◆「賃金助成」のある研修関連助成金の手続き
事業主が実施する教育訓練を対象とした助成金として、
「人材開発支援助成金(訓練コース)」
「キャリアアップ助成金(人材育成コース)」
の2つが広く活用されています。
前者は正規雇用者に対する訓練が対象となり、後者は非正規雇用者に対する訓練が対象となります。
(参考)
人材開発支援助成金
それぞれの助成金が、①経費助成 と、②賃金助成 という二部構成になっており、
経費助成はその名の通り、外部の研修実施機関に支払った研修費用に対する助成、賃金助成は、訓練実施時間帯に受講対象者に支払う賃金に対する助成となります。
今回は特に「賃金助成」の申請における留意点を解説しますが、初めて申請される場合にはとても煩雑で難しく感じられる部分です。以下に、全体の成り立ちと助成金制度の考え方について述べていきます。
◆「所定労働時間内」の訓練であるのが大前提
賃金助成の大原則として、「所定労働時間内の訓練受講」に対する助成しかなされない、という点が重要です。通常、会社として定める「所定労働時間」の根拠となるのは、「就業規則」と「雇用契約書(労働条件通知書)」です。
例えば、所定労働時間が9:00~18:00の従業員に対して、17:00~19:00の時間帯に訓練を受講してもらったとします。この場合は、17:00~18:00の所定労働時間内は助成対象となりますが、18:00~19:00の時間帯については、助成金の対象時間からは外れることになります。
つまり、夜間の時間帯や休日に研修を実施する場合などは、時間外手当や休日労働手当を支払ったとしても助成対象から外れることとなりますので、注意が必要です。
◆「シフト勤務」の場合はどうなるのか?
では、介護施設など「シフト勤務」の場合はどんな扱いになるでしょうか。
その場合は、「勤務シフト表」にて所定労働日・所定労働時間が定められているとみなされますので、シフト表に記載されている労働日・労働時間内で助成対象時間が特定されます。
但し、研修時間帯はいわゆる「現場勤務」から外れていると解釈して、勤務シフト表に記載しない場合が多いですが、それでは上記の時間特定ができませんのでご注意ください。研修の場合は「研修」などの表記で分かるように記載してください。
◆「所定労働時間」→「勤務実績時間」→「賃金支払い」の整合性を図ります
次に、特定された所定労働時間内にて、出勤簿(タイムカード)に研修受講時間帯の実績が明記されていなければなりません。
タイムカードの事業所では、外部研修に参加した日は打刻ができませんが、手書きでもいいので研修参加日・時間帯を明記しておいてください。
最後に、出勤簿(タイムカード)の記載に基づき、その時間帯を含めた賃金支払いがなされていることを、賃金台帳にて証明します。
以上まとめますと、
①所定労働時間の特定(就業規則/雇用契約書/勤務シフト表) →②勤務実績時間の特定(出勤簿/タイムカード) →③勤務時間に対する賃金支払いの証明(賃金台帳)
という流れで、整合性を図った形での書類提出が必要です。
書類の量も多くなり大変ですが、以上の理屈をわかったうえで準備を進められることが肝心です。