになると、スタッフから見れば「遅れた医院」という印象がぬぐえません。また、医院によっては、スタッフに紙のタイムカードの時間集計をさせているところもありますので、さすがにこの時代には、不満を募らせる要因になってしまいます。

「クラウド勤怠システムを導入したいけど、自力での設定や導入手続きが面倒…」

「顧問社労士が対応してくれなくて困っている…」

という場合は、以下にてサポートいたします。

「歯科医師国保?協会けんぽ?」の選び方

クリニックの労務において、必ず選択を迫られるのが、健康保険を「医師会国保」で加入するか?「協会けんぽ」で加入するか?の問題です。

「医師会国保」については、その手前で「医師会」に加入するという前提がありますが、加入される院長が多いことから、その流れで「医師会国保」に加入されるクリニックが多いです。

医師会国保に加入する最大のメリットは「保険料」です。「クリニック目線」で見れば、まず院長(ドクター)ご自身の保険料が、報酬に対して安く済みます。これは、医師会国保の保険料が、職種ごとに定額であるのに対し、協会けんぽの場合は、金額に連動して保険証が上がっていくため、高額報酬者ほど保険料も高くなる、という仕組みの違いにあります。

なおかつ、保険料を負担するのが、協会けんぽは「労使折半」であるのに対し、医師会国保は「本人が全額負担」が原則となり、クリニックの保険料負担はさらに軽くなります。

最近は、本人負担を軽減するため、例えばクリニックが保険料の半額を負担するケースもよく見かけますが、それでも、協会けんぽの使用者負担よりも安く済むのが実態です。

以上のように、金額面ではクリニックのメリットがある「医師会国保」ですが、スタッフ側の負担が大きかったり、デメリットがある場合には、協会けんぽの優位性が高まります。

まず、大阪府の歯科クリニック(歯科衛生士・歯科助手)を例にとると、35万円未満のスタッフは、歯科医師国保の保険料より、協会けんぽの保険料(自己負担分)の方が安くで済みます。

また、「扶養家族」がいるスタッフの場合は、協会けんぽなら、扶養家族がいても(増えても)保険料は増えないのに対し、「医師会国保」は、扶養家族一人ずつ保険料が加算されます。

「産休育休に入るスタッフ」についても、協会けんぽの方がメリットが大きいと言えます。まず、協会健けんぽにはある「出産手当金」が、医師会国保には設けられていないところが多いです。スタッフごとの給与額(標準報酬月額)により出産手当金の金額は変わりますが、いずれにせよ数十万円の金額になることが多いですので、有るのと無いのとでは、本人にとっては大きな違いとなります。ちなみに、育休期間中の保険料免除制度も、医師会国保は無し、協会けんぽは有りです。

総じて、クリニック側にはメリットが多い「医師会国保」ですが、スタッフ側には「協会けんぽ」の方がメリットがあると言えます。今後は、採用時の差別化要素として、また特定のスタッフのみを協会けんぽに加入させることもできますので、協会けんぽを選択するクリニックも増えてくるかと思われます。

※医師会国保の保険料や給付内容は、国保ごとに取り決めがなされるために違ってきます。正しい情報は、各国保までお問合せのうえご確認ください。

産休育休サポートは万全に。助成金も活用可能

「育児休業給付金」「出産手当金」の対応がスタッフの最優先事項

多くの育休スタッフが受給することになる「育児休業給付金」(雇用保険被保険者対象)と、先ほども触れた「出産手当金」(協会けんぽの被保険者対象)が、スタッフとしてはお金が絡む重要事項です。

この受給手続きは、本人ではなく事業主(クリニック)がするものですので、顧問社労士がいないクリニックでは、スタッフからみて「本当に手続きをきちんとしてくれるのか?」が大変不安になります。

これらを、漏れなく確実に、かつスピーディに(手続きが遅れると入金も遅れるため)してあげることが、スタッフからの信頼感につながります。もちろん、当該スタッフのみでなく、他のスタッフも見ていますので、「このクリニックなら、出産しても安心して働き続けられる」と思ってもらえるよう、最優先で対応してあげましょう。

意外と知らない「育休でクリニックが受給できる助成金」

スタッフをに育休をとってもらうことで、実は「クリニックも受給できる助成金」があります。顧問社労士がいても、提案が無かったり対応できないことが多いようで、意外にご存知でないクリニックも多くあります。

具体的には、

◆スタッフが3か月以上の育休を取った場合:30万円

◆スタッフが職場復帰後6か月以上勤務した場合:30万円

◆新たに代替要員を採用し、かつ育休スタッフも職場復帰後3か月勤務した場合:最大67.5万円

などの申請が可能です。

またそれ以外にも、「不妊治療の休暇制度」「職場復帰後の柔軟な働き方制度」などの適用で申請できるコースもあり、出産後のスタッフ支援に取り組むクリニックには、かなり手厚い助成金制度が設けられています。

クリニックにとって、様々な負担も発生する育休ですが、これらの制度も活用し、スタッフが気持ちよく出産・育休に臨めるような環境整備に、積極的に取り組んでください。

社会保険労務士法人はた楽では、これらスタッフの育休に関する手続き・助成金申請全般をサポートする「産休育休らくらくパック」というメニューを設けています。顧問社労士がいないクリニックで、スポットでお請けすることも可能ですので、どうぞご活用ください。

「服務規程」でみんなが気持ちよく働ける職場風土に

当たり前の「常識」をあえて明記

多くのクリニックで必ず苦労されるのが、いわゆる「問題社員への対処」です。これまで、社会保険労務士法人はた楽にてお請けした相談内容としては、

◆かなり欠勤が多いが、なかなか辞めようとしないスタッフ

◆クリニック内で、他のスタッフへの批判・陰口を繰り返すスタッフ

◆他のスタッフを巻き込んで、一緒に退職(転職)しようとするスタッフ

といったケースがありました。

いずれも、「常識」で考えれば望ましくない言動ばかりですが、実際にはなかなかその「常識」が通用しないスタッフもいます。クリニック側(院長)が指摘しても、「なぜダメなんですか?」と開き直ったり反発する人もいて、なかなか一筋縄ではいきません。

やはり、世代や立場、スタッフそれぞれが置かれた環境が違う中、クリニックとして考える「常識」を、面倒であっても全て書き出し、それを「服務規程」としてあらかじめスタッフに示しておく必要があります。そうしておけば、何か問題が発生したときに、「ここに書いてあるよね」「こう言ってましたよね」から話を始めることができます。

社会保険労務士法人はた楽のサポートメニュー「クリニック労務らくらくパック」では、クリニックのスタッフに持っていただきたい常識を明文化した「服務規程」を、クリニックごとにアレンジして作成します。

内容を一部抜粋しますと、

  • スタッフの義務 ~労働の権利・義務、医療従事者としての義務、守秘義務、競合避止義務
  • 社会人としての基本的振る舞い ~挨拶、言葉使い、
  • 勤務ルール ~出退勤、休憩、私物の管理、スマートフォンの扱い
  • スタッフ間のマナー ~悪口・陰口・誹謗中傷の禁止、公私の区別、金銭授受や勧誘の禁止
  • 患者様への配慮と対応
  • 業務の円滑化 ~事故等の報告、器具材料の管理、備品の持ち出し禁止
  • 身だしなみ ~爪、頭髪、メイク、アクセサリー
  • 入退社時の義務

といった項目で、「何度も言いたくないこと」をあらかじめ整理・明記のうえ、スタッフに周知します。

「クリニック労務らくらくパック」のご案内

以上、歯科クリニックの採用・労務の最新トレンドをお伝えしてきました。

これらのトレンドを踏まえ、求職者やスタッフから信頼される「スマートなクリニック」を実現する支援メニューとして、「クリニック労務らくらくパック」をご用意しております。毎月の給与計算から、各種労務の届出、助成金申請を代行し、クリニックの労務業務負担を軽減、クラウドシステムを活用しながらスマートな運用をサポートします。

アーカイブ

よく読まれている記事