5%アップ要件の算定方法
2018年度から、キャリアアップ助成金(正社員化コース)に適用された5%アップ要件。まずは、その基本的な内容を確認します。
正社員転換後6か月間の賃金総額(時間単価)が、転換前6か月間の賃金総額(時間単価)を5%以上上回らなければならない
これが基本要件です。
そして、
その「賃金総額」をカウントする際、何を含めることができるか?
がポイントとなります。
考え方としては、
「①固定的に支給される月給」+「②あらかじめ支給月・支給対象者を明記した賞与」
が算定に含まれます。
①固定的に支給される月給
としては、「基本給」「役職手当」「資格手当」「職務手当」などが含まれますが、
逆に算定対象外となるのが、
「歩合給」「精皆勤手当」のような月々変動する可能性があるものや、
「通勤手当」「住宅手当」のような、実費補填的要素のあるもの、
「時間外手当」「固定残業手当」
は除かれますのでご注意ください。
また、
②あらかじめ支給月・支給対象者を明記した賞与
を算定に含めることができるのは、要件クリアの方策としては有効な手段となりますが、
後からの「お手盛り」を防ぐために、
あらかじめ、就業規則に「賞与支給月」や「支給対象者」を明記しておくことが必要です。ここでいう支給対象者の明記方法とは、例えば「正社員を対象に」といったような記載です。
2019年度からの変更点【賞与算定の扱い】
上記の基本要件に変更はないのですが、「算定に含められる賞与」について、審査基準が変わっています。
それは、従来が「算定した結果として、その期間で5%アップしていればいい」
という考え方だったのに対して、今年からは
「結果だけでなく、その前提として処遇改善の明示が必要」
とされています。
具体的な例を挙げると、
転換前:月給20万円×6か月+賞与10万円=130万円
転換後:月給20万円×6か月+賞与20万円=140万円
の場合、140万円÷130万円=107%となり、結果として5%要件はクリアしていますが、
そもそも、この対象者に提示されていた処遇条件が、
転換前(有期契約期間):「賞与有り」
転換後(正規契約期間):「賞与有り」
の場合は、金額の差はあったとしては、
「処遇条件の改善がない」という判断となり、賞与支給額を算定に入れることができません。
となると、月給の昇給が無いため、賞与を除けば5%アップとならず「不支給」の判断となります。
「処遇条件の明示」自体は、『就業規則』や『雇用契約書』で行うこととなり、その表記方法が判断材料となります。
以上より、5%アップ要件をクリアしたい場合は、「月給ベースでの5%昇給」がより確実ではありますが、
そうなると、固定人件費の上昇にもつながりますので、「賞与」活用を考えられるなら、就業規則(賃金規程)の記載方法など、より制度設計の部分で下準備が必要となってきます。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、相変わらず一人当たりの支給単価も大きく、受給の流れが作れれば、中小企業にとっては非常にインパクトのある助成金ですが、以上のような要件追加により、「個々の労働条件の設定」「昇給・賞与支給等の給与計算」「就業規則の規定」において、細心の注意が必要です。
あらかじめ、毎月の給与計算から「賃金5%アップ要件を満たす」ための給与計算を依頼されたい場合は、以下のサービスをご利用ください。
これから「キャリアアップ助成金」の申請をされる会社様は、こちらもどうぞ参照ください。