中小企業経営者のための雇用助成金情報メディア

中小企業にも人事評価制度が必要な2つの理由と、導入すべきタイミングとは?

本当に、人事評価制度は必要なのだろうか?

「人事評価制度を、よその会社でも導入してるってよく聞くけど、うちにも必要なのかな?」

と思われる経営者の方に、ぜひ読んでいただきたい記事です。

結論としては、「ほとんどの中小企業で必要」となるわけですが、その理由を

1.経営者側の視点

2.従業員側の視点

それぞれから解説します。


目次

1.経営者側の視点からみた人事評価制度の必要性

中小企業経営者にとって、人事評価制度の意義とは、

従業員が、

・さぼらずに、

・望ましい態度や振る舞いで、

・組織内の調和を保ちながら、

・やるべき仕事を、

・期待する品質レベルで行い、

・結果(成果)を出しながら、

・働き続けてくれる

という状態を生み出すためのツールです。

※あえて、世の中でよく言われる高尚な目的や美辞麗句は省いています。あくまで、中小企業経営者に共通する願望を表現しています。

もちろん、人事評価制度があろうがなかろうが、この状態を生み出す(継続させる)ために、経営者は日々、従業員に対してアプローチしています。

・口で伝えたり、

・雰囲気で匂わせたり、

・紙に書いて渡したり、

・誰かを通じて伝えてもらったり、

といった手段をとっています。

こういったコミュニケーションが「成り立っている」うちは、問題はありません。特に「人事評価制度」云々の話も出てきません。

ここで注意が必要なのは、「成り立っている」と言える状態のレベル定義ですが、

「経営者から見て、伝わっていると思っている」ではダメで、

「従業員側が理解し、腹落ちしたうえで、行動に移している」

が、本来の目的が達成できているレベル、だと考えます。

では、このレベルのコミュニケーションが成り立つうえで何が重要かと申しますと、

「経営者⇔従業員の関係性の強さ」

に尽きます。

・顔を合わせての密なコミュニケーションや対話がある

・(やや例外的ですが)言わずとも分かってくれる深い信頼関係がある

ことが前提となります。

ですから、
「それだけの関係性を維持できなくなれば、それを補うためのツール」が必要

ということになります。

目安として、

◆スパンオブコントロールの観点からは、経営者が直接管理できる人数は、5~7名まで

◆また、「中間管理職」を1名でも置いて組織に階層を設けた場合は、その時点で、経営者の直接の管理は及ばなくなる

とみてよいでしょう。

以上のどちらかに当てはまる時点で、「人事評価制度の出番」となります。


2.従業員側の視点からみた人事評価制度の必要性

こちらが、経営者にとってはすっぽり抜け落ちていることが多いですね。

よく聞く話で、「うちのエースが急に辞めると言ってきた…」

というような場合が典型的です。

経営者からすれば、

「目の前で仕事をバリバリこなしてくれて、評価している(報酬もそれなりに出している)つもりなのに…」

と言いたいところですよね。

一方で、従業員本人は、全く別のことを考えています。

「この先、いつまでこの仕事をやり続けないといけないのだろう…」

「そろそろ飽きてきたので、別の仕事や別の会社でも働いてみたい」

「この先、本当に給与は上がっていくのだろうか?」

「今の自分のレベルなら、もっと高い給与を出す会社もあるはずでは?」

「社長は、自分のことを本当に評価してくれているのだろうか?」

経営者にとっては、あまり考えたくない(目を背けたくなる)ような話ですが、
その人の立場で想像してみてください。

1人のれっきとした大人が(しかもできる人であればあるほど)、こういったことを考えないわけがないですよね。

ここには、「経営者」⇔「従業員」という、

「どこまで行っても交わることのない立場の違いが存在していること」

を、まずは理解しましょう。

つまり、
経営者は、自分の人生と会社を同一視しているものですので、何なら、死ぬまで会社を仕事をするつもりでいますが、

従業員は、あくまでも「いま、今月、この会社で仕事をして給料をもらっている立場」

ですので、

自分にとっての意味やメリットがない限り、同じ会社で働き続けるという意思決定はしない

ものです。

もちろん、「人事評価制度」によってこのギャップの全てを埋めることは不可能ですが、

「考え方や認識のギャップ」があることを認識したり、そのギャップを埋めること、今すべきでない退職を防ぐこと

自体は可能です。

例えば、

「経営者は評価しているつもりでも、実は本人には伝わっていなかった」というギャップ

「お互い、将来の仕事について前向きに考えているのに、そのすり合わせができていない」という状態

「従業員はなんとなく報酬が安いという印象を持っていたが、会社としての報酬体系(水準だけでなく考え方)が伝えられていなかった」

というようなギャップです。

これらのギャップを、継続的・定期的な評価機会によって、「発生させない」あるいは「早めに解消する」こと

が、人事評価制度の役割となります。

あともう1点、従業員視点からの人事評価制度の効果としては、

「時間軸を長くとる(引き延ばす)ことができる」

点が挙げられます。

例えば、人事評価制度やその機会がない会社でも、入社してから1年(長くて2年)程度は、
「何もしなくても頑張る」人が多いはずです。

それはつまり、
「新しい会社・仕事に慣れて、一人前の戦力になる」

というピュアな目標を多くの人が持っているためです。

で、実は本人の中で問題が生じるのはその先で、

一通り業務に慣れた状態になった時に、ふと冷静に考えることで、いろんな選択肢が出てくる

わけです。

そのタイミングで、何等かのアプローチができるかどうか(機会があるかどうか)によって、本人が考える「現会社における時間軸の長さ」が変わってきます。

「新たな成長機会」や「今以上の期待レベル」が示されれば、

誰だってまずはその選択肢を検討しますよね。

いかがでしょう。以上の理由から、

◆ツール(評価や報酬についての考えをまとめたもの)と、

◆継続性のある機会(一過性でなく、定期的に反復されるコミュニケーションや報酬への反映機会)

が必要であることを、ご理解いただけるかと思います。

「そうは言っても、なかなか取り組めないんだよな~」という経営者の心理もよく分かります。「多くの経営者がどう考えているか?」は、以下の記事を参照ください。

人事評価制度が必要と分かっているけど、なかなか導入に踏み切れない経営者心理とは?

アーカイブ

よく読まれている記事