従業員が退職する場合、会社側は必要な手続きを漏れなく行う必要があります。
従業員から回収するべき書類や従業員に提出する書類を確認しておきましょう。
この記事では従業員が退職する際に必要な手続きのチェックリストを一覧で紹介します。
手続きが漏れてしまうと会社にとっても従業員にとってもトラブルの原因となってしまうため、必要な手続きを漏れなく確認するようにしましょう。
また、計算が複雑な社会保険料や税金の計算方法についても詳しく解説します。
正しい退職手続きでトラブルを避けましょう。
<この記事で分かること> ・従業員退職の手続きをチェックリストで確認したい ・従業員が退職した際に回収・提出する書類とは? ・従業員が退職する際の注意点とは? ・従業員が退職した後の社会保険料や税金の取り扱いを知りたい
目次
従業員が退職した場合に必要な手続き
従業員が退職する際に必要な手続きとして以下の事項が挙げられます。
- 退職届の受理
- 社会保険の資格喪失
- 雇用保険の資格喪失
- 退職時誓約書の締結
- 退職金の支給手続き
- 所得税や住民税に関する手続き
手続きを怠ることがないよう、チェックリストを設けておくと良いでしょう。
退職届の受理
企業は従業員が退職する意思表示を確認するために退職届の受理をします。
なお、民法によると労働者は誰にも退職の自由が認められており、期間に定めのない契約の場合退職の意思表示から2週間が経つと雇用関係を終了できると記載されています。
「退職願」と「退職届」の違いは、退職届は一方的な通知で効力が認められることです。
退職願では退職に使用者(企業)の承諾が必要と解釈する可能性があります。
【「退職願」と「退職届」の違い】 「退職願」:退職に使用者の承諾が必要と解釈される可能性がある。 「退職届」:使用者の承諾は不要となり、提出から2週間が経過すると雇用関係が終了する。
(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
引用:民法第627条
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
2 期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。
社会保険の喪失
従業員は退職すると同時に社会保険および雇用保険の資格を喪失します。
そのため、企業側は速やかに資格喪失の手続きをしなければなりません。
提出書類 | 「被保険者資格喪失届」 |
提出期限 | 事実発生から5日以内 |
提出先 | 事務センターまたは管轄の年金事務所 |
提出物 | 健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届 健康保険証(従業員及び扶養親族分) |
提出方法 | 電子申請、郵送、窓口持参 |
雇用保険の資格喪失
同様に、雇用保険の資格喪失届として、必要な書類を事業所およびハローワークへ提出します。
必要書類には「 雇用保険被保険者資格喪失届」および「離職証明書」があります。
提出書類 | 雇用保険被保険者離職票(-1、2) |
提出先 | 事業所を管轄するハローワーク |
提出期限 | 退職した日の翌々日から10日以内 |
退職時誓約書(秘密保持契約書)の締結
退職時誓約書または秘密保持契約書を締結することで顧客情報や企業の機密情報に関する情報漏洩のリスクを軽減できます。
退職時誓約書には企業機密を漏洩した場合に損害が生じた際の賠償責任等を記載します。
退職金の支給手続き
退職金制度がある会社の場合は、退職金の支給手続きが必要です。
従業員から「退職所得申告書」の提出を求め、申告書の内容に基づいて退職金の支給を行います。
住民税に関する手続き
住民税には「特別徴収」と「普通徴収」という2つの種類があります。
特別徴収は従業員へ支払う給与から住民税に相当する金額を徴収し、企業が従業員の代わりに住民税を支払う方法です。
普通徴収は従業員自らが負担する住民税を自分で納める方法です。
特別徴収で企業が住民税を収めることが一般的ですが、退職にあたっては普通徴収に切り替えて従業員が住民税を自分で納める場合があります。
一連の退職手続きについては、私ども社会保険労務士法人はた楽にてアウトソーシングを受託しています。入退社手続き・毎月の給与計算・関連する労務手続き一式をまとめて任せていただくことが可能です。
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退職した従業員に提出・回収する書類
従業員が退職する際には、必要書類を回収する、あるいは書類を渡す必要があります。
ここでは、従業員の退職に際して準備しなければならない書類についてまとめましたのでチェックしていきましょう。
従業員へ渡す書類
従業員へ渡す書類として、以下の書類があります。
- 源泉徴収票
- 雇用保険被保険者証
- 離職票
- 退職証明書
- 健康保険資格喪失証明書
- 年金手帳(※会社が預かっていた場合)
これらは従業員が退職した後に必要な書類であり、会社は提出が義務付けられています。
源泉徴収票
源泉徴収票は従業員の1年間の所得を計算する書類です。
退職した従業員が確定申告あるいは転職先の企業で年末調整をする場合に必要となります。
企業は退職する従業員へ退職日から1ヵ月以内に源泉徴収票を提出することが義務付けられています。
雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者証は従業員が雇用保険に加入することを証明する書類です。
従業員1人につき1枚発行されます。
企業は従業員が退職するにあたって「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」をハローワークに提出する必要がありますが、これらの書類には従業員の雇用保険被保険者番号を記載する必要があります。
退職した従業員はハローワークで教育訓練を受ける場合や転職先へ提出する際に、雇用保険被保険者証の提出が必要です。
離職票
離職票(雇用保険被保険者離職票)は従業員が雇用保険の失業給付を受ける際に必要な書類です。
退職証明書
退職証明書は公的な書類ではありませんが、次の就職先に提出するなど従業員が希望した場合に発行しなければならない書類です。
就業期間や職務内容、退職の事由等を記載します。
健康保険資格喪失証明書
健康保険資格喪失証明書は、公的に書式が決められているわけではありませんが、退職後に国民健康保険へ加入する際に求められる場合がある書類です。
従業員から回収する書類
従業員が退職する際に回収するべき書類として、以下の書類を回収する必要があります。
- 健康保険証
- 退職所得申告書
- 業務に関するデータ・マニュアル等
- 貸与品
健康保険証
従業員が退職した健康保険証の回収が必要です。
本人分だけではなく、被扶養者分の健康保険証も回収します。
退職所得申告書
「退職所得の受給に関する申告書(退職所得申告書)」は退職金を受け取る従業員が支払先(退職する企業)へ提出する書類です。
退職所得申告書によって退職所得に関する税額を正しく計算します。
業務に関するデータ・マニュアル等
業務で取り扱うデータやマニュアルを従業員が有している場合は回収します。
業務に関する機密情報や顧客に関連する情報を従業員が保持したままだと、退職後に情報漏洩などのトラブルに繋がる恐れがあるためです。
必要に応じて退職時誓約書の記載を求めると退職後の情報漏洩に関するトラブルを防げるでしょう。
貸与品
社員証やパソコンなどの備品など、会社が従業員に貸与している物品は退職時に回収する必要があります。
社会保険労務士法人はた楽では、「入退社手続」「毎月の給与計算」「就業規則などの規程改定」「助成金申請」を、確実に連動させる以下のサポートメニューを提供しています。
最新のクラウドシステムを活用し、効率的にペーパーレスで、適正な労務管理を実現し、助成金申請にスムーズにつなげることが可能です。
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従業員の退職でトラブルにならないための注意点
従業員の個人情報に関する取扱い
企業は退職する従業員の個人情報を正しく取り扱わなければなりません。
労働基準法第109条によると、企業は退職する従業員における「労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類」を5年間保存する必要があると記載されています。
特に、マイナンバーカードが記載された書類には重要な個人情報が含まれています。
保存期間が完了している従業員の個人情報はできるだけ速やかに破棄しなければなりません。
退職者が財形貯蓄をしている場合
財形貯蓄は従業員の財産形成を支援する福利厚生の制度です。
給与や賞与から天引きで金融商品を積み立てます。
財形貯蓄には「一般財形貯蓄」「財形住宅貯蓄」「財形年金貯蓄」の3種類があり、財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄には最大550万円までの元本から生じる利子が非課税となります。
退職する従業員が財形貯蓄をしている場合、転職先に財形貯蓄の移管が可能です。
退職者が持ち株制度を利用している場合
従業員持ち株制度は会社の従業員が勤務先の株式を買い付ける制度です。
持ち株制度を利用している従業員が退職する場合は持ち株制度を退会します。
証券会社などを通じて保有している持ち株の売却手続きを行います。
退職者が社内融資を利用している場合
社内融資制度とは住宅購入など従業員の資産形成を支援する制度です。
退職する従業員が社内融資制度を利用している場合、残高の返済方法を協議します。
一般的には退職時に一括返済するケースが多いです。
外国人従業員が対応している場合
外国人従業員が退職した場合、「外国人雇用状況届出書」の提出が義務付けられています。
ハローワークでは「外国人雇用状況の届出」に基づいて事業主向けに助言や指導、離職した外国人への再就職支援を行っています。
従業員が退職した場合の税金・社会保険料の計算
社会保険料
厚生年金保険と健康保険などの社会保険料は退職日の翌日が資格喪失日です。
社会保険料は資格喪失日の前月分まで発生します。
3月31日に退職した4月1日が資格喪失日となるので、3月分までが社会保険料の対象です。
住民税
住民税は前年の所得が決まった翌年の6月から支払います。
退職した後でも前年に収入があれば住民税の支払義務が生じます。
通常、住民税は1ヵ月の給与から天引きするかたちで従業員から徴収します。
退職する際は残った住民税を一括徴収するのですが、徴収方法は退職した月によって以下の方法で徴収されることが一般的です。
退職時期 | |
---|---|
1月から4月に退職 | 残りの住民税(5月までの分)を一括して天引きして徴収する |
5月に退職 | 5月分の住民税を最後の給与または退職金から天引きして徴収する |
6月から12月に退職 | ・残額(翌年5月までの分)を一括徴収する または ・普通徴収へ切り替え、従業員本人が支払う または ・転職先で特別徴収を継続する |
「特別徴収」とは企業が給与から天引きして代わりに住民税を収めることです。
「普通徴収」とは従業員本人が直接住民税を収めることです。
1月から5月に退職した場合は住民税を給与から天引きして徴収されます。
6月から12月に退職した場合は「残額(翌年5月までの分)を一括徴収する」「普通徴収へ切り替え、従業員本人が支払う」「転職先で特別徴収を継続する」といった3種類の方法を選択します。
正しい退職手続きでトラブルを避けよう
従業員が退職する際は事務手続きが煩雑で、用意しなければならない書類も多いため戸惑ってしまうかもしれません。
以下のようなチェックリストを用意して、退職時に用意しなければならない書類を忘れずに手続きを行うと良いでしょう。
従業員へ提出する書類 | 従業員から回収する書類 |
---|---|
・源泉徴収票 ・雇用保険被保険者証 ・退職証明書 ・離職票 ・健康保険資格喪失証明書 ・年金手帳 | ・健康保険証 ・退職所得申告書 ・貸与品 ・業務に関するデータ・マニュアル等 |
手続きを怠ると退職した従業員とトラブルが生じる可能性があります。
適切な手続きを行って円満に退職の手続きを進めましょう。
一連の退職手続きについては、私ども社会保険労務士法人はた楽にてアウトソーシングを受託しています。入退社手続き・毎月の給与計算・関連する労務手続き一式をまとめて任せていただくことが可能です。
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