積極的な子育てを支援するため、男性向けに育休の取得を促す企業は増えています。
この記事では事業主が育休を積極的に導入することを支援する「両立支援等助成金」の制度について解説します。
給付条件や申請方法および企業が育休を導入するメリットについて紹介するので、育休を推進したい事業主の方はぜひ参考にしてください。
育休を取得することで助成金がもらえるだけでなく、従業員のモチベーションアップや企業イメージの向上を期待できます。
助成金を有効活用して育児休業を推進しましょう!
<この記事で分かること> ・両立支援等助成金とはどんな制度? ・男性社員の育休を採用するメリットとは? ・男性社員の育休を採用する注意点とは? ・両立支援等助成金の申請方法とは?
両立支援等助成金とは?
両立支援等助成金とは仕事と家庭を両立する職場環境作りを支援するための制度です。
両立支援等助成金には以下の種類があります。
- 出生時両立支援コース
- 介護離職防止支援コース
- 育児休業等支援コース
それぞれのコースで定められて要件を満たすことで事業主は助成金を受け取れます。
助成金は使途が限定されず、返還の必要がないお金なので従業員の育休取得を支援しながら助成金を受け取り、経営に役立てることが可能です。
出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」は男性労働者が育児休業を取得しやすいように雇用環境の整備措置を行った事業者に支給する制度です。
出生時両立支援コースには第1種と第2種があり、第1種では育休を取得するための環境づくりをした企業に助成金が支給されます。
第2種では第1種助成金を受給した事業者に対して、実際の育休取得率を調査します。
【出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)】 【第1種】男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境の整備措置を複数実施するとともに、労使で合意された代替する労働者の残業抑制のための業務見直しなどが含まれた規定に基づく業務体制整備を行い、産後8週間以内に開始する連続5日以上の育児休業を取得させた中小企業事業主に支給する。 ※代替要員加算:男性労働者の育児休業期間中に代替要員を新規雇用(派遣を含む)した場合 【第2種】第1種助成金を受給した事業主が男性労働者の育児休業取得率を3年以内に30%以上上昇させた場合 出典:令和5年度 両立支援等助成金|厚生労働省
第1種 | 育児休業取得:20万円 代替要員加算:20万円(3人以上45万円) 育児休業等に関する情報公表加算:2万円 (それぞれ1回限り) |
第2種 | 育児休業取得率の30%以上上昇 1年以内達成:60万円 2年以内達成:40万円 3年以内達成:20万円 (それぞれ1回限り) |
介護離職防止支援コース
「介護離職防止支援コース」は介護離職を防止するため、労働者が円滑に介護休業を取得することを支援する制度です。
仕事と介護を両立するために、企業は労働者が介護を行っているのかどうかを調査します。
事業主は従業員が介護休業を取得しやすいよう、従業員へ呼びかけます。
【介護離職防止支援コース】 「介護支援プラン」を策定し、プランに基づき労働者の円滑な介護休業の取得・復帰に取り組んだ中小企業事業主、または介護のための柔軟な就労形態の制度を導入し、利用者が生じた中小企業事業主に支給する。 ①介護休業:対象労働者が介護休業を合計5日以上取得し、復帰した場合 ②介護両立支援制度:介護のための柔軟な就労形態の制度()を導入し、合計20日以上利用した場合() 介護のための在宅勤務、法を上回る介護休暇、介護フレックスタイム制、介護サービス費用補助等) ③新型コロナウイルス感染症対応特例:新型コロナウイルス感染症への対応として家族を介護するために特別休暇を取得した場合 出典:令和5年度 両立支援等助成金|厚生労働省
①介護休業 | 休業取得時 30万円 職場復帰時 30万円 ※1年度各5人まで |
ⅰ)(①への加算) | 業務代替支援加算 新規雇用20万円、 手当支給等5万円 |
②介護両立支援制度 | 30万円 ※1年度5人まで |
ⅱ)(①、②への加算) | 個別周知・環境整備加算 15万円 |
③新型コロナウイルス感染症対応特例 | (労働者1人あたり) ※1年度5人まで 5人以上10日未満 20万円 10人以上 35万円 |
育児休業等支援コース
「育児休業等支援コース」は従業員が育児休業等を円滑に取得できるようにするための制度です。
事業主は育児復帰支援プランを作成し、代替要員を確保します。
育児復帰支援プランとは雇用する雇用被保険者の育児休業の取得および職場復帰を円滑にするための措置を定めたプランです。
【育児休業等支援コース】 育児休業の円滑な取得・職場復帰のため次の取組を行った事業主(①~④は中小企業事業主)に支給する。 ①育休取得時 ②職場復帰時:「育休復帰支援プラン」を策定及び導入し、プランに沿って対象労働者の円滑な育児休業(3か月以上)の取得・復帰に取り組んだ場合 ③業務代替支援:3か月以上の育児休業終了後、育児休業取得者が原職等に復帰する旨の取扱いを就業規則等に規定し、休業取得者の代替要員の新規雇用(派遣を含む)又は代替する労働者への手当支給等を行い、かつ、休業取得者を原職等に復帰させた場合 ④職場復帰後支援:法を上回る子の看護休暇制度(A)や保育サービス費用補助制度(B)を導入し、労働者が職場復帰後、6ヶ月以内に一定以上利用させた場合 ⑤新型コロナウイルス感染症対応特例:小学校等の臨時休業等により子どもの世話をする労働者のために特別休暇制度及び両立支援制度を導入し、特別休暇の利用者が出た場合 出典:令和5年度 両立支援等助成金|厚生労働省
①育休取得時 | 30万円 (無期雇用者・有期雇用者 各1回) |
②職場復帰時 | 30万円 (無期雇用者・有期雇用者 各1回) |
③業務代替支援 | ア 新規雇用(派遣を含む)※50万円 イ 手当支給等※10万円 ※有期雇用者加算10万円 ※ア、イあわせて、初回から 5年以内に1年度10人まで |
④職場復帰後支援 | 制度導入:30万円 制度利用: A 看護休暇制度 1,000円×時間 B 保育サービス費用 実支出額の2/3補助 ※制度導入は1回限り。 ※制度利用は初回から3年以内に5人まで |
⑤新型コロナウイルス | 感染症対応特例 1人あたり10万円 ※10人まで(上限100万円) |
両立支援等助成金の申請方法
両立支援等助成金の申請方法は以下のステップで進めていきましょう。
- 育児休業を整える職場環境作りの周知
- 就業規則等の準備
- 一般事業主行動計画の作成
- 助成金申請書の提出
育児休業を整える職場環境作りの周知
両立支援等助成金を活用するためには、育児休業を取得しやすいような職場環境作りをする必要があります。
労働者が必要なときに育児休業を取得できるよう、社内で研修を実施する等、育児休業が必要であることを理解してもらいましょう。
就業規則等の準備
育児休業を取得するためには就業規則等を準備する必要があります。
育児休業の取得方法や期間について定めましょう。
一般事業主行動計画の作成
「一般事業主行動計画」とは事業主が労働者の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境を整備についての対策や実施期間を定める書類です。
従業員が101人以上の企業には行動計画の策定および届け出・公表。周知が義務付けられています。
助成金申請書の提出
育児休業の取得について、特定の条件を満たしている場合は両立支援等助成金を受け取れます。
助成金は用途が制限されないお金であるため、経営の改善や財務状況の改善あるいは育児休業を整備するための費用に充てられます。
申請書の提出先および詳細な書類の準備方法は各都道府県の労働局でご確認ください。
参考:都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧|厚生労働省
会社が男性社員の育休を採用するメリット
事業主(会社)にとって男性社員の育休を採用するメリットとして以下が挙げられます。
- 助成金がもらえる
- 従業員のモチベーションアップ
- 業務標準化の実現(属人化の解消)
- 企業のイメージアップ
メリット1.助成金がもらえる
企業は育休を導入することによって両立支援等助成金をはじめとする助成金を受け取れます。
これらの助成金は使途が限定されないお金であるため、助成金を設備投資に活用することで新たなビジネスチャンスの獲得や業務効率改善に繋げられます。
メリット2.従業員のモチベーションアップ
育休を取り入れることによって従業員のモチベーションアップに繋がります。
モチベーションが向上することで従業員から会社への愛着が高まり、離職率の低下を期待できます。
また、業務効率や生産性が高まり業績への貢献も実現できるでしょう。
メリット3.業務標準化の実現(属人化の解消)
育休を取得することで業務標準化および属人化の解消を実現できます。
育休を取得するためには代替人材の確保が必要ですが、引継ぎのために業務を標準化しなければなりません。
業務標準化によって業務が可視化され、業務の無駄が見直されるなど生産性が改善する可能性があります。
業務標準化によって属人化の解消も期待できます。
属人化とは特定の業務が特定の人に頼ってしまう状態であり、業務を標準化することで他の人へ引き継がざるを得なくなるため、属人化を解消できるのです。
メリット4.企業のイメージアップ
育休を積極的に取り入れることを推進すれば企業のイメージアップにも繋がります。
SDGs(持続可能開発目標)の観点等から社会全体で育休を取得するように働きかけることが評価されています。
SDGsには「ジェンダー平等を実現する」という項目がありますが、男性の育休取得を推進することでこれらの目標をクリアできるのです。
また、男性の育成取得率を挙げることをPRすることで人材採用の面でも有利に働くでしょう。
企業が男性社員の育休を採用する注意点
男性社員の育休は取りづらいという企業は多く、男性社員の育休には抵抗があると考える方は多くなっています。
特に、育休取得によって欠員が出ることを穴埋めするには大きな抵抗があるようです。
企業が男性社員の育休を取得する注意点として、以下のポイントをチェックしましょう。
- 代替人員を確保する
- 社内で不満が出ないようにする
- 育休を取りづらい雰囲気が出ないようにする
注意点1.代替人員を確保する
育休を推進する際は育休取得者の代替人員を確保しなければなりません。
代替人員の確保は人事などの管理部門が指導します。
育休の取得時期はなるべく繁忙時期を避けるなど、計画的に育休を取得することも重要です。
注意点2.社内同士で不満が出ないようにする
育休を取得することによって他の社員が業務を担当しなければならなくなります。
そのため、育休を取得することで社員同士で不満が起きがちです。
育休を取得する従業員とキャリアに関する面談を実施するなど、社員同士で理解を得やすいようにしましょう。
注意点3.育休を取りづらい雰囲気が出ないようにする
育休制度を導入する際は、育休を取りづらい雰囲気が出ないようにすることが重要です。
現場レベルだと育休を取得できる人と育休を取得できない人が出てしまうため、不公平感が生まれてしまいます。
企業が主導して育休取得を推進するようアナウンスすることで育休を取得しやすい雰囲気を作りましょう。
また、管理職に対して部下へ積極的に育休を推進させることも効果的です。
育休を取得する社員にとっても「育休復帰支援プラン」を作成するなど、社員が育休を積極的に取得しやすいように働きかけることも重要です。
助成金を活用して育児休業を推進しよう!
両立支援等助成金は育児休業や介護休業など、労働者(従業員)が必要なときに休業ができる制度です。
育児休業や介護休業を取得するよう、必要な整備を整えた企業には条件に応じて助成金が支給されます。
事業主は従業員が必要なときに育児休業や介護休業を取得できるような整備作りを進めなければなりません。
助成金が貰えるばかりではなく、従業員のモチベーションアップや企業のイメージにも繋がるでしょう。
育児休業に関する制度を見直し、適切に両立支援等助成金を受け取れるようにしましょう。
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