助成金と補助金の違いをわかりやすく解説!自社に合う制度の選び方

佐藤東 監修者
社会保険労務士法人はた楽/株式会社はた楽
CEO / Founder
佐藤 東

大阪市立大学(現:大阪公立大学)法学部在学中に、社会保険労務士資格を取得。
株式会社新経営サービスにて、人事制度構築コンサルティングに従事。株式会社アントレプレナーファクトリー執行役員を経て、株式会社はた楽(人事コンサルティング&介護事業)、社会保険労務士法人はた楽を設立。労務DX&給与労務BPOを強みに、全国でサポートを展開中。

はた楽 助成金と補助金の違い

助成金と補助金の違いをわかりやすく理解するための基礎知識

事業を運営する上で、国や自治体から提供される公的資金は非常に心強い存在です。どちらも原則として返済の義務がないため、資金繰りの改善や事業の成長に大きく貢献します。

しかし、これら二つの制度は名称が似ているものの、目的や管轄する省庁などが明確に異なります。自社の目的に合わない制度を選んでしまうと受給できないため、それぞれの特徴を正しく理解することが重要です。

助成金と補助金の決定的な5つの違い

助成金と補助金には、管轄省庁や目的など大きく分けて5つの決定的な違いが存在します。これらの違いを把握することで、自社がどちらの制度を活用すべきかが見えてきます。

ここでは、それぞれの制度がどのような仕組みで運用されているのかを比較しながら解説します。申請前に5つの違いをしっかりと確認し、スムーズな資金調達につなげましょう。

比較項目助成金補助金
管轄省庁主に厚生労働省主に経済産業省
主な目的雇用安定・環境改善事業成長・IT導入
審査の有無要件を満たせば受給可能厳しい採択審査あり
金額規模数十万円〜数百万円数百万円〜数億円
公募期間通年で申請可能数週間〜1ヶ月程度

管轄省庁と財源の違い

助成金は主に厚生労働省が管轄しており、企業が支払う雇用保険料を主な財源として運用されています。そのため、労働基準法などの法令を遵守し雇用保険に加入していることが申請の大前提となります。

一方、補助金は主に経済産業省や地方自治体が管轄しており、国や自治体の税金が財源として使われています。財源が税金であるため幅広い事業者が対象となりますが、その分だけ事業の公益性や将来性が厳しく問われます。

制度が作られる目的の違い

助成金は、従業員の雇用維持や労働環境の改善、人材育成などを支援する社会的な課題解決を目的として作られています。非正規雇用の正社員化や育児休業の取得促進などに取り組む企業を後押しする制度です。

補助金は、新しい技術の開発やITツールの導入など、経済の活性化や産業振興を目的としています。国や自治体の政策目標に沿った事業展開を行う企業に対して、必要な経費の一部を支援する仕組みです。

審査の有無と受給難易度の違い

助成金は、事前に定められた要件を満たし、正しい手順で申請を行えば原則として受給できる傾向にあります。そのため、受給の確実性が高く計画的に社内制度を整えれば多くの企業が活用できます。

補助金は予算や採択件数が限られているため、申請後に厳格な審査が行われ、優秀な事業計画のみが採択されます。競争率が高く受給難易度も上がるため、質の高い事業計画書や経費計画を作成しなければなりません。

支給される金額の規模の違い

助成金は、雇用や労働環境の改善にかかる費用を支援するため、支給額は数十万円から数百万円程度になることが一般的です。従業員数や取り組みの内容に応じて金額が変動しますが、比較的少額の支援が中心となります。

補助金は、新規事業の立ち上げや大規模な設備投資を支援するため、支給額が数百万円から数億円にのぼることもあります。事業の規模に応じて多額の資金を調達できる点が、補助金の大きな魅力と言えます。

公募期間と申請スケジュールの違い

助成金は、年間を通じて随時申請を受け付けているものが多く、自社のタイミングに合わせて計画的に取り組むことができます。ただし、年度替わりで制度の内容や要件が変更されることがあるため、最新の情報を確認する必要があります。

補助金は、公募期間が数週間から1ヶ月程度と短く設定されていることが多く、特定の時期にしか申請できません。公募が開始されたら素早く準備を進める必要があり、予算が尽きると年度途中でも受付が終了することがあります。

給付金や交付金など他の公的支援制度との違い

はた楽 助成金と補助金の違い

国や自治体から支給されるお金には、助成金や補助金の他にも「給付金」や「交付金」など様々な名称の制度があります。これらはいずれも返済不要の資金ですが、制度が作られた根本的な目的や対象者が異なります。

それぞれの言葉が指す意味を正しく理解しておくことで、自社が利用できる支援制度を見落とすリスクを減らせます。各制度の特徴を把握して適切に使い分けることが、経営を安定させるための第一歩となります。

給付金との違い

給付金は、主に国や地方自治体が管轄しており、事業者だけでなく個人の生活支援や災害時の救済を目的として支給されます。新型コロナウイルス対策の持続化給付金や、物価高騰対応の支援金などが代表的な例です。

助成金や補助金のような事業計画の審査はなく、一定の要件を満たしていれば迅速に支給されるのが特徴です。公募期間が設けられていない場合も多いため、要件に合致した段階ですぐに申請手続きを行うことができます。

交付金との違い

交付金は、国が特定の目的を達成するために、地方自治体などに対して資金を割り当てる制度のことです。地方創生やデジタル田園都市国家構想など、自治体が主体となって行う事業の財源として活用されます。

そのため、個々の企業が直接「交付金」という名目で国に申請して資金を受け取るケースはほとんどありません。自治体が交付金を財源として独自の補助金を作ることがあり、企業はその制度を通じて間接的に支援を受け取ります。

奨励金との違い

奨励金は、国や自治体が特定の行動や取り組みを企業に積極的に進めてもらうために支給する資金です。性質としては助成金と非常に似ており、雇用環境の整備や継続雇用制度の導入などを促す目的で創設されています。

厚生労働省や自治体が管轄していることが多く、要件を満たせば原則として支給される点も助成金と共通しています。名称の最後が奨励金となっているだけで、実務上は助成金と同じ枠組みとして扱われることが一般的です。

人事労務の課題解決に役立つ代表的な助成金

厚生労働省が管轄する助成金は、企業が抱える人事労務の課題を解決し、働きやすい環境を作るための強力なツールです。非正規雇用の待遇改善や仕事と家庭の両立支援など、様々な目的に応じたコースが用意されています。

ここでは、多くの中小企業で活用されている代表的な4つの助成金制度について、それぞれの概要を解説します。自社の労務課題に合った制度を見つけることで、従業員の定着率向上や採用力の強化につなげることができます。

  • キャリアアップ助成金
  • 両立支援等助成金
  • 業務改善助成金
  • 人材開発支援助成金

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、パートや派遣社員などの非正規雇用労働者を正社員化したり、処遇を改善したりした企業に支給されます。最も利用されている正社員化コースのほか、賃金規定を改定して昇給させるコースなど複数の種類があります。

2024年度以降の制度変更により、正社員化コースの受給額や申請回数のルールが一部見直されています。重点支援対象者に該当するかどうかを確認することで、より手厚い助成を受けられる可能性があります。

キャリアアップ助成金|厚生労働省

両立支援等助成金

両立支援等助成金は、従業員が仕事と育児や介護を両立できるような職場環境の整備に取り組む企業を支援する制度です。男性労働者の育児休業取得を促進するコースや、介護離職を防止するためのコースなどが設けられています。

育児休業を取得する従業員の業務を代替する体制を整えた場合にも、助成金が支給される仕組みがあります。柔軟な働き方を選択できる制度を導入することで、優秀な人材の離職を防ぐ効果が期待できます。

両立支援等助成金|厚生労働省

業務改善助成金

業務改善助成金は、事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げ、生産性向上のための設備投資を行った中小企業を支援する制度です。機械設備の導入やPOSレジの刷新、業務効率化のためのシステム導入などにかかった費用の一部が助成されます。

賃金の引き上げ額や対象となる労働者の人数によって、助成される上限額が細かく設定されています。従業員の賃金アップと業務の効率化を同時に実現したい企業にとって、非常に使い勝手の良い制度です。

業務改善助成金|厚生労働省

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、従業員に対して職務に関連する専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練を実施した企業に支給されます。研修にかかった経費の一部だけでなく、訓練期間中の従業員の賃金の一部も助成の対象となります。

近年では、新規事業への展開やDX化に向けた「事業展開等リスキリング支援コース」が注目を集めています。既存の従業員を再教育してスキルアップさせることで、人手不足の解消や企業の競争力強化を図ることができます。

人材開発支援助成金|厚生労働省

事業成長やDX化を後押しする代表的な補助金

経済産業省や中小企業庁が管轄する補助金は、企業の生産性向上や新たな市場への進出を強力にバックアップしてくれます。デジタル化の推進やインボイス制度への対応など、時代の変化に合わせた支援枠が充実しています。

ここでは、多くの中小企業が活用を検討する代表的な3つの補助金について、それぞれの特徴を解説します。自社の事業計画に最適な補助金を選択し、審査を通過するための綿密な準備を進めましょう。

  • IT導入補助金
  • 小規模事業者持続化補助金
  • ものづくり補助金

IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が業務効率化やDX化に向けてITツールを導入する際の費用を支援する制度です。ソフトウェアの購入費やクラウドサービスの利用料、PCやタブレットなどのハードウェア購入費が対象となります。

インボイス制度に対応するための会計ソフトや受発注システムの導入を支援する枠も設けられています。サイバーセキュリティ対策のサービス利用料なども補助の対象となり、企業のデジタル化を幅広くサポートします。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、従業員数が少ない小規模な事業者が行う販路開拓や生産性向上の取り組みを支援する制度です。新しいウェブサイトの作成やチラシの配布、展示会への出展、新商品の開発などにかかる経費の一部が補助されます。

他の補助金と比べて要件がシンプルであり、採択率も比較的高い傾向にあるため、個人事業主や創業期の企業でも使いやすいのが特徴です。賃金引上げや創業などの特別枠を利用することで、補助上限額を引き上げることも可能です。

ものづくり補助金

ものづくり補助金は、中小企業が革新的な製品やサービスの開発、または生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する制度です。高額な機械装置の導入やシステム構築費などが対象となり、数千万円規模の補助を受けられる場合があります。

製品やサービスの高付加価値化を目指す枠や、海外市場への展開を支援するグローバル枠などが用意されています。事業計画の革新性や実現可能性が厳しく審査されるため、専門家のサポートを受けながら申請準備を進めるのが一般的です。

助成金と補助金を申請する際の共通の注意点

助成金と補助金はどちらも返済不要の資金ですが、申請や受給にあたってはいくつか気をつけなければならないルールがあります。これらのルールを知らずに手続きを進めると、資金繰りが悪化したり、思わぬペナルティを受けたりする危険性があります。

ここでは、両方の制度を利用する際に必ず押さえておくべき3つの共通の注意点について解説します。制度の仕組みと税務上の扱いを正しく理解し、安全かつ効果的に公的資金を活用しましょう。

原則として後払いであるため事前の資金確保が必要

助成金も補助金も、事業を実施して経費を支払った後に実績報告を行い、その後に支給される「後払い」が原則です。採択されたからといってすぐにお金が振り込まれるわけではないため、まずは自社で事業資金を立て替える必要があります。

設備投資やシステムの導入にかかる費用は、自己資金や金融機関からの借り入れなどで事前に確保しておかなければなりません。入金されるまでの期間を見越した資金繰りの計画を立てておくことが、事業を円滑に進めるための鍵となります。

受給した資金は法人税などの課税対象になる

事業活動に関連して受け取った助成金や補助金は、原則として事業の収益とみなされるため課税の対象となります。法人の場合は法人税の対象となる益金に算入され、個人事業主の場合は所得税の対象となる事業所得に含まれます。

ただし、補助金そのものには対価性がないため、消費税については不課税として扱われます。確定申告の際に正しい会計処理を行わないと申告漏れとなるリスクがあるため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

不正受給には重いペナルティが科される

虚偽の申請や架空の経費計上などによって助成金や補助金を不正に受給した場合、非常に重いペナルティが科されます。発覚した場合は受給額の全額返還に加えて、延滞金や違約金などの加算金を請求されることになります。

さらに、担当省庁のホームページで企業名が公表されたり、悪質な場合は詐欺罪として刑事告発されたりする可能性もあります。意図的でなくても確認不足による誤った申請が不正とみなされることがあるため、正確な手続きを徹底しなければなりません。

助成金と補助金の違いをわかりやすく把握して自社の成長に活かそう

助成金と補助金は、管轄する省庁や目的、審査の有無などにおいて明確な違いがある公的支援制度です。雇用の安定や労働環境の改善を目指すなら助成金を、新規事業の展開や大規模な設備投資を狙うなら補助金を活用するのが基本となります。

それぞれの特徴や申請のスケジュール、後払いであることなどの注意点を正しく理解することが成功への近道です。自社の経営課題に最も適した制度を選択し、事業の継続的な成長と働きやすい職場づくりに役立てていきましょう。

雇用関係助成金|厚生労働省

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