確定拠出年金のマッチング拠出の制限撤廃とは?実務対応を解説【企業型DC】

佐藤東 監修者
社会保険労務士法人はた楽/株式会社はた楽
CEO / Founder
佐藤 東

大阪市立大学(現:大阪公立大学)法学部在学中に、社会保険労務士資格を取得。
株式会社新経営サービスにて、人事制度構築コンサルティングに従事。株式会社アントレプレナーファクトリー執行役員を経て、株式会社はた楽(人事コンサルティング&介護事業)、社会保険労務士法人はた楽を設立。労務DX&給与労務BPOを強みに、全国でサポートを展開中。

はた楽 確定拠出年金マッチング拠出の制限撤廃の概要

2026年4月施行!確定拠出年金(企業型DC)のマッチング拠出の制限撤廃とは

2026年4月1日より、企業型確定拠出年金(企業型DC)のマッチング拠出における加入者掛金額の制限が撤廃されます。これまでは「加入者掛金は事業主掛金以下」という制限が設けられていました。

今回の制限撤廃により、事業主掛金の額に関わらず、拠出限度額の範囲内であれば加入者が自由に掛金を上乗せできるようになります。従業員の資産形成を後押しする重要な法改正として注目されています。

マッチング拠出の基本とこれまでの課題

マッチング拠出とは、企業が拠出する掛金(事業主掛金)に加えて、従業員本人が給与から任意で掛金を上乗せできる制度です。これまでの課題として、「加入者掛金は事業主掛金以下」という制限があったため、事業主掛金が少ない場合は従業員が拠出限度額まで掛金を上乗せできないという問題がありました。

特に若年層などは事業主掛金が少ないことが多く、マッチング拠出枠が小さくとどまってしまうことが課題とされていました。この制限により、制度を十分に活用できない従業員が一定数存在していました。

「事業主掛金以下」の制限撤廃による変更点

2026年4月1日以降は「事業主掛金以下」の制限が撤廃され、拠出限度額の枠を最大限に活用できるようになります。例えば、事業主掛金が月額5,000円の場合、これまではマッチング拠出の上限も5,000円に制限されていました。

制限撤廃後は、拠出限度額(現行5万5,000円)から事業主掛金(5,000円)を引いた5万円までマッチング拠出が可能になります。これにより、事業主掛金が少額であっても大幅な掛金の上乗せが実現します。

2026年12月には拠出限度額も月額6.2万円へ引き上げ

2026年12月1日施行の制度改正により、企業型DCおよびiDeCoの拠出限度額が引き上げられます。会社員(第2号被保険者)の場合、企業型DCの拠出限度額は現行の月額5.5万円から月額6.2万円に変更されます。

確定給付企業年金(DB)がある場合も、合算して月額6.2万円が上限となります。この改正により、老後資金の準備をさらに手厚く行うことが可能になります。

マッチング拠出の制限撤廃が従業員にもたらすメリット

マッチング拠出の制限撤廃により、従業員は事業主掛金が少額であっても、拠出限度額の枠を最大限に活用して老後資金の資産形成ができるようになります。これにより、従業員のDC活用の選択肢が大きく広がります。

また、自身のライフプランに合わせて柔軟に掛金を設定しやすくなる点も大きな魅力です。ここでは、具体的なメリットについて詳しく解説します。

所得控除による節税効果の最大化

マッチング拠出で従業員が拠出した掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象となります。制限撤廃によって拠出額を増やせるようになるため、所得税や住民税の軽減効果を最大化できます。

さらに、運用で得られた利益も非課税となるため、長期的な資産形成において非常に有利な制度です。節税しながら効率よく老後資金を準備できる点が大きなメリットと言えます。

iDeCo(個人型確定拠出年金)と比較した際の優位性

マッチング拠出とiDeCoは併用できず、どちらかを選ぶ必要があります。iDeCoは加入者が自分で口座開設の手続きを行う必要があり、毎月の口座管理手数料(最低171円など)が自己負担となります。

一方、マッチング拠出は給与天引きで手間がかからず、口座管理手数料は原則として会社負担となります。そのため、iDeCoと比較してコストや手間の面で優位性が高いと言えます。

比較項目マッチング拠出iDeCo
口座開設手続き不要(会社経由)自分で手続き
掛金の納付方法給与天引き口座振替など
口座管理手数料原則会社負担自己負担

企業側が対応すべき実務とスケジュール

はた楽 マッチング拠出制限撤廃に向けた企業の実務対応

マッチング拠出の制限撤廃は自動的に適用されるわけではなく、企業側での対応が必要となります。2026年4月の施行に向けて、規約変更や社内システムの見直しなどを計画的に進めなければなりません。

また、従業員への周知や手続きの案内も重要な業務となります。ここでは、企業が対応すべき具体的な実務について解説します。

企業型年金規約の変更手続き

マッチング拠出の制限を撤廃するためには、企業型年金規約の変更が必要です。現行の規約には「事業主掛金額≧マッチング拠出額」という制限が規定されているため、これを変更する手続きを行います。

法改正に伴う制限撤廃の規約変更は、「特に軽微な変更」として厚生局への届出が不要となる場合があります。ただし、規約変更の手続き自体は必須であるため、運営管理機関と連携して準備を進めてください。

給与システムおよび退職金規程の改修・見直し

マッチング拠出の掛金額変更に伴い、給与天引きの金額が変わるため、給与計算システムの改修や設定変更が必要になる場合があります。システムへの影響の有無や改修期間を事前に確認しておくことが重要です。

また、マッチング拠出の運営ルールを退職金規程等に定めている場合は、規程の改定も必要となります。社内規程と実際の運用に齟齬が生じないよう、早めに見直しを行いましょう。

従業員への制度周知と投資教育の実施

制度改正の内容や、マッチング拠出の上限額が変わることについて、従業員へ周知する必要があります。法改正に伴い、マッチング拠出の金額変更を臨時で募集することも可能になるため、その案内も行いましょう。

さらに、拠出額を増やす従業員に向けて、資産形成に関する投資教育を継続的に実施することが求められます。制度のメリットを正しく理解してもらうためのサポート体制を整えてください。

  • 制度改正の概要とスケジュールの周知
  • 掛金変更の臨時募集の案内
  • 資産形成に関する投資教育の実施

マッチング拠出の制限撤廃を機に確定拠出年金(企業型DC)の価値を高めよう

マッチング拠出の制限撤廃は、従業員の資産形成を強力に後押しする制度改正です。企業にとっても、退職後の所得不安を軽減し、従業員のエンゲージメント向上や人材定着に資する重要な取り組みとなります。

この機会に自社の制度を見直し、企業型DCの価値を最大限に高めることが重要です。計画的な実務対応を進め、従業員にとって魅力的な職場環境を構築していきましょう。

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