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特定求職者雇用開発助成金とは?制度の目的と仕組み
特定求職者雇用開発助成金は、高年齢者や障害者など就職が困難な方の雇用機会を拡大することを目的とした国の助成金制度です。ハローワークや指定の職業紹介事業者からの紹介を通じて対象者を雇い入れ、継続して雇用する事業主に対して支給されます。
この助成金は、採用時に一括で支給されるのではなく、半年ごとの支給対象期に分けて分割で支給される仕組みとなっています。企業は対象者の雇用を継続しながら、定期的に管轄の労働局へ申請を行う必要があります。
【2026年度】特定求職者雇用開発助成金の重要な変更点
2026年度(令和8年度)の特定求職者雇用開発助成金では、制度の基本構造は維持されつつも、実務上見逃せない重要な変更がいくつか加えられました。対象者の要件は従来通り継続され、新たに提出書類が追加されることもなく、従来通りの書類で申請が可能です。
特に、高年齢者の対象要件に変更はなく、賃金台帳の提出も以前より必須とされている要件です。ここでは、2026年度からの主な変更内容について詳しく解説します。
60歳以上の高年齢者は個別支援の受給が必須に
令和8年5月1日以降の紹介より、特定就職困難者コースにおける高年齢者(60歳以上)の対象要件が厳格化されました。従来は雇入れ時の年齢が60歳以上であれば対象となっていましたが、今後は単に年齢要件を満たすだけでは不十分となります。
新たな要件として、ハローワーク等において就労に向けた個別支援を受けていることが必須となりました。採用選考の際には、対象者が個別支援を受けているかどうかを事前に確認することが重要になります。
全コース共通で賃金台帳の提出が義務化
令和8年4月1日以降の支給申請からは、全コース共通で賃金台帳の提出が必須化されました。支給申請時に添付書類として賃金台帳の提出が確認できない場合は、一律で不支給となる厳しい取り扱いが明確にされています。
提出する賃金台帳には、労働日数、労働時間数、賃金額など労働基準法で定められた記載事項が正確に記入されている必要があります。企業は日頃から法定帳簿を適切に管理し、スムーズに提出できる体制を整えておくことが求められます。
成長分野人材確保・育成コースの廃止
デジタルやグリーンなどの成長分野への労働移動を促す目的で創設されていた「成長分野等人材確保・育成コース」は、令和7年度末をもって廃止されました。通常の1.5倍の助成が受けられるコースでしたが、令和8年度以降は新規の申請ができなくなっています。
これにより、2026年度の特定求職者雇用開発助成金は、特定就職困難者コースを含む全4コースでの運用となります。企業は自社の採用計画に合わせて、現在利用可能なコースを正しく選択する必要があります。
特定求職者雇用開発助成金の全4コースと対象者・支給額

2026年度現在、特定求職者雇用開発助成金には対象者の特性に応じた4つのコースが設けられています。それぞれのコースで対象となる求職者の条件や、企業規模に応じた支給額が細かく定められています。
ここでは、各コースの対象者と中小企業における最大支給額について整理して解説します。なお、対象者が短時間労働者(週の所定労働時間が20時間以上30時間未満)の場合は、支給額が減額される点に注意してください。
特定就職困難者コース(障害者・高年齢者・母子家庭の母など)
特定就職困難者コースは、高年齢者や障害者、母子家庭の母など、一般的な採用活動では就職が難しいとされる方を雇い入れる事業主を支援する主力コースです。対象者の属性や障害の程度によって、支給額が3段階に分かれています。
中小企業の場合、重度障害者等を採用して3年間継続雇用すると最大240万円が支給されます。短時間労働者の場合は、高年齢者等が40万円、身体・知的障害者および重度障害者等が80万円となります。
| 対象者 | 支給額(中小企業) |
|---|---|
| 高年齢者・母子家庭の母等 | 60万円 |
| 身体・知的障害者 | 120万円 |
| 重度障害者等 | 240万円 |
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースは、障害者手帳を所持していない発達障害者や難病のある方を雇い入れる事業主を対象としたコースです。雇入れから約6カ月後にハローワーク職員等が職場訪問を行い、職場定着に向けた支援を実施します。
中小企業が対象者をフルタイムで雇い入れた場合、2年間にわたって総額120万円が支給されます。短時間労働者として雇い入れた場合の支給額は、総額80万円となります。
| 対象者 | 支給額(中小企業) |
|---|---|
| 発達障害者・難病患者 | 120万円 |
中高年層安定雇用支援コース(35歳から60歳未満)
中高年層安定雇用支援コースは、旧「就職氷河期世代安定雇用実現コース」の要件を見直し、対象年齢を広げて新設されたコースです。35歳から60歳未満で、過去5年間に正規雇用期間が1年以下であるなど、正規雇用での就職が困難な方を対象としています。
対象者を正規雇用労働者として新たに雇い入れた中小企業には、1年間にわたって総額60万円が支給されます。大企業の場合は総額50万円の支給となります。
| 対象者 | 支給額(中小企業) |
|---|---|
| 35歳〜60歳未満の就職困難者 | 60万円 |
生活保護受給者等雇用開発コース
生活保護受給者等雇用開発コースは、自治体からハローワークに対して就労支援の要請があった生活保護受給者や生活困窮者を雇い入れる事業主を支援するコースです。雇い入れた労働者に対する配慮事項などの報告が求められます。
中小企業が対象者をフルタイムで雇い入れた場合、1年間にわたって総額60万円が支給されます。短時間労働者として雇い入れた場合の支給額は、総額40万円となります。
| 対象者 | 支給額(中小企業) |
|---|---|
| 生活保護受給者・生活困窮者 | 60万円 |
助成金を受給するための主な支給要件と除外要件
特定求職者雇用開発助成金を受給するためには、対象労働者の雇い入れに関して定められた複数の要件をクリアする必要があります。要件を満たしていない場合は、申請しても不支給となってしまうため注意が必要です。
ここでは、助成金を受給するための代表的な支給要件と、対象外となってしまう除外要件について解説します。採用活動を始める前に、自社が要件を満たしているか必ず確認しておきましょう。
ハローワーク等の紹介による雇い入れであること
この助成金を受給するための大前提として、対象労働者はハローワークや地方運輸局、または適正な運用を期すことのできる有料・無料職業紹介事業者等の紹介により雇い入れる必要があります。指定された機関を経由しない採用は対象外となります。
そのため、求人サイトや求人情報誌からの応募による採用は助成金の対象になりません。助成金の活用を検討している場合は、必ずハローワーク等へ求人を申し込むところからスタートしてください。
雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として継続雇用すること
対象労働者を雇用保険の一般被保険者、または高年齢被保険者として雇い入れることが必須要件です。さらに、雇入れの時点で対象者を継続して雇用することが確実であると認められなければなりません。
ここでいう「継続して雇用する」とは、対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで、かつ雇用期間が継続して2年以上であることを指します。有期雇用契約であっても、自動更新などによりこの条件を満たす場合は対象となります。
雇い入れ前後6カ月間に事業主都合の解雇がないこと
助成金を受給するためには、対象労働者の雇入れ日の前日から起算して6カ月前の日から、1年を経過する日までの間に、雇用保険被保険者を事業主都合で解雇していないことが求められます。この期間内に解雇実績があると、助成金は支給されません。
なお、この事業主都合の解雇には、会社側から退職を促す退職勧奨による離職も含まれます。助成金を申請する際は、直近の離職者の退職理由が自己都合であったか事業主都合であったかを正確に把握しておく必要があります。
事前選考や知人からの紹介は支給対象外となる
ハローワーク等からの紹介を受ける前に、すでに対象者と面接を行っていたり、採用を約束していたりする場合は助成金の対象外となります。また、過去3年以内に自社で雇用や派遣、請負などの関係があった方を雇い入れる場合も支給されません。
さらに、代表者や役員の3親等以内の親族を雇い入れる場合や、知人からの直接の紹介も対象外となります。あくまでハローワーク等の公的な紹介ルートを通じた、新規の雇用創出であることが求められます。
特定求職者雇用開発助成金の申請方法と手続きの流れ

特定求職者雇用開発助成金を受給するためには、正しい手順を踏んで採用活動と申請手続きを行う必要があります。手続きの順番を間違えたり、期限を過ぎてしまったりすると、要件を満たしていても助成金を受け取ることができません。
ここでは、ハローワークへの求人申し込みから助成金が支給されるまでの全体的な流れを4つのステップに分けて解説します。計画的に手続きを進められるよう、全体のフローを把握しておきましょう。
1. ハローワーク等への求人申し込みと対象者の紹介
最初のステップとして、管轄のハローワークや指定の職業紹介事業者へ求人を申し込みます。求人票には、労働条件や業務内容を正確に記載し、助成金の対象となる求職者からの応募を待ちます。
ハローワーク等から条件に合う求職者の紹介を受けたら、必ず紹介状を発行してもらい、それを受け取った上で面接などの選考に進みます。紹介状の発行前に選考を開始してしまうと、助成金の対象外となるため注意してください。
2. 対象者の雇い入れと雇用管理の徹底
選考の結果、採用が決定したら対象者を雇い入れ、速やかに雇用保険の加入手続きを行います。雇い入れ後は、労働基準法に基づき、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿などの法定三帳簿を正確に作成し、整備・保管することが求められます。
特に2026年度からは、支給申請時に賃金台帳の提出が必須化されているため、日々の労働時間や賃金の計算を正確に行い、帳簿に記録しておくことが非常に重要です。
3. 支給対象期経過後の支給申請
助成金は半年ごとの「支給対象期」に分けて支給されます。各支給対象期が経過したら、事業所の所在地を管轄する労働局またはハローワークへ支給申請書と必要書類を提出します。
申請の期限は、各支給対象期の末日の翌日から起算して2カ月以内と厳格に定められています。期限を1日でも過ぎると申請が受理されないため、スケジュール管理を徹底し、余裕を持って書類を準備しましょう。
4. 労働局の審査と助成金の支給決定
提出された申請書類をもとに、労働局による審査が行われます。審査では、対象労働者の出勤状況や賃金の支払い状況、事業主都合の解雇がないかなど、支給要件を満たしているかが厳密に確認されます。
審査の結果、無事に支給決定となれば、事業主が指定した銀行口座に助成金が振り込まれます。なお、申請結果の通知は支給決定時に送付されるため、申請から実際の入金までには数カ月程度の時間がかかります。
賃金台帳の提出義務化に備える労務手続きのDX化
2026年度から特定求職者雇用開発助成金の全コースで賃金台帳の提出が必須化されたことにより、企業にはより正確で迅速な労務管理が求められるようになりました。手作業や表計算ソフトでの管理では、計算ミスや記載漏れのリスクが高まります。
この課題を解決し、助成金申請をスムーズに進めるためには、労務手続きのDX(デジタルトランスフォーメーション)化を進めることが非常に有効です。ここでは、システム導入によるメリットについて解説します。
クラウド給与計算システムによる法定帳簿の正確な管理
クラウド給与計算システムを導入することで、勤怠データと連携した正確な給与計算が自動で行えるようになります。これにより、労働基準法で定められた記載事項を満たす賃金台帳を、ミスなく簡単に作成・出力することが可能です。
また、賃金台帳などの法定帳簿は原則5年間(当面の間は3年間)の保存が義務付けられています。クラウドシステムを利用すれば、データとして安全に長期保管できるため、紛失のリスクを防ぎ、必要な時にすぐにデータを取り出すことができます。
助成金申請をスムーズにするペーパーレス化の推進
労務管理システムを活用してペーパーレス化を推進することで、助成金申請にかかる事務負担を大幅に軽減できます。従業員情報をデータで一元管理できるため、申請に必要な出勤簿や労働者名簿などの書類準備が迅速に行えます。
さらに、電子申請に対応したシステムを利用すれば、オンラインで手続きを完結させることも可能です。紙の書類を印刷・郵送する手間が省け、手続きの進捗状況もリアルタイムで確認できるようになるため、業務効率が飛躍的に向上します。
特定求職者雇用開発助成金に関するよくある質問

特定求職者雇用開発助成金の活用を検討する際、採用方法や雇用契約の条件などについて疑問を持つ人事担当者は少なくありません。制度のルールを正しく理解していないと、思わぬ理由で不支給となってしまうことがあります。
ここでは、助成金の申請実務において特によく寄せられる質問とその回答をまとめました。自社の採用計画と照らし合わせながら確認してみてください。
自社ホームページからの直接応募は助成金の対象になる?
自社ホームページからの直接応募や、民間の求人サイト経由での採用は、特定求職者雇用開発助成金の対象にはなりません。この助成金は、ハローワークや指定の職業紹介事業者からの紹介による雇い入れであることが必須条件です。
また、ハローワークのオンライン自主応募(求職者がマイページから直接応募する仕組み)を利用した場合も対象外となります。助成金を活用する場合は、必ずハローワーク等の窓口を通じて紹介状の発行を受けてください。
試用期間を設けて採用した場合も申請できる?
正社員として雇い入れる際に試用期間を設けること自体は、直ちに助成対象外となるわけではありません。しかし、契約内容や申請のタイミングによっては不支給となるケースがあるため注意が必要です。
具体的には、第1期の支給申請時に試用期間が継続している場合や、試用期間と本採用で雇用契約が別になっている場合は助成対象外となります。試用期間を設ける場合は、雇用形態の一貫性や継続雇用の見込みが確認できる契約内容にしておく必要があります。
トライアル雇用助成金など他の助成金と併用できる?
特定求職者雇用開発助成金は、条件を満たせばトライアル雇用助成金と併用することが可能です。トライアル雇用終了後に、対象者を引き続き継続して雇用する場合に申請することができます。
ただし併用する場合、特定求職者雇用開発助成金は第2期支給対象期分からの受給となります。他の助成金との併用については、対象となる期間や支給額の調整が行われる場合があるため、事前に管轄の労働局へ確認することをおすすめします。
特定求職者雇用開発助成金の対象者を正しく理解し活用へ
特定求職者雇用開発助成金は、高年齢者や障害者など多様な人材の雇用を促進し、企業の採用コスト負担を軽減できる非常に有益な制度です。2026年度からは、高年齢者の個別支援要件の追加や賃金台帳の提出義務化など、実務に直結する重要な変更が行われました。
助成金を確実に受給するためには、最新の対象要件を正しく理解し、クラウドシステムなどを活用して正確な労務管理体制を構築することが不可欠です。制度の仕組みをしっかりと把握し、自社の人材確保と組織の成長にぜひ役立ててください。









