毎年5月の下旬になると、労働局から「労働保険年度更新」の書類が緑色の封筒で送られてきます。創業されて日が浅い会社様は驚かれるかもしれませんが、これは、従業員を1名でも雇用するすべての会社(労働保険適用事業所)に義務付けられている届出です。
対象となるのは、
①前年度(前年4月~当年3月)の確定保険料
②今年度(当年4月~翌年3月)の概算保険料
の申告の手続きです
ちなみに労働保険とは、労災保険と雇用保険を併せた保険の総称を指し、労働者の保護を目的にしています。労働保険によって、勤務時間中のけがに対する補償や、失業が発生した場合の給付が受けられるよう、定められてます。
「労働保険」の詳細については、以下もどうぞ参照ください。
「労働保険」とは、「労災保険」と「雇用保険」がセットになったもの?
労働保険の年度更新とは?
労働保険制度を維持・運営するために、従業員を雇用するすべての会社に保険加入が義務付けられ、加入した会社には「労働保険料」を毎年納付しなければなりません。
その、会社が納めるべき「労働保険料」を算出して申告するのが「労働保険年度更新」と言われる届出で、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間の賃金総額を基準に計算を行い、労働保険料を算出します。
労働保険料の計算・納付の仕組みを、以下の4STEPでご説明します。
【STEP1】労働保険加入時(概算保険料の申告・納付)
労働保険に加入した初年度は、加入時に「概算の労働保険料」を納付します。つまり、加入時点(人の雇用がスタートした時点)では、年度内にどれだけの賃金を支払うかは確定していない状態ですが、ひとまず「見込み」で年度内の支払い賃金を予測し、その額に基づいた労働保険料を先に納付します。
【STEP2】確定保険料の申告:毎年6月1日~7月10日まで
最初の年度末(3月末まで)の賃金の支払い額が確定すれば、その賃金総額に基づいた「確定保険料」を計算し、納付済みの「概算保険料」との差額を清算してもらいます。
【STEP3】概算保険料の申告:毎年6月1日~7月10日まで
また、STEP2と同じタイミングで、これからの年度(4月~3月)での賃金総額を予測し、それに基づいた「概算保険料」を申告します。
【STEP4】確定保険料&概算保険料の納付:毎年6月1日~7月10日まで
STEP2&3の届出後、速やかに「労働保険料の納付」を行う必要があります。
また、手続を行わなかったり遅れたりした場合、どのような影響があるのでしょう?
納付が遅れたり、労働保険料の申告額に誤りがあった場合は、追徴金(保険料の10%)が課される場合があります。
また、雇用関連助成金の申請を行う会社は、労働保険料の滞納があると、助成金の受給ができませんので、どうぞご注意ください。
以上のように、労働保険の年度更新とは、年に1回、「前年度の確定保険料」と「次年度の概算保険料」を申告&納付する手続のことをさします。
私ども社会保険労務士法人はた楽では、毎月の給与計算サポートに連動して「労働保険年度更新」の手続代行が可能です。
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労働保険年度更新の「具体的な作業手順」
それでは、毎年6月1日から7月10日までに行うべき「労働保険年度更新の作業」として、何をしていけばよいのでしょうか?
1.申告関係書類の確認
2.賃金集計表を作成する
3.申告書の記入
4.申告書の提出
5.保険料の納付
それぞれの項目について紹介していきます。
1.申告関係書類の確認
毎年5月から6月頃に労働基準監督署から緑色の封筒が届くので、申告関係書類の確認を行いましょう。
緑色の封筒の中身については、複写式の申告書や領収済通知書(納付書)、賃金集計表が入っています。
申告書には、すでに以下の項目が記載(印字)されています。
- 労働保険番号
- 労働保険料率
- 申告済概算保険料額
- 法人番号
上記項目の内容に誤りがないことを確認して、万が一間違いがあれば労働基準監督署に問い合わせましょう。
2.賃金集計表を作成する
賃金集計表に、雇用保険の対象労働者と労災保険の対象労働者について、賃金総額と対象労働者数を集計して記入を行います。
これらの支給項目を区別したうえで、前年4月から当年3月分までの賃金総額を集計します。この部分が、労働保険年度更新の作業において、いちばん労力を要する点となります。
賃金総額については、事業主が労働者に支払うすべての金額を指し、社会保険料や税金を控除する前の総額です。
具体的に賃金に含めるものと含めないものについては、以下のとおりです。
- 基本給
- 賞与
- 通勤手当
- 残業手当
- 深夜手当
- 家族手当(扶養手当)
- 技能手当
- 調整手当
- 地域手当
- 住宅手当
- 物価手当
- 休業手当
- 宿直手当
- 雇用保険料
- 社会保険料
- 前払退職金
- 役員報酬
- 結婚祝い金
- 死亡弔慰金
- 災害見舞金
- 勤続報奨金
- 退職金
- 出張旅費
- 物品購入費
- 解雇予告手当
- 財形貯蓄支援金
3.申告書の記入
賃金集計表の作成が完了したら、申告書の記入を行います。
申告書には、労災保険と雇用保険の対象賃金や、従業員に支払う見込みの賃金総額などを記入していきます。
しかし、労災保険と雇用保険の被保険者の対象は異なるので、金額を分けて算出する必要があります。
4.申告書の提出
申告書の作成が完了したら、7月10日までに提出を行います。
具体的に提出先と提出方法については、以下のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
申告書類の提出先 | 労働基準監督署・労働局・銀行・郵便局 |
提出方法 | 窓口・電子申請・郵送 |
以下の項目に当てはまる法人は、申告書の電子申請が義務化されています。
- 投資法人
- 特定目的法人
- 相互会社
- 資本金が1億円を超える法人
具体的な方法は、厚生労働省の「労働保険年度更新電子申請操作マニュアル」を確認するようにしましょう。
5.保険料の納付
最後に、保険料の納付を行います。
原則として、保険料の納付は一括になりますが、概算保険料が40万円以上であれば3分割で納付が可能です。
納付方法は、銀行や郵便局などで可能ですが、口座振替による納付方法の場合だと、納付期限が緩和されます。
労働保険の年度更新がイレギュラーなケース
労働保険の年度更新がイレギュラーなケースについては、以下が挙げられます。
- 事務所が複数ある
- 賃金の種類や雇用区分によって支払日が異なる
- 年度途中で各種変更がある
それぞれのケースについて紹介していきます。
事務所が複数ある
事務所が複数ある場合には、それぞれの事務所ごとに労働保険の年度更新を行う必要があります。
基本的に労働保険は、会社単体ではなく事業所単位で加入する必要があります。
しかし、同一の事業主や、労災保険料率に定める事業の種類が同じ事業所については、条件を満たせばまとめて手続きができます。
事業所が複数ある場合には、あらかじめ労働局などのホームページを確認して、まとめて手続きを行えるかどうか確認をしておきましょう。
賃金の種類や雇用区分によって支払日が異なる
労働保険は、賃金の種類や雇用区分によって支払日が異なるので、注意が必要です。
確定保険料の申告は、4月1日から翌年3月31日までの労働に対して支払われた賃金の総額をさします。
しかし、正社員とパートやアルバイトによって、給料の締め日や支払日が異なる場合には、集計対象となる賃金台帳の期間が異なります。
また、同じ労働日に対する賃金が分かれているケースについても集計する際には注意が必要です。
年度途中で各種変更がある
年度途中で各種変更がある場合には、原則として10日以内に変更届が必要になります。
具体的な変更内容については、所在地や名称の変更、事業の廃止などが挙げられます。
所在地を変更する際には、管轄が変更されて労働保険番号が変わるので、労働保険の年度更新を行う時には、間違えないように注意が必要です。
また、事業を廃止した場合については、廃止日までに支払った賃金総額を元に確定保険料を計算して、50日以内に確定保険料を申告と納付を行います。
社会保険労務士法人はた楽で、労働保険年度更新サポートをお請けできるケース
今回は、労働保険の年度更新の手続きの流れや注意点をご紹介しました。
労働保険年度更新の特徴としては、「毎年6月1日~7月10日までの短期間」で手続きを完了させる必要があるため、多くの会社様でその業務負担は軽くはありません。また上記のように、労働保険の更新事務は非常に複雑で、初めて取り組む方はもちろん、年に1回の手続き内容を毎年覚えて実施すること自体も、それなりの労力を要します。
特に、「1年間の賃金支払い額の集計作業」は、対象となる人の対象となる賃金項目を抽出のうえ集計を進めていく必要があるため、正確な集計作業がなかなか難しいものです。
そこで、私ども「社会保険労務士法人はた楽」では、全国の会社様を対象に、以下の条件に合致する場合に『労働保険年度更新の手続き代行』を受託しています。
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