産前産後休業取得者申出書は産休期間中に社会保険料の免除を受けるための書類です。
この記事では産前産後休業取得者申出書の提出方法や書き方のサンプルを紹介します。
社会保険料控除が免除される期間の計算方法は書き方を迷ってしまうことがあるので、正しい期間を押さえておきましょう。
出産は予定出産日と実際の出産日が変わることがありますが、予定が変更になった場合は別途手続きが必要です。
産前産後休業取得者申出書の正しい書き方を理解してスムーズな事務手続きを進めましょう。
<この記事で分かること> ・産前産後休業取得者申出書とはどんな制度? ・産前産後休業取得者申出書の書類を準備する方法 ・産前産後休業取得者申出書を提出する際の注意点
産前産後休業取得者申出書とはどんな制度?
「産前産後休業取得者申出書」は被保険者から産休(産前産後休業)の申し出があった場合に、事業主が提出する書類です。
被保険者は産休期間中の社会保険料が免除され、経済的な負担を減らせます。
【産前産後休業を取得し、保険料の免除を受けようとするとき】
出典:産前産後休業を取得し、保険料の免除を受けようとするとき|日本年金機構
ーこの申し出は、被保険者から産前産後休業取得の申し出があった場合に事業主が行うものです。この申し出により、産前産後休業開始月から終了予定日の翌日の月の前月までの期間の保険料が免除されます。
社会保険料が免除される期間はいつからいつまで?
産前産後休業取得者申請書を提出することで被保険者が産休期間中に社会保険料の免除を受けられます。
産前産後休業取得者申出書の手続きをする際に重要なのが社会保険料の免除期間がいつからいつまでなのか、ということです。
「産休期間中」と「社会保険料の免除期間」の取り扱いに注意しましょう。
また、社会保険料の免除を受けられるのは期限までに申し出をした場合に限られます。
産休の開始月分から産休の終了月分まで
社会保険料が免除されるのは産休(産前産後休業)期間中に属する月に相当する期間で、「産休の開始月」から「産休の終了月」で計算します。
産休期間は「出産予定日の42日前(6週間前)から出産後56日(8週間後)まで」です。
産前産後休業とは、出産の日(出産の日が出産の予定日後であるときは、出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産の日後56日目までの間で、妊娠または出産に関する事由を理由として労務に服さなかった期間をいいます。
出典:日本年金機構
出産とは、妊娠85日(4カ月)以上の分娩をいい、早産、死産、流産、人工妊娠中絶を含みます。
産休期間と社会保険料が免除になる期間
産休期間と社会保険料が免除になる期間は以下の通りです。
産前前後休業(産休)期間:出産予定日の42日前(6週間前)から出産後56日(8週間後)まで 社会保険料が免除になる期間:産休が属する期間(日割りはされない)
例えば、出産予定日が7月10日であった場合、産休期間は5月29日から8月28日までとなります。
この場合、社会保険料の免除期間は5月から8月までの4ヶ月間です。
社会保険料の免除は日割りされず、1ヵ月分が控除となります。
給与の締め日によって社会保険料の免除期間は変わる?
社会保険料の免除期間は産休期間に属する月のため、給与の締め日が末日であっても末日でなくても社会保険料の免除期間は変わりません。
事業主でも免除の対象になる?
被保険者が事業主であった場合でも社会保険料の免除を受けられます。
事業主は産休期間中に申し出ることによって社会保険料が免除されます。
産前産後休業取得者申出書の提出方法
産前産後休業取得者申出書は郵送のほか電子申請が可能です。
ここでは、申出書の提出先や提出方法を確認しましょう。
提出先
産前産後休業取得者申出書の提出先は事業所の所在地を管轄する年金事務所です。
最寄の年金事務所は以下のリンク先から検索できます。
参考リンク:全国の相談・手続き窓口|日本年金機構
届出様式のサンプル
産前産後休業取得者申出書は届出様式のサンプルを参考にしながら記入しましょう。
日本年金機構には書類のフォーマットや記入例のサンプルとして記入例が掲載されています。
参考リンク:産前産後休業を取得し、保険料の免除を受けようとするとき|日本年金機構
提出方法
提出方法は郵送のほか電子申請や窓口持参による申請が可能です。
電子申請は「e-Gov」という政府のポータルサイトから申請できます。
e-Govではこれまで紙で行ってきた申請手続きをインターネット経由で申し込みできる制度です。
参考リンク:https://www.e-gov.go.jp/
【e-Gov(電子申請)の申請に必要な手続き】 1.e-Govアカウント登録 2.ブラウザの設定 3.アプリケーションのインストール
産前産後休業取得者申出書の提出期限
産前産後休業取得者申出書は産前産後休業中または産前産後休業終了後の終了日から起算して1カ月以内の期間中に行わなければなりません。
産休期間中における給与が有給、無給であるかは問いません。
産前産後休業取得者申出書提出の流れ
『産前産後休業取得者申出書』は事業者と被保険者が協力して書類を記入し、事業者が年金事務所へ提出します。
事業者は従業員が産休取得の申請を受けたら速やかに『産前産後休業取得者申出書』を準備し、年金事務所へ提出する準備を進めなければなりません。
早産や死産の場合であっても申請書の提出は必要です。
産前産後休業取得者申出書の書き方
産前産後休業取得者申出書には以下の情報を記入していきます。
ここでは、実際のサンプルを見ながら書類の記入方法を確認しましょう。
- 事業所整理記号
- 事業主の押印
- 被保険者整理記号
- 個人番号又は基礎年金番号
- 被保険者氏名
- 被保険者生年月日
- 出産予定年月日
- 出産種別
- 産前産後休業開始年月日
- 産前産後休業終了予定年月日
- 出産年月日
- (変更)出産予定日が変更になった場合
- (変更)産前産後休業を予定より早く終了した場合
事業所整理記号
事業所整理記号は年金事務所において事業所を区別するための記号です。
新規適用時または名称・所在地が変更になった時に付されます。
事業所整理記号は以下の図を参考にしながら、記号を記入してください。
被保険者整理記号
被保険者整理記号は資格取得時に付された記号で、健康保険証に記載されています。
個人番号又は基礎年金番号
個人番号(マイナンバー)は各市区町村から住民に指定される12桁の番号です。
基礎年金番号は年金加入記録を示すための番号です。
基礎年金番号は「年金手帳」「年金証書」「国民年金保険料納付書」のほか日本年金機構から交付される書類に記載があります。
被保険者氏名
被保険者氏名は住民票に登録された氏名を正確に記入します。
フリガナはカタカナで記入してください。
被保険者生年月日
被保険者生年月日は住民票に登録された被保険者の生年月日を記載します。
出産予定年月日
出産予定年月日は出産を予定している年月日を記入します。
出産後に記入する場合は出産日を記入してください。
なお、出産前に提出する場合は出産予定年月日が空欄であっても構いません。
空欄で提出する場合は再度書類を提出する必要があります。
出産種別
出産種別は「単胎」か「多胎」を選択します。
- 0.単胎:出生児が1人の場合
- 1.多胎:出生児が2人以上の場合
産前産後休業開始年月日
産前産後休業開始年月日は単胎か多胎の場合で記入する年月日が異なります。
- 単胎の場合:「出産予定年月日」の42日前を記入
- 多胎の場合:「出産予定年月日」の84日前を記入
産前産後休業終了予定年月日
産前産後休業終了予定年月日は「出産予定年月日」の56日以内の日付を記入してください。
(変更)出産予定日が変更になった場合
- 変更後の出産(予定)年月日
- 変更後の出産種別:変更の有無に関わらず記入する
- 産前産後休業開始年月日:変更後の「出産予定年月日」の42日前を記入
- 産前産後休業終了予定年月日:変更後の「「出産予定年月日」の84日前を記入
出産予定日が実際の出産日から変更になった場合、実際の出産日を記入します。
出産予定日を変更する場合、予定変更後の出産日を記入します。
出産日が変更する場合、「産前産後休業開始年月日」と「産前産後休業終了予定年月日」も変更になるため記載しなければなりません。
(変更)産前産後休業を予定より早く終了した場合
産前産後休業をを予定より早く終了した場合、実際に産前産後休業を終了した日付を記入してください。
産前産後休業取得者申出書の注意点
出産日が予定日と変更することは珍しくありませんが、予定出産日と実際の出産日が変わった場合は注意が必要です。
予定出産日と実際の出産日が変わった場合は届け出が必要
出産前に産前産後休業取得者申出書を提出して後から実際の出産日が変わった場合、変更した旨を届け出る必要があります。
産休期間は出産日を起算して期間を計算するため、出産日が変わった場合は産休期間を再計算します。
既に社会保険料の免除を受けた場合、遡って社会保険料の期間が訂正される場合があるため注意しましょう。
出産日が変更になった場合は再度 『産前産後休業取得者変更届』 に変更後の情報を記入して提出する必要があります。
期限内に届出を提出しなかった場合
産前産後休業取得者申出書の提出期限は産休終了後の1ヵ月以内とされています。
被保険者から育児休業等の申し出があったにも関わらず、事業者が期限内に書類を提出できなかった場合は理由書および被保険者が休業していることを証明できる書類が必要です。
被保険者が休業していることを証明するには出勤簿や賃金台帳などが利用できます。
産休期間中の社会保険料免除
『産前産後休業取得者申出書』は被保険者が産休を取得する場合に事業者が年金事務所へ提出しなければならない書類です。
被保険者の社会保険料が免除されるのは「産休の開始月」から「産休の終了月」までの期間です。
事業者は提出期限までに書類の提出準備を進め、書類の提出をしなければなりません。
出産予定日などが変更になった場合は変更後の情報を伝えるため、再度書類の準備が必要です。
『産前産後休業取得者申出書』は事業者が提出までの手続きを正しく周知して、被保険者が産休に備えられるよう適切な準備を進めましょう。
<まとめ> ・『産前産後休業取得者申出書』は産休取得者の社会保険料を免除するための書類 ・社会保険料が免除される期間は「産休の開始月分から産休の終了月分まで 」 ・書類の提出先は事業所の所在地を管轄する年金事務所 ・書類の提出方法は「郵送」「電子申請」「窓口持参」から選べる ・書類の提出期限は「産前産後休業中または産前産後休業終了後の終了日から起算して1カ月以内の期間中」
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