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「フレックスタイム制」「スーパーフレックスタイム制」の導入手順とメリットデメリットとは?

導入する会社が、増えてきています

目次

フレックスタイム制の基礎知識

フレックスタイム制とは?

フレックスタイム制とは、「一定の期間」について「総労働時間の枠」を定め、その範囲内で従業員が自分で始業・終業時刻を決めることができる制度です。

「一定の期間」(清算期間と呼びます)は、1か月/2か月/3か月単位のいずれかで定め、1週40時間の法定労働時間に沿って、それぞれの「総労働時間の枠」が決まっています。

1か月単位28日29日30日31日
160.0時間165.7時間171.4時間177.1時間
2か月単位59日60日61日62日
337.1時間342.8時間348.5時間354.2時間
3か月単位89日90日91日92日
508.5時間514.2時間520.0時間525.7時間

残業時間の算定方法としては、1日8時間・週40時間を超えれば直ちに残業時間となるわけではなく、上記の「清算期間」ごとの「総労働時間枠」を超えた時間が残業時間となります。

フレックスタイム制を採用した場合でも「勤怠時間管理」は必要ですのでご注意ください。実労働時間の集計に基づき、発生した残業時間に基づく手当の支給が必要です。

また、1日のうちでどの時間帯で働くかは、

①1日のうちで必ず働かなければならない時間帯(コアタイム)と、従業員の選択で決定できる時間帯(フレキシブルタイム)を設ける場合【通常のフレックスタイム制】

②コアタイムを設けず、より従業員の裁量を認める場合【スーパーフレックス制】

のいずれかとなります。

「スーパーフレックスタイム制」は、このコアタイムの設定を無くすことでさらに自由度が高く勤務時間帯を運用できる制度として、最近注目されています。

他の「変形労働時間制」「裁量労働制」「在宅勤務」との違いは?

フレックスタイム制以外にも、よく似た勤務形態制度がいくつかあります。

①変形労働時間制

「1か月単位の変形労働時間制」「1年単位の変形労働時間制」の2パターンがあり、それぞれの期間内で、業務の繁閑に応じた勤務シフト(所定労働日数/勤務時間)を設定し、柔軟に勤務時間を運用するための制度です。

フレックス体制との違いとしては、「変形労働時間制」はあくまで「会社が勤務予定・勤務時間帯を設定する」という点に、考え方の違いがあります。

②裁量労働制

「実労働時間にかかわらず、一定時間労働したものとみなす」制度で、例えば「1日8時間勤務とみなす」と規定すれば、「実働が9時間であったとしても、その日の勤務時間は8時間」として取り扱います。

特定の職種を対象とした「専門業務型裁量労働制」と、本社企画部門等を対象とした「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。

フレックスタイム制は「勤務時間を自己裁量で決められる」ものの、「実際の勤務時間に応じて給与計算する」という概念は残りますので、その点が裁量労働制との大きな違いです。

③在宅勤務制(テレワーク)

これは単純に混同しやすいのですが、フレックスタイム制は「労働時間の運用ルール」であるのに対し、在宅勤務制は「労働場所の運用ルール」という別次元の制度です。テレワークとフレックスタイム制の親和性は確かにありますが、それぞれ別のテーマとして切り分けて検討が必要です。

(詳細は、こちらの記事も参照ください)

「所定労働時間」にはどんなパターンがあるか?

フレックスタイム制のメリット/デメリット

まずは、スーパーフレックスタイム制も含めた、フレックスタイム制としてのメリデメを比較します。

フレックスタイム制のメリット
フレックスタイム制のデメリット
  • 生活スタイルに応じた多様な働き方が可能な環境を用意することで、人材の定着や採用につながりやすい
  • 清算期間トータルでの総労働時間を超えた場合のみ「時間外労働」扱いとなるため、1日8時間超の労働日があっても、他の日で調整ができる
  • 通勤ラッシュを避けられることで、従業員の精神的・身体的を負担を軽減できる
  • 時差のある海外とのやり取りなど、通常のビジネスタイム以外の業務が発生する場合の調整がしやすい
  • スタッフ間や部門間で、コミュニケーションがとれない場合が発生する
  • 自己管理力のない従業員に濫用されると、自己都合優先の職場風土になったり、業務の遅れが発生してしまう
  • 一般的なビジネスタイムを想定している顧客や外部関係者とのコミュニケーションギャップが発生する
  • 私用に応じて出勤時間を調整できるため、逆に半日有休などの有休が消化されにくくなる
  • 人ごと・日ごとに出退勤がバラバラになるため、勤怠管理が煩雑になる

デメリットのうち「勤怠管理」については、便利なクラウドシステムが普及していますので、この機に導入されるのも一手です。

(詳細はこちら)

テレワークやフレックスタイム制の導入で便利な「クラウド勤怠管理システム」とは?

スーパーフレックスタイム制のメリット/デメリットは?

スーパーフレックスタイム制のメリット
スーパーフレックスタイム制のデメリット
  • 「朝型」「夜型」など、個人の生活スタイルに応じた勤務形態が取れ、人材採用の幅が広がる
  • コアタイムが無いため、社内の会議・ミーティングが設定しづらい
  • 深夜・早朝業務が発生しやすくなってしまう

つまり、「コアタイムがなくなること」でのデメリットが想定されますが、これは運用ルールでクリアすることも可能です。

「社内会議・ミーティングの設定」については、必要不可欠なものについては、あらかじめ開催日時を告知して、従業員に予定を合わせてもらうことは当然の措置となります。追ってご説明する「労使協定」の中にも、そういった趣旨を規定しておけば運用ルールとして明確になります。

また、「フレキシブルタイムの枠自体」の設定は残すことができますので、例えば「フレキシブルタイム →7:00~21:00の範囲」と設定しておけば、無用な深夜残業を抑制することも可能です。

フレックスタイム制が適した会社とは?

以上を踏まえると、どのような会社・職場がフレックスタイム制が適していると言えるでしょうか。

①個人のペースで仕事が進めやすい仕事

やはりこれが大前提にはなりますね。例えば、webを使って外部とのコミュニケーションを図ったり、中長期で企画を進めていくような仕事がマッチします。

もちろん、完全に個人のペースで進められる仕事というのは少ないと思いますが、社内外の関係者と時間・日程調整を図ることで、ほとんどの仕事で時間のフレキシブル性は確保できるはずです。

逆に、「決まった時間に対面での接客が必要な仕事」や、「チーム単位で現業にあたる仕事」では、他のスタッフと勤務を調整すれば柔軟性は確保できますが、それは「勤務シフト」の話であり、フレックスタイム制の導入は難しいと言えます。

②育児介護など、生活との両立が求められる人材が多い会社

これも多くの会社が該当するはずですが、特に女性を多く雇用する会社であれば、育児などの制約が発生しがちなため、フレックスタイム制導入の効果は大きいと言えます。

③マネジメント力の高い会社

言い換えると、「多様なコミュニケーションルートやマネジメント手段を持っている会社」が、スムーズにフレックスタイム制を導入できます。

逆に、例えば「毎日の朝礼で業務連絡のほとんどを済ませている」会社などは、フレックスタイム制には馴染みにくいですね。

「チャットツール」などで、多少の時差があっても問題にならないコミュニケーションが確保されていたり、1on1ミーティングを定期開催することで、業務の方向性をマネジメントできていれば、毎日の対面でのマイクロマネジメントを減らすことができます。

④自己管理力が備わっている従業員が多い会社

性善説で従業員を100%信頼できるなら問題ありませんが、人によってはさほど重要でない自己都合を優先してしまったり、仕事の納期管理がずさんになり遅れや損失を発生させることにもなりかねません。

フレックスタイム制導入に必要な手順は?

就業規則への明記

まずは、フレックスタイム制の趣旨を、就業規則に明記します。

引用:フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き(厚生労働省)

労使協定の締結

次に、フレックスタイム制の運用ルールを「労使協定」に明記し、労使間で締結することが必要です。

労使協定で定めておかなければならない項目は以下の6つです。

①対象となる労働者の範囲

職種や部門などの区分で、導入する範囲を定めます。もちろん「全従業員」としても構いません。

②清算期間

フレックスタイム制において労働者が勤務するべき時間を定める期間を、清算期間と呼びます。賃金の計算に合わせて1ヶ月に設定するのが一般的ですが、月ごとの繁閑を反映させるため、最長3ヶ月の清算期間が認められています。

1か月を超える清算期間(2か月/3か月単位)を選択した場合は、労基署への届け出も必要です。

また、清算期間がどの期間からかを明確にするために「毎月○日」というように起算日を具体的に定めておきます。

③清算期間における総労働時間

清算期間における総労働時間とは、いわゆる所定労働時間の枠を指します。清算期間を平均した時に1週間の労働時間が40時間以内になるよう定めなければなりません。具体的な総労働時間は、清算期間および月の暦日数により変わってきます。

1か月単位28日29日30日31日
160.0時間165.7時間171.4時間177.1時間
2か月単位59日60日61日62日
337.1時間342.8時間348.5時間354.2時間
3か月単位89日90日91日92日
508.5時間514.2時間520.0時間525.7時間

④標準となる1日の労働時間

標準となる1日の労働時間とは、年次有給休暇を取得した際に1日を何時間労働として賃金計算するかを決めるためのものです。通常は8時間以内で定めます。

⑤フレキシブルタイムとコアタイム

1~4を踏まえたうえで、フレキシブルタイムとコアタイムを設定します。前述のように、「コアタイムを設けない=スーパーフレックスタイム制」となります。

また、フレキシブルタイムの設定も任意ですので、定めないことも可能です。

以上、 自社の業務特性に応じて「フレックスタイム制」の導入をどうぞご検討ください。


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