「人事評価を導入したほうがよい」ということは頭では分かったとしても、
「なんとなく腰が重い、というかやりたくないな~」
という心理状態に陥る経営者が多いと思います。
その不安心理とは、概ね以下のようなパターンです。
経営者が人事評価導入に抱く疑問・不安
①面倒くさいんじゃないか?
ストレートな表現ですみません。。ですが、結局は「面倒くさい」のです。
社長の皆さん、そうでしょう?できるなら、そんな面倒なことはやらずにやり過ごしたいはずです。
運用するとなれば、
・社員に説明する
・評価シートを付ける
・評価結果をフィードバックする
・給与や賞与に反映して計算する
といったサイクル・手順を、これからずっと回し続けないといけません。
担当者がいない中小企業なら、社長自らその段取りと実行をしないといけません。
間違いなく、手間と労力がかかります。
②従業員から、文句や不満が出てくるのでは?
面談をしたり、評価をすることで、
ここぞとばかり日頃の不満をぶちまけられたり、
「評価に納得がいかない」と文句を言われたり
といった事態を恐れる気持ちもあるかもしれません。
「パンドラの箱を開ける」じゃないですが、不都合な真実や聞きたくない話が出てきたらどうしょう?
と心配される経営者の方もおられます。
③人件費が増えてしまうのでは?
従業員に対して、評価結果や賃金表をオープンにしてしまうことで、
会社が儲かっていなくても、人事評価が高ければ人件費(昇給や賞与)が高騰するのでは?
という不安も出てきます。
④今のままでいいのでは?
今の状態(人事制度が無い状態)でも、さほど問題を感じない、
という会社もたくさんあります。
「社員が次から次へと、原因不明なまま辞めていく」
といった症状があるわけでなく、
それなりに人が定着し、それなりに機嫌よく仕事してくれているなら、
わざわざ小難しい評価なんかしなくても?
と思いますよね。
私自身も経営者ですので、こういった心理はめちゃくちゃ理解できます。
それでは次に、これらの疑問(不安)に対して、どのような考え方で向き合い・結論を出せばいいのかをご説明します。
疑問や不安を乗り越えるには
まずは、
①面倒くさいんじゃないか?
に対してですが、それは間違いなくめんどくさくなります。
ただ、例えば「今後は、従業員を増やしていきたい」とお思いなら、
(導入した場合)
・人材育成の指針となることで、指導コストが下がる
・業務品質向上につながる
・採用時のアピールポイントに使える
・定着につながる
といった得たい成果と、導入した場合の手間・コストを比較してみてください。
「こういった成果を得たい」と強く思えないのなら、わざわざ手間やコストをかけなくてもいい、というのも一つの結論です。
ただし、
(導入しない場合)
・場当たり的/人任せの人材育成(育成結果をコントロールできない)
・経営者が伝えたいこと/理解してほしいことが伝わらない(コミュニケーションロスが増える)
・人が定着しない(できるようになったころに辞める)
といった状態が今後も続くことは、ある程度覚悟しておく必要があります。
②従業員から、文句や不満が出てくるのでは?
については、確かに導入前には不安に感じられると思いますが、やってみれば「さほどでもない」ことが分かるはずです。
きちんと手順を踏んで手間さえ惜しまなければ、びっくりするような不満を言ってこられることはまずありません。
また、
でも述べていますが、
「ギャップのすり合わせ」は、少しでも早い方が傷が浅くて済みます。
また、従業員からすれば、不満も含めて「思いを伝えられた・聞いてもらえた」こと自体は、信頼度・満足度向上にもつながります。
それから、経営者として持っていただきたいスタンスとしては、
「人事評価導入後の、従業員ごとの反応を楽しむ」
という感覚です。
例えば、さほど期待していなかった人が、目標を見つけて前向きに取り組み始めた
とか、
今の仕事は熱心にやってくれているが、新しい取り組みには冷めていてネガティブだった
というように、それまで見えていなかった社員個々の一面が分かったりもします。
経営者としては、従業員に関してはより多くの情報を得ておくことが、今後の組織運営や人事に活かせる材料となりますので、
その意味でも、「やってみた良かった」ということになるはずです。
それから、「問題社員」がいて、その人の反応を恐れられる場合もありますが、
会社側がきちんと手順を踏んで進めているのに、あまりに自己中心的な反応しかしないのであれば、それ自体で評価が下がることになりますし、
だらだらと悪い状態を続けてもらうよりも、話の決着を早くつけるきっかけになったりもします。
③人件費が増えてしまうのでは?
については、これは制度設計次第ですので、テクニカルな部分で解決が可能です。
「昇給原資や賞与原資を、経営者が納得できる形で決め、それを各従業員に割り振っていく形式」にしてしまうことで、
財務的なキャパを超えた人件費の増大を防ぐことができます。
④今のままでいいのでは?
「現状で特に問題を感じない」
だから人事評価制度を導入しなくてもいいのでは?
という経営者の感覚は、実はある意味当たっています。
と言ってしまっては元も子もないかもしれませんが、問題がないところに「人事評価制度」を導入すると、かえって弊害を引き起こすのも事実です。
例えば、今までは社長が気づけばすぐに、直接フィードバック(指導)をしていたのに、
評価制度を導入することで変に形式ばり、評価時期が来るまで話をしない、
というのは、本来の指導やコミュニケーションを阻害していると言えます。
この点についての考え方(意思決定の軸)としては、
やはり繰り返しですが「社長が今後、会社をどうしていきたいのか?」
次第です。
◆現状:従業員5名 →従業員数も売上も、そんなに増やすつもりはない
なら、「人事評価制度は不要」ですし、
◆現状:従業員5名 →従業員数も売上も増やしていきたい
のなら、「人事評価制度は有効な武器」になります。
以上、いかがでしょうか?
どの経営者も不安心理は間違いなく持たれますので、
「それをご自身でどう解釈するか?」
「不安を打ち消すだけの、納得できる手法やツールを得られるか?」
を確認のうえ、導入ステップに進んでいただければと思います。
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