給与計算を社労士にアウトソーシングするのがいいか?内製化するのがいいか?の境目

どっちが得なのか?悩みますよね

給与計算は「コア業務」ではないものの「待ったなしの必要不可欠な業務」のため、どんな体制・方法で処理するのがベストか?、どの会社も試行錯誤しておられます。

「コスト面」「その他メリット・デメリット」および「そもそも論」などから、自社にあったスタイルの見つけ方を探っていきます。

【会社規模別】給与計算実施体制のよくあるパターン

私どもはた楽では、数名規模から百名規模まで、さまざまな会社から給与計算についてのお問合せ・依頼を受けています。

そんな中で、「会社規模ごとのよくあるパターン・課題」が見えてきました。

①数名規模(5名程度)

この場合、たいてい次のどちらかです。

A.社長自ら、給与計算システムをダウンロードして計算

B.顧問税理士が、税務顧問の傍ら引き受けてくれる

つまり、これくらいの規模であれば、一人一人の計算に目が行き届くのと、

従業員とのコミュニケーションが密なので、給与計算に専門性が欠けていたり、多少の間違いがあっても大目に見てもらえる、という事情があったりもします。

コスト的に良心的な顧問税理士であれば安価(あるいは税務顧問料込)で対応してくれたり、また所得税・住民税など、給与にまつわる税務手続きもまとめてやり取りができるので、会社にとっての負担も少なくて済みます。

②10名~50名規模

従業員が10名を超えてくると、いろんなケースや従業員に出くわすことになり、ある程度の「専門性」を持って給与計算処理をしないと、従業員からの指摘や質問にも対応が難しくなってきます。

そこで、労務の専門家である「社労士」に依頼し、毎月の給与計算や関連する労務手続きを含めて依頼する会社が増えてきます。

一方で、別の選択肢として、「社内の担当者」を置いて給与計算事務を進める会社もあります。もちろん、この規模なら「専任の担当者」というよりも、「総務・経理・営業事務」を含めたバックヤード全般の担当者という意味合いが多いですね。

そうなると、やはり「専門性」という部分で、たまたま業務経験・専門知識を持った担当者がいればいいのですが、そうでない場合は「社労士」との業務分担で対処するのが現実的な方法となります。

(参考記事)給与計算を「社労士に依頼」「税理士に依頼」「自社対応」のどれが正解か?

③50名~100名規模

「50名」という線引きはあくまで目安ですが、給与計算&労務業務のボリュームがそれなりにある規模をイメージしています。

特にこの規模感の会社が、

給与計算を社労士などの「アウトソーシング先」に委託すべきか?「社内に専任スタッフ」を置いて内製化したほうがいいか?

に悩むことになります。

アウトソーシングと内製化の「メリット」比較

アウトソーシング【メリット】
内製化【メリット】
  • 社内に専任担当者を置くよりコストが安い
  • 専門知識/技能を持つ第三者に計算業務を任せられる
  • 社内の人的リソースを、他業務に振り分けることができる
  • 各種処理の変更や、スケジュールの融通が利きやすい
  • 社内にノウハウが蓄積される
  • 情報管理が一元化でき、帳票出力もしやすい

アウトソーシングと内製化の「デメリット」比較

アウトソーシング【デメリット】
内製化【デメリット】
  • 外部とのやり取りに手間がかかる
  • スケジュールが限定される(支払い直前の変更などが難しい)
  • データや帳票を社内で出力しにくい
  • 担当者の属人的業務になりやすい(ブラックボックス化しやすい/退職リスク)
  • 給与担当者による情報管理(情報漏洩防止)の心理的負担が増す
  • 専門家のアドバイス・検証が得られない

(給与計算アウトソーシングサービス例)

比較から見えてくること

以下の観点から、「アウトソーシング」と「内製化」の良しあしを考察します。

【コスト面】

アウトソーシングのコストは、何社かから見積をとっていただければ、より相場観が見えてきますが、例えば私ども「社会保険労務士法人はた楽」では、50名~100名規模なら月額6万円~11万円程度でアウトソーシングをお請けしています。

当社の場合、相場よりは若干低めにしていますが、仮にもう少し高い金額であったとしても、専任スタッフを1名置くとなると、一人25~40万円は固定人件費としてかかってきます。

もちろん、優秀な方であればそれくらいのコストは惜しくはありませんが、本来は会社のコア業務(企画・開発・営業等)に人的リソースを振り向けるのが、会社の収益力を高めるには必要なはずです。

給与計算は「会社のコア業務ではない業務」であることから考えると、やはりコスト面からみれば、アウトソーシングのほうがメリットがあります。

【退職リスク&ブラックボックス化】

内製化のデメリットの真っ先に上がるのがこれです。私どもへ依頼が来るきっかけとしても、「担当者の退職」は多いですね。

「アウトソーシングしてても、アウトソーシング先がやめたいと言ってきたら同じリスクでは?」という意見もあるでしょうが、さすがにその場合は移行期間を置くのがほとんどでしょう。一方で、従業員の退職は「いきなり」のこともよくありますので、リスクの程度としては大きく違いますし、私どものクライアントでもよく耳にする話です。

逆に、担当者が辞めずに長年やってくれた場合のリスクが「ブラックボックス化」です。給与計算については、汎用的な「クラウドシステム」が日進月歩に進み、旧来の業務方法の多くが陳腐化しており、効率化の妨げになっています。そして、その牙城となってしまうのが、長年勤めてくれた担当者であったりします。「その人にしか分からない給与計算ルール」を残してしまうと、しがらみや退職リスクを社内に残すことになり、非常にやっかいです。

【アウトソーシング先による情報の囲い込み】

「ブラックボックス」といえば、逆にアウトソーシングした場合でも発生する可能性があります。アウトソーシング先が情報を囲い込んだり、源泉徴収票などのちょっとした帳票を出すにも費用を請求されたりするとさすがに融通が利きませんし、いざアウトソーシング先を変更したり、社内に戻そうとした際に抵抗されるようでは、それこそリスクです。

特に、社労士側が社労士にしか使えない専門給与ソフトやインストール型の給与ソフトを使っている場合は、会社側からデータを回収・共有・閲覧するのにハードルがあります。旧来の社労士事務所では、こういった情報格差によって費用をとるスタイルの先も残っています。

ただ最近は、「クラウド型給与システム」を使って、情報の共有やデータの引き渡しに柔軟に対応する社労士事務所も増えてきています。そういったスタンスも、アウトソーシング先を選定する際にはしっかりと見極めが必要です。

【やり取りやスケジュールの融通】

アウトソーシングのデメリットとして、情報の受け渡しなどのやり取りに時間がかかったり、変更点があった時の融通など、どうしてもタイムラグや手間が発生してしまいます。

社内であれば、社長が給与担当者を呼んで、「この人の給与こうしておいて」などと、指示がタイムリーに出せて楽、というのは、経営者目線ではあるかもしれません。

あとは、情報やデータの共有などでやり取りの頻度や手間を減らしたり、チャットツールなどの活用でタイムラグを極力減らすなど、企業努力によりカバーしようとするアウトソーシング受託先ももちろんあります。

経営的に見れば「アウトソーシングが正解」

以上、いろんな観点から見てきましたが、経営的に見れば「アウトソーシング」が正解といえます。

①固定費の変動費化

どの会社も、利益を出せる会社(収益力の高い会社)を目指されていると思います(目指していない会社がいればお目にかかりたいですが)。

ちょっと財務的な話になりますが、そのためには「損益分岐点」を引き下げることが必要です。損益分岐点の細かい説明はここでは省きますが、具体的には「固定費を変動費化」することで、黒字を出すために必要な売上高のラインを下げる、ことを目指します。

例えば、「給与担当者の人件費」は固定費です。一方で、「アウトソーシング費用」は変動費に近いと言えます。アウトソーシング先にもよりますが、人数に比例した料金体系であれば、業績や企業規模に応じてその費用が変動します。

②コア業務へのリソース配分

上記①については、「給与担当者の固定費で、外部支出となるアウトソーシング費用を吸収してしまえばコストダウンになる」という反論があろうかと思います。

しかし、そもそも「給与計算業務」は、企業にとってのコア業務(業績を伸長させる業務)ではありません。わざわざ直接雇用として雇い入れる従業員は、できる限りコア業務に振り分け、生産性を高めていく努力をどの会社もすべきかと思います。

アウトソーシング先を選ぶ際の必須ポイント

以上より、給与計算のアウトソーシングは、多くの会社にとって課題になっています。

そこで重要になるのが、「アウトソーシング先の選び方」です。重要なポイントをまとめましたので、どうぞ参照ください。

①「クラウド対応」は必須

上記の「情報囲い込みリスク」を排除するためにも、今後は「クラウド型給与計算システム」に対応できる社労士法人に委託するのが必須条件となります。具体的には、マネーフォワード給与、人事労務freee、などを活用します。

②情報共有や引継ぎ対応が可能か

アウトソーシング先に委託するとしても、未来永劫その先に任せられるかは分かりませんので、将来的にはいろんな対応が取れるようにしておく必要があります。

・日頃のデータ共有の方法

・必要帳票を出力する際の方法

・アウトソーシングを終了することになった場合の移行対応

について、あらかじめ確認しておくことをお勧めします。

③助成金の対応力があるか

給与計算とは直接関係がなさそうにも見えますが、実は給与計算と「企業が受給できる助成金」とは密接な連動性があります。

例えば、「キャリアアップ助成金」は、対象者の昇給額や昇給時期に連動して申請を行いますし、「働き方改革推進助成金」で、クラウド給与システムの導入費用の助成を受けることも可能です。

最後に、私ども社会保険労務士法人はた楽では、「給与計算のアウトソーシング」「社内でのクラウド労務システムの導入」の両面で、全国どの都道府県でもサポートを提供しています。ぜひ、以下のページも参照ください。

給与計算アウトソーシングをご検討の場合

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クラウドシステム導入による内製化をご検討の場合

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