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キャリアアップ助成金(正社員化コース)が不支給になるケース

「バツ」とならないために...

多くの中小企業で活用されている「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」。
比較的適用しやすい助成金ですが、「賃金5%アップ要件」に代表されるように、年々支給要件が厳しくなっています。
正直申し上げ、私どもが対応した案件でも、残念ながら不支給になってしまったケースはございます。。
そこで、これまでの不支給案件をパターン別にまとめましたので、ぜひ今後の申請に向けて参考にしてください。


目次

会社都合退職が発生していた

これは、多くの助成金に共通する不支給要件ですので、ご存じの方もおありかと思います。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)における扱いとしては、

『転換日の前後6か月間に会社都合退職が発生していた場合は、支給対象外とする』

となっています。

どういうことかと申しますと、
申請しようとした対象者(正社員転換日:10月1日)の場合で、

会社都合退職が「当年4月1日~翌年3月31日」の間に発生してしまっていると、

その方の申請は対象外となります。

裏を返すと、その期間が過ぎれば、また新たな対象者についての転換・申請は可能となります。


支給決定時に、雇用保険適用事業所でなくなった場合

雇用関連助成金を申請するには、「雇用保険適用事業所」であることが必須要件です。

これは、従業員数が少ない会社において起こりうるケースですが、

申請した時点では1名が在籍されていても、その後に退職されてしまうと、雇用保険被保険者が0名になる(つまり「雇用保険適用事業所でなくなる」)という事態になります。

申請した案件についての審査が終了し、労働局にて「支給決定」を行う時点で雇用保険適用事業所でないと、せっかく審査が通っていても、助成金は支給されません。

また、従業員数が少ない場合だけでなく、会社の廃業や事業の統廃合により、当初申請した「雇用保険適用事業所」がなくなってしまうと、同じことになってしまいます。

申請後、支給決定が終わるまでは、雇用保険被保険者を在籍させること、雇用保険適用事業所として存続させることが必要です。


雇用保険・社会保険に未加入だった

申請対象者については、雇用保険に加入していることが前提となります。

「無期パートへの転換」においても、少なくとも「転換日以降」は雇用保険に加入されておく必要があります。

また、社会保険についても、「正社員転換」なら通常は社会保険に加入されるべき勤務時間でしょうから、必ず加入しておく必要があります。

「無期転換」においては、その方の所定労働時間が加入要件を満たしていれば、社会保険への加入が必要です。

社会保険任意適用事業所については、社会保険に入る義務はありませんが、「正社員転換」する場合は、社会保険の適用要件を満たすような労働条件(勤務時間)で雇用していなければなりません。


雇用保険加入手続き時の「雇用形態」の食い違い

雇用保険加入の手続きをされた方ならご存じですが、対象者の「雇用形態」として、「有期契約」「パートタイム」等を選択して届け出を行います。

入社時から「正社員」の場合は、「その他」という選択肢で届け出をしますが、届け出時に「有期契約」や「パートタイム」の人であっても、あまり深く考えずに「その他」で手続きされる場合もよくあります。

ただそうなってしまうと、助成金の審査時点で、

「正規転換」で申請しているのに、最初から「その他」になっているのはおかしい、

という理屈で、チェックが入ります。

(「その他」というわかりにくい選択肢も個人的にはどうかと思いますが。。)

ちなみに、このチェックポイントについては、各都道府県労働局によって、審査対象にしている県としていない県に分かれているのが実態です。


「基本給+諸手当」が減額されている

キャリアアップ助成金の趣旨は、「正社員転換することにより処遇を改善する」ことにあります。

ですので、「月額給与が下がらない」ことが大前提となります。

審査対象となる月額給与としては、「定額で支給される諸手当」です。
但し、「通勤手当」などの実費補填的なものは対象外です。

詳しくは、下記の記事も参照ください。

【令和4年度最新】キャリアアップ助成金正社員化コースで注意すべき変更点&就業規則改定方法

ちなみに、令和2年度からルールが一部改訂されて、

昨年度までは「対象となる諸手当」個々で見て、減額が生じていると支給対象外となりましたが、

今年度は「基本給+諸手当の総額」で減額になっていなければよい、という扱いになっています。この点については、やや緩和されたことになります。


諸手当の算定方法が、就業規則に未記入

これが、「賃金3%アップ要件」をクリアするための重要ポイントですので、どうぞご注意ください。

以下の例をご覧ください。

(転換前)基本給 200,000円
(転換後)基本給 200,000円 役職手当 100,000円 計 210,000円

転換前 200,000円より5%アップとなり、数字上はクリアなのですが、

転換後に昇給(追加)されたのが、基本給でなく今回のような「手当」の場合、

その手当の支給根拠が、就業規則(賃金規程)に明記されていなければ、5%アップ要件の算定に、加えることができません。

どの支給項目でで昇給するか?をあらかじめ検討し、諸手当による場合は就業規則に明記する必要があります。


「短時間正社員」の所定労働時間が未規定

正社員は週40時間勤務が一般的ですが、それよりも短い所定労働時間で、正社員と同じ給与支払い形態の場合は、

「短時間正社員」として、通常の正社員転換と同額の助成金(57万円)が申請できます。

但し、あらかじめ就業規則に「短時間正社員の所定労働時間は○○以下」等の記載をしておく必要があり、それが無いと、申請しても不支給となります。


転換時に定年年齢まで1年を切っている

これも勘違いされやすいのですが、会社で定める定年年齢(例.60歳)を過ぎて、パートから月給社員に登用した場合に、「正社員転換」で申請してしまう場合があります。

ただ、理屈上は、定年年齢を過ぎて正社員雇用(無期雇用)をするという根拠がないため、キャリアアップ助成金の申請では対象外となります。

また、「定年年齢間際に転換していればいいのか?」というケースも生じるため、そのタイムリミットとしては、

「定年年齢まで1年を切ってからの転換は対象外」

と明確に区切られています。


入社3年以上の有期契約スタッフ

「有期契約→正規または無期契約」の場合は、入社から3年以下の転換でないと、対象外となってしまいます。

「結構前のことで、正確な入社日がわからない」となっているケースもありますが、

少なくとも、「雇用保険加入日」が転換日よりも3年以上前であれば、助成金の審査時点でチェックが入ります。


以上、いかがでしょうか?

「読んでみても今一つピンとこない」内容もあったかと思います。年々、要件が厳しくなりますので、かなりの件数をこなしている私でさえ、チェックポイントが多すぎて頭が混乱しがちです(苦笑)。上記が全てではありませんので、実際には「3%アップ要件」などはもっと複雑な条件が絡みます。

正直申し上げ、普通の経営者や人事担当の方が手に負えるものでもなくなってきています。

自分の「手間」や「頭」を取られずに、プロに任せた方が良いと考えられれば、こちらのプランをご利用ください。

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難しくなってきたとはいえ、雇用関連助成金の中でもかなりの予算が取られている「キャリアアップ助成金」。その中でも「正社員化コース」は、多くの中小企業が「空気を吸うように」受給されればよい助成金だとも思っています。

なるべく受給確率を挙げていただくためにも、ぜひとも参考にしてくださいね。

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