標準報酬月額に通勤手当は含まれるのかについて知りたいと悩んでいませんか?
この記事では「標準報酬月額に通勤手当は含まれるのか」について紹介していきます。
結論、標準報酬月額の対象になる報酬に通勤手当は含まれます。
他にも「標準報酬月額の計算の3つのポイント」や「標準報酬月額の注意点」についても解説します。
ぜひこの記事を参考に、標準報酬月額について理解を深めてみてください。
また「算定基礎届」について知りたい方は、こちらにて解説を行っておりますので、ぜひ確認してみてください。
目次
標準報酬月額に通勤手当に含まれる?
標準報酬月額に通勤手当は含まれます。
通勤手当は、1ヶ月から数ヶ月分を現金または定期券などによって支給されているケースが多く見られますが、基本的に報酬として扱われるので、標準報酬月額に含まれます。
しかし、通勤手当以外の3ヶ月を超える期間ごとに受ける賞与や臨時支給などは、標準報酬月額から除かれるので、あらかじめ注意が必要と言えるでしょう。
このように、通勤手当は、労務の対象として受け取るものとして取り扱われているので、標準報酬月額の対象になります。
標準報酬月額の計算する際のポイント
標準報酬月額の計算する際のポイントについて知っておくと、自分自身の標準報酬月額も把握しやすくなります。
具体的に標準報酬月額の計算する際のポイントについては、主に以下が挙げられます。
- 通勤手当を含める
- 割増賃金を含める
- パートタイマーの報酬月額
それぞれのポイントについて紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
通勤手当を含める
標準報酬月額の計算する際のポイントとして、所得税の計算では通勤手当は定められている金額よりは非課税になりますが、社会保険の報酬月額に含めるのが正解になります。
交通費でかかってしまった費用については、定期券の現物支給や実費精算に関わらずに、標準報酬月額に含まれます。
また、半年分の定期代を支払う場合には、1ヶ月分に分割して標準報酬月額に加えていきます。
割増賃金を含める
標準報酬月額には、割増賃金も含まれます。
1ヶ月のうちに、残業が何時間で休日出勤が何日くらい発生しそうなのか、あらかじめ予想をして、標準報酬月額に加算を行います。
予想を入れている状態なので、実績がズレてしまうのは問題ありませんが、割増賃金を標準報酬月額に含まれていないと、年金事務所から指摘を受けやすくなるので注意が必要です。
このように、標準報酬月額には、予想の残業時間を記入して、残業時間に応じて割増賃金も含めるようにしましょう。
パートタイマーの報酬月額
パートタイマーの報酬月額については、正社員の所定労働時間と労働日数が4分の3以上の勤務をしている従業員は、社会保険の加入が必要になります。
基本的に、パートタイマーの基本給は時間給で支払われているケースが多いので、労働賃金と労働時間の予想をして標準報酬月額に加算していきます。
例として、時給1,000円、一日の労働時間が6時間勤務、労働日数が18日の場合は、1,000円×6時間×18日=108,000円が標準報酬月額に加算します。
しかし、予想と実績がズレしまっている場合には、修正する必要があります。
標準報酬月額の決定・改定のタイミング
標準報酬月額には、予定と実績のズレが少なくなるように、標準報酬月額の決定と改定のタイミングは細かく決められています。
実際に、実際の報酬が異なってしまうと、報酬訂正を届け出る必要があるので、あらかじめ注意が必要です。
標準報酬月額の決定・改定のタイミングについては、以下が挙げられます。
- 資格取得時決定
- 定時決定
- 随時改定
- 産前産後休業終了時改定
- 育児休業等終了時改定
それぞれの項目について紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
資格取得時決定
資格取得時決定については、入社した際、新たに社会保険の被保険者資格を取得した際に行われます。
具体的には、被保険者を雇用した日から5日以内に事業主に提出する「被保険者資格取得届」によって標準報酬月額が決まります。
基本給や通勤手当などの合計から1ヶ月あたりの報酬の見込み額の決定を行います。
資格取得時決定によって決定された標準報酬月額は、更新されないかぎり適用されるので、資格取得した時期によって有効期限が異なります。
例として、6月1日から12月31日に資格取得した場合には、翌年の8月31日までの有効期限になります。
定時決定
定時決定は、標準報告月額と実際の報酬額との差を少なくする目的で、1年に1回標準報酬月額の見直しを行うことを指します。
毎年4月から6月に受けた報酬月額を使用して、新しい標準報酬月額が決定し、その年の9月から翌年8月まで適用されます。
授業主は7月10日までに管轄の年金事務所や各健康保険組合などに「算定基礎届」の提出が必要になります。
また、策定基礎届は、7月1日時点で雇用しているすべての被保険者が対象になるので、あらかじめ注意が必要です。
随時改定
項目 | 随時改定 |
---|---|
標準報酬月額の 算定基礎期間 | 固定賃金に変動があった月 以後の3カ月間 |
算定期間の 支払基礎日数 | 17日未満の月があるとき 改定は行われない |
改定に必要な 等級差 | 2等級以上 |
改定月 | 固定賃金に変動があった月から 起算して4カ月目 |
被保険者の申出の必要 | なし |
随時決定とは、雇用契約の変更や昇給、昇格などによって年間の報酬額に大きな変更が合った場合に、標準報酬月額の見直しを行う制度を指します。
変更がある場合には、月額変更届の提出をして申請を行います。
具体的に随時決定の対象になる条件については、以下が挙げられます。
- 変更前の標準報酬月額との際に2等級以上の差がある場合
- 固定賃金に変更があった場合
- 変動した月から3ヶ月簡に支払い基礎日数が17日以上の場合
上記3つの条件を満たした場合に、変更後の報酬を受けた月から起算して、4ヶ月目から標準報酬月額が改定されていきます。
産前産後休業終了時改定
項目 | 産前産後休業終了時改定 |
---|---|
標準報酬月額の 算定基礎期間 | 産前産後休業の終了日の 翌日が属する月以後の 3カ月間 |
算定期間の 支払基礎日数 | 1カ月で17日以上の月 があれば改定 |
改定に必要な 等級差 | 1等級以上 |
改定月 | 産前産後休業終了日の 翌日が属する月から 起算して4カ月目 |
被保険者の申出の必要 | あり |
産前産後の休業終了時改定については、従業員が仕事復帰した際に、休業前後の報酬に大きな変動がある場合、標準報酬月額の変更を行います。
変更実施時には、事業主が「健康保険・厚生年金保険産前産後等終了時報酬月額変更届」の提出をする必要があります。
しかし、産前産後休業終了時の翌日から継続して育児休業を開始したケースについては、対象にならないので注意が必要です。
改定された標準報酬月額は、産休休業終了日の4ヶ月目から適用され、次の定時改定が行われるまで適用されていきます。
育児休業等終了時改定
項目 | 育児休業等終了時改定 |
---|---|
標準報酬月額の 算定基礎期間 | 産前産後休業の終了日の 翌日が属する月以後の 3カ月間 |
算定期間の 支払基礎日数 | 1カ月で17日以上の月 があれば改定 |
改定に必要な 等級差 | 1等級以上 |
改定月 | 産前産後休業終了日の 翌日が属する月から 起算して4カ月目 |
被保険者の申出の必要 | あり |
育児休業等終了時改定については、3歳未満の子供を養育している被保険者が仕事復帰をする際、勤務時間や賃金などが変更されて休業前の報酬に変動がある場合に、標準報酬月額の改定を行います。
事業主は、被保険者から申出がある場合には、「健康保険・厚生年金保険育児休業等終了時報酬月額変更届」の提出が必要になります。
産前産後休業終了時改定と同様に、改定された標準報酬月額は、育児休業終了時の翌日から4ヶ月目からの適用になります。
通勤手当の所得税と社会保険料等における取扱いの違い
通勤手当の所得税と社会保険料等における取扱いについては、課税対象になるのか、ならないのかによって大きく違います。
社会保険料の場合には、給料を得るためには必要な通勤手当になるので課税対象になりますが、通勤手当の所得税の場合は手元に戻らないので課税対象にはなりません。
取り扱いの違いによって、給料額が増えたり減ってしまう問題が起きてしまうのは、通勤手当が一定以上違ってしまうと起こる現象と言えるでしょう。
通勤手当が増え続けてしまうと、社会保険等の控除額も増え続けてしまうので、給与額の変更をしなければ手取りが減ってしまうので、あらかじめ注意が必要です。
また、社会保険料等の支払いが多くなるということは、将来受給できる年金額が多くなったり、充実した手当を受けられるメリットが挙げられます。
標準報酬月額にもとづく社会保険料の計算方法
標準報酬月額にもとづく社会保険料の計算方法については、以下が挙げられます。
- 厚生年金の計算方法
- 健康保険料の計算方法
それぞれの計算方法について紹介していきますので、これから標準報酬月額にもとづく社会保険の計算を行う予定がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
厚生年金保険料の計算方法
厚生年金保険料を求める計算式は、以下のとおりです。
- 標準報酬月額×厚生年金保険料率×1/2=厚生年金保険料(従業員負担額)
厚生年金保険料の料率については、一律で18.3%になりますが、厚生年金保険料を支払っている従業員は、国民年金保険料を支払う必要がありません。
また、厚生年金保険料は、健康保険料と同様に従業員側と会社側が折半で負担を行います。
健康保険料の計算方法
健康保険料の計算方法については、以下のとおりです。
- 標準報酬月額×健康保険料率×1/2=健康保険料(従業員負担額)
健康保険料は、厚生年金保険料と同様に、会社側と従業員側で折半します。
保険料率は、加入している健康保険組合等によっても異なるので、事前に各都道府県ごとの保険料額表の確認を行いましょう。
標準報酬月額の注意点
標準報酬月額の注意点について把握しておくと、計算ミスを減らせるのはもちろん、金銭トラブルを未然に防ぐことにもつながります。
具体的に標準報酬月額の注意点については、以下が挙げられます。
- 険料額表は更新される
- 労働保険料は標準報酬月額を基準にしない
- 被保険者月額変更届の提出
それぞれの注意点について紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
保険料額表は更新される
厚生年金保険や健康保険の保険料額表は、定期的に更新されているので、毎年必ず確認をするようにするといいでしょう。
料率の見直しがされる時期は基本的に毎年3月になりますが、厚生年金保険料率は9月に行われるケースもあります。
厚生年金保険料率は、年金制度改正によって2004年から引き上げられており、2017年9月以降は18.3%になっております。
このように、標準報酬月額の計算を行う際には、最新の保険料額表の確認をするようにしましょう。
労働保険料は標準報酬月額を基準にしない
労災保険や雇用保険などの労働保険料は、保険料の計算を行う際、標準報酬月額を基準としないので、あらかじめ注意が必要です。
実際に、労働保険料を計算する際には、対象従業員の賃金総額に保険料率をかけて求めますが、平均額ではなく実際の賃金総額が基準になります。
また、労働保険料は、年度はじめに概算保険料を申告と納付を行い、年度末に確定した保険料との差額を生産する仕組みです。
被保険者月額変更届の提出
随時改定に該当している被保険者がいる場合には、事業者側は被保険者月額変更届を健康保険組合や年金事務所に提出をする必要があります。
厚生年金保険や健康保険関連の届出書は、窓口提出の他にも、電子申請や郵送が可能です。
また、2020年4月から一部の社会保険の手続きは、電子申請が義務化されているので、事前に確認をしておきましょう。
標準報酬月額を理解して正しく計算しよう!
今回は、標準報酬月額に通勤手当は含まれるのかどうかについて知りたい方に向けて、標準報酬月額の計算する際のポイントや標準報酬月額の注意点を紹介しました。
標準報酬月額の計算する際のポイントについては、主に以下が挙げられます。
- 通勤手当を含める
- 割増賃金を含める
- パートタイマーの報酬月額
また、標準報酬月額の注意点について把握しておくと、計算ミスを減らせるのはもちろん、金銭トラブルを未然に防ぐことにもつながります。
今回の記事を参考に、標準報酬月額を理解して正しく計算をしましょう。
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