雇用形態の種類一覧とメリット・デメリットを解説!社会保険の取り扱いは違う?

働き方の多様化が進む現代では個人の働き方に応じて雇用形態を選択できます。

この記事では雇用形態の種類一覧についてメリット・デメリットとともに紹介します。
合わせて、雇用形態ごとに異なる社会保険の取り扱いについて確認しましょう。
従業員を雇う側の企業にとっても、雇用形態ごとの特徴を確認しておくことで流動性のある人材確保が可能です。

雇用形態の種類を理解して多様な働き方に対応しましょう!

<この記事で分かること>
・雇用形態の種類を一覧で知りたい
・雇用形態を変更する手続きとは?
・雇用形態ごとのメリットとデメリットとは?

雇用形態の種類一覧

雇用形態とは

厚生労働省の分類によると、雇用形態の種類には以下8通りが挙げられます。

中には雇用契約ではなく、業務委託契約のように柔軟性の高い働き方を選択する人も増えています。

雇用形態労働の内容
正社員無期限の雇用契約
派遣労働者派遣会社を通じての雇用契約
契約社員
(有期労働契約)
雇用期限が設定された雇用契約
パートタイム労働者
(短時間労働者)
正社員よりも短時間の雇用契約
短時間正社員通常の正社員より労働時間が短い雇用契約
業務委託契約労働者ではなく事業主として扱われる
労働法の範囲には入らない
家内労働者委託を受けて物品の製造や加工などを個人で行う
労働法の範囲には入らない
自営型テレワーカー情報通信機器を活用して成果物の作成・提供を行う
労働法の範囲には入らない

なお、民法第623条によると「雇用」とは労使間で労働への従事とその見返りとしての報酬を与える契約であると定義されています。
事業主は事業で必要な労働を得る見返りとして報酬を支払う義務があります。

雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

引用:民法第623条


正社員

正社員は雇用期間に定めのない労働契約です。

正社員に限らず、労働者と雇用契約を結ぶ際は以下のように労働条件を明示することが義務付けられています。
なお、常時10人以上の労働者を雇っている企業は就業規則を作成し、労働基準監督署長に届け出なければなりません。

【労働条件の明示】
・契約はいつまでか
・期間の定めがある契約の更新についての決まり
・どこでどんな仕事をするのか
・仕事の時間や休みはどうなっているのか
・賃金をどのように支払うのか
・辞めるときのきまり
(参考:人を雇うときのルール|厚生労働省)

派遣労働者

派遣労働者は人材派遣会社と労働契約を結んだうえで、派遣先の企業で働く労働形態です。
労働者に賃金を支払う事業主と指揮命令をする会社が異なる複雑な契約であるため、労働者派遣法において派遣労働者を守るためのルールが定められています。

労働者派遣において、事故やトラブルが起きた際の責任所在は人材派遣会社にあります。

【派遣労働者における責任の所在】
・雇い主:人材派遣会社
・労働する場所:派遣先の会社
・事故やトラブル発生時の責任所在:人材派遣会社

契約社員(有期労働契約)

契約社員(有期労働契約)は労働契約に雇用期間が定められている契約です。

契約期間は事業主と労働者の合意を得て定めるものであり、1回あたりの契約期間の上限は最大で3年間です。
契約期間が満了すると、自動的に労働契約は終了となります。

パートタイム労働者

パートタイム労働者とは同じ事業所に雇用されている正社員と比べて労働時間が短い労働者です。

パートタイム労働者を雇う際は、パートタイム労働法に基づいて公正な待遇の確保や正社員への転換などに取り組むことが義務付けられています。
また、パートタイム労働者においては「昇給・退職手当・賞与の有無」についても明示が義務付けられています。

短時間正社員

短時間正社員はフルタイムの正社員と比べて所定労働時間(所定労働日数)が短い労働者です。

期間の定めのない労働契約を結んでおり、時間あたりの基本給および賞与・退職金などの算定方法が正社員と同等の契約となっています。

業務委託契約

業務委託契約、あるいは請負契約は事業主と労働者の関係ではなく、委託者と受託者の関係として作業を依頼します。
仕事の報酬は受託者が仕事をする成果物に対して委託者が支払う契約内容です。

フリーランスなど企業に属さない自由業は業務委託契約に該当します。
業務委託契約の場合は労働法による規制を受けませんが、働き方の実態が「労働」とみなされる場合は労働法の規程を受ける場合があります。

【業務委託が労働とみなされる場合】
・委託者が受託者に対して、業務のやり方について具体的な指示命令をしている
・業務を行う時間や場所が決められており、拘束性が高い
・就業規則に準じた社内ルールを遵守するよう義務付けている
・受託者に業務を断る自由が認められていない
・仕事の成果ではなく、時間給や日給など労務に対して報酬が支払われている
など

以下、ドキュサインのブログも参考になりますので、ぜひご覧ください。

家内労働者

家内労働者は委託を受けて物品の製造または加工などを個人で行う働き方です。
家内労働者は「家内労働法」という法律で保護されており、家内労働手帳の交付や最低工賃の遵守が義務付けられます。

自営型テレワーカー

自営型テレワーカーはパソコンやスマートフォンなど情報通信機器を活用して、自ら選択した場所において成果物の作成又は役務の提供を行う働き方です。
近年はインターネット技術やサービスが発達しており、自営型テレワークによって働き方を自由に決められます。

雇用形態を変更する手続き

雇用形態とは

従業員の雇用形態を変更する場合は、いくつか守らなければならないルールがあります。

雇用契約を変更する場合には、契約書のかたちで書面を残さなければなりません。
雇用契約の再締結、あるいは覚書を交わすなど、事業主と労働者の間で契約形態が変わったことを記録します。

契約書は事業主と労働者の間で合意があったことを示す重要な書類です。
後になってからトラブルにならないよう、必ず契約書を交わしましょう。

パートタイマーから正社員へ変更する場合

パートタイマーなどの有期雇用を正社員へ変更することで労働者の待遇を改善できます。
フルタイムでの勤務が困難な場合は「短時間正社員制度」へ変更することで、正社員の待遇フレキシブルな働き方を支援可能です。

また、パートタイマーや有期労働契約の従業員を正社員へ登用することで「キャリアアップ助成金」を受けられます。
キャリアアップ助成金とは有期雇用労働者等のキャリアアップを実現するため、従業員の待遇改善に努める企業を応援する制度です。

派遣社員を直接雇用へ変更する場合

派遣社員を締結できるのは原則として3年間までになります。
派遣期間が上限に達した場合、派遣社員は失職してしまうかもしれません。
派遣社員を直接雇用(雇い入れ)することで、業務に慣れた人材を雇用できます。

労働者派遣法では派遣社員に就労をさせている事業主に対して「雇入れ努力義務」「募集情報の提供義務」を定めています。
1年以上同じ業務に従事している派遣社員に対しては派遣社員を雇い入れるように努力しなければなりません。

労働契約で禁止されていること

労働法では、労働者が不当に会社から拘束されることがないように、以下の条件で契約を締結させることを禁止しています。

  1. 労働者が労働契約に違反した場合に違約金を支払わせることや、その額をあらかじめ決めておくこと(労働基準法第16条)
  2. 労働することを条件として労働者にお金を前貸しし、毎月の給料から一方的に天引きする形で返済させること(労働基準法第17条)
  3. 労働者に強制的に会社にお金を積み立てさせること(労働基準法第18条)

雇用形態ごとの労働保険や社会保険の加入義務・条件

雇用形態とは

従業員を雇うためには法律で労働保険および社会保険への加入が義務付けられています。

労働保険は労働者の労働環境を守るための保険で、「雇用保険」「労災保険」の2種類です。
社会保険は「健康保険」と「厚生年金保険」のように労働者の健康や生活をまもるための保険です。

これらの保険は労働者を雇う事業者であれば、一定条件を満たしている場合必ず加入しなければなりません。

雇用保険

雇用保険は労働者が失業した場合に生活の安定と就職の促進を守るための保険です。

雇用保険の適用条件は以下の通りです。
これらの条件は事業規模に関わらず一定となります。

なお、雇用保険料は労働者と事業主の双方が負担します。

【雇用保険の適用義務】
・1週間の所定労働時間が20時間以上
・31日以上の雇用見込がある人を雇い入れた場合

労働災害保険

労働災害保険は労働者が業務を原因とする怪我や病気で国が事業主に代わって給付を行う制度です。

労働基準法第75条、第76条では労働者が仕事が原因で怪我や病気をした場合、休業補償をすることを義務づけられています。
労働災害保険ではこういった休業補償をするための制度です。

労働災害保険は正社員だけでなく、パートやアルバイトなど全ての労働者が対象となります。
労働災害保険は1人でも労働者を雇っている事業者であれば必ず加入しなければなりません。

【労働災害保険の加入義務】
・1人でも労働者を雇っている全ての事業者

健康保険

健康保険は労働者やその家族が病気や怪我あるいは出産をした場合に必要な医療給付や手当金を給付する制度です。
健康保険に加入している場合、本人が病院の窓口で負担する金額は3割となります。

健康保険は全ての法人事業所、あるいは常時従業員を5人以上雇用している個人事業所に加入義務があります。
パートやアルバイトであっても通常の労働者の4分の3以上あれば加入させなければなりません。

【健康保険の加入義務】
・すべての法人事業所
・常時従業員を5人以上雇用している個人事業所

厚生年金保険

厚生年金保険は労働者が高齢となって働けなくなったり、障害が残ってしまった場合に適用となる保険です。

厚生年金保険の加入義務条件は健康保険の加入義務条件と同様です。

【厚生年金保険の加入義務】
・すべての法人事業所
・常時従業員を5人以上雇用している個人事業所

雇用形態ごとのメリットとデメリット

雇用形態とは

雇用形態ごとにメリットもあればデメリットもあります。

ここでは、従業員から見たときの正社員および非正規社員のメリットデメリットを比較していきましょう。

正社員のメリット正社員のデメリット
①安定した仕事を見込める
②賞与や退職金制度がある
③昇格や昇給がある
④福利厚生が充実している
①責任が重い
②残業がある
③兼業が難しい
非正規社員のメリット非正規社員のデメリット
①働き方を調整しやすい
②兼業しやすい
③業務範囲が明確
①雇用や収入が不安定
②研修を受けづらい
③福利厚生が正社員と比べると少ない

正社員のメリット・デメリット

正社員は安定した環境で仕事ができるほか、福利厚生が充実しているメリットがあります。
一方、正社員は拘束時間が長く、責任が重いデメリットもあります。

非正規社員のメリット・デメリット

有期雇用労働者は兼業がしやすいなど働き方を調整しやすいほか、業務範囲が明確であるメリットがあります。
一方で、非正規社員のデメリットは雇用や収入が不安定になるなど、正社員と比べて待遇が落ちることにあります。

雇用形態の種類を理解して多様な働き方を実践!

雇用形態とは

労働者は雇用形態に応じて多様な働き方を選択できます。

事業主は労働者と雇用契約する場合、労働者の環境を保護するために様々な制約を受けることになります。
雇用形態を変更する場合は、事業主と労働者が合意していることを示すために契約書を締結するようにしましょう。

正社員は無期限の雇用契約であり、従業員は安定した環境で仕事を続けられます。
事業主はパートタイム労働者などの有期雇用労働者から正社員へ登用することでキャリアアップ助成金などの支援を利用可能です。

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