キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは
◆正社員とは?
「正社員」の定義については、実は明確に法律で定められているわけではありません。
助成金制度上は2つのルールがあり、
①無期雇用(期間の定めのない雇用)であること
②各社の就業規則で定められている、会社内で最も良い待遇が受けられる者(※但し取締役は除く)
というのが、正社員の定義とされます。
②については、各社の定めによるわけですが、一般的に多いのは、
「常勤で、月給で、賞与も対象となる人」
といったところでしょう。
「正社員化コース」という名称ですので、正社員ではなかった人(非正社員)が、どこかのタイミングで正社員に変わる(転換する)ことが必要です。
「非正社員」には、以下の2つのパターンがあります。
①有期雇用(期間の定めのある契約社員や、有期パート社員等)
②無期雇用(正社員ではない、無期パート社員等)
◆受給金額は?
以上より、正社員化に向けて以下の3パターンのルートができ、それぞれの適用で、一人当たり以下の助成金が支給されます。
①有期→正社員:一人当たり57万円
②無期→正社員:一人当たり28.5万円
◆転換前後の雇用期間の要件
上記の申請金額は、単純に雇用形態の変更(転換)を行うだけでは申請できません。加えて、以下の両方の要件を満たす人が申請対象となります。
①転換前の「非正社員としての雇用期間が6か月以上」ある人
②「転換後6か月間の雇用継続(給与の支払)実績」がある人
つまり、入社から最低で延べ1年以上の雇用継続がされた方が申請対象となります。
その他の重要な要件とは?
①賃金増額要件(3%アップルール)
正規転換前の6か月間の賃金総額と比較して、転換後6か月間の賃金総額が3%以上アップしていることが必要となります。
例えば、
転換前6か月:月給20万円×6か月=120万円
転換後6か月:月給20.6万円×6か月=123.6万円
の場合は、123.6万円÷120万円=1.03となり、3%アップの要件を満たしています。
また、必ずしも基本給だけで3%アップしなければいけないわけではなく、
「その他定額支給手当」も加算した総額で、
3%アップとなればOKです。
「その他定額支給手当」での加算を想定する場合は、就業規則(または賃金規程)に「支払い対象者」「支給金額の基準対象者」を明記しておく必要があります。
②転換前の有期契約雇用期間(3年以下に限定)
転換前が「有期契約」である対象者の場合、
その会社に雇用されていた期間が3年以下であることが要件となります。
◆申請できる人数は、年間20人
1年度1事業所当たりの支給申請上限人数は20人です。
※「1年度」とは、「4月1日から3月31日までの期間」です。
※「1事業所」とは、「雇用保険適用事業所」の単位です。
これにより、年度当たりの上限受給金額は、
一人当たり57万円×20人=1,140万円
生産性要件を満たす会社の場合は、
一人当たり72万円×20人=1,440万円となります。
受給に向けた手順とポイントは?
賃金アップも含めて、入社から一定のキャリアアップルール(有期雇用→無期雇用への転換ルール)を定めて、運用できる会社にとっては、受給額として大きなメリットが生まれます。
◆受給に向けたスケジュール
手順としては、従来からと変更はありませんが、
①転換前に「就業規則の制定」「キャリアアップ計画書の提出」
↓
②転換(雇用形態の変更)
↓
③転換後6か月分の給与支給日から、2か月内に申請
という流れになります。
◆受給に向けたポイント(留意点)
具体的には、以下の点につき社内ルールを確認しておく必要があります。
①入社時の賃金設定と、6か月目以降の雇用形態転換&昇給ルール
②就業規則の規定確認(正社員の定義と、転換規定)
③賃金規程の賞与支給規定確認(支給対象者と支給月の明記)
④給与計算ルールの適正化(3%アップ要件クリアの確認)
その他、令和5年度の改定による留意点は、以下も参照ください。
【令和5年度最新】キャリアアップ助成金正社員化コースで注意すべき変更点&就業規則改定方法
申請準備においてはとりわけ、給与計算を適正に行うことが、申請時に「3%アップ要件」をクリアしている証明において不可欠となります。
ただ、昇給のタイミングや昇給額、賞与支給も組み合わせた要件クリアなど、計算が煩雑となってきますので、これについては、はた楽による給与計算代行により、サポートできる体制を整えています。