人材開発支援助成金「人材育成支援コース」とは?対象訓練や申請方法を徹底解説

佐藤東 監修者
社会保険労務士法人はた楽/株式会社はた楽
CEO / Founder
佐藤 東

大阪市立大学(現:大阪公立大学)法学部在学中に、社会保険労務士資格を取得。
株式会社新経営サービスにて、人事制度構築コンサルティングに従事。株式会社アントレプレナーファクトリー執行役員を経て、株式会社はた楽(人事コンサルティング&介護事業)、社会保険労務士法人はた楽を設立。労務DX&給与労務BPOを強みに、全国でサポートを展開中。

はた楽 人材開発支援助成金人材育成支援コースの制度概要

人材開発支援助成金「人材育成支援コース」とはどのような制度か

人材開発支援助成金の「人材育成支援コース」は、企業が従業員に対して職務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練を実施した際に利用できる制度です。事前に作成した計画に沿って訓練を実施した場合に、国から助成金が支給されます。この制度を活用することで、企業は教育訓練にかかるコスト負担を大幅に軽減しながら、従業員のスキルアップを図ることができます。正規雇用労働者だけでなく、パートタイムや契約社員などの非正規雇用労働者を対象とした訓練も幅広くカバーしています。

従業員のスキルアップ経費と期間中の賃金を助成

人材育成支援コースの大きな特徴は、訓練にかかった「経費」と、訓練期間中の「賃金」の両方が助成の対象となる点です。外部の教育訓練機関に支払う受講料などの経費が一部助成されるため、高額な専門研修も導入しやすくなります。さらに、従業員が業務時間中に訓練を受講している間の賃金も一部補填されるため、企業側の負担を最小限に抑えることが可能です。これにより、企業は積極的な人材投資を行いやすくなり、組織全体の生産性向上につなげることができます。

2026年(令和8年)の主な変更点と最新動向

2026年(令和8年)4月8日より、人材育成支援コースの制度内容にいくつかの重要な変更が加えられました。最も大きなトピックは、45歳以上の労働者を対象とした「中高年齢者実習型訓練」が新たに創設されたことです。また、eラーニングや通信制訓練に関する経費助成の上限額が見直され、中小企業は15万円、大企業は10万円に一律化されました。さらに、定額制サービス(サブスクリプション型)を利用した訓練の提出書類が簡素化され、対象労働者が10人以上の場合は任意の10人分の提出で済むようになるなど、申請手続きの負担軽減が図られています。

人材育成支援コースの4つの訓練メニューと対象者

人材育成支援コースには、企業の目的や対象となる従業員の属性に合わせて、4つの異なる訓練メニューが用意されています。それぞれのメニューで対象者や訓練の実施方法が異なるため、自社の課題に最適なものを選択することが重要です。ここでは、各訓練メニューの特徴と対象となる労働者について詳しく解説します。自社の人材育成計画と照らし合わせながら、どのメニューが活用できるかを確認してみてください。

1. 人材育成訓練(10時間以上のOFF-JT)

人材育成訓練は、通常の事業活動とは切り離して行われる「OFF-JT(座学や外部研修など)」を10時間以上実施する場合に利用できるメニューです。正規雇用労働者だけでなく、有期契約労働者などの非正規社員も対象となります。既存業務のスキルアップや、新たな専門知識の習得を目的とした幅広い研修に適用できるため、多くの企業にとって最も使いやすいコースと言えます。社外の研修機関を利用する場合だけでなく、社内で外部講師を招いて実施する研修も対象となります。

2. 認定実習併用職業訓練(若手の中核人材育成)

認定実習併用職業訓練は、主に新卒者などの若手人材を対象に、実務を通じた「OJT」と座学などの「OFF-JT」を組み合わせて実施する訓練メニューです。この訓練を実施するためには、事前に厚生労働大臣の認定を受ける必要があります。体系的なカリキュラムに基づいて長期間の訓練を行うため、将来の企業を担う中核人材を計画的に育成したい場合に適しています。訓練終了後には、ジョブ・カードを活用した職業能力の評価を行うことが求められます。

3. 有期実習型訓練(非正規社員の正社員化)

有期実習型訓練は、有期契約労働者やパートタイム労働者などの非正規社員を対象とした訓練メニューです。正規雇用労働者への転換を前提としており、OJTとOFF-JTを組み合わせて実践的なスキルを身につけさせます。正社員としての職務を遂行するために必要な能力を段階的に育成できるため、優秀な非正規社員のキャリアアップを支援する企業に最適です。この訓練も、ジョブ・カードを活用した職業能力の評価を実施することが要件となっています。

4. 中高年齢者実習型訓練(45歳以上のリスキリング)

中高年齢者実習型訓練は、2026年(令和8年)4月に新設された、45歳以上の労働者を対象とする訓練メニューです。ベテラン社員に対して、新たな業務や役割に対応するための知識・技能を習得させることを目的としており、OJTとOFF-JTを組み合わせて実施します。シニア層のリスキリングを促進し、企業内での継続的な活躍を後押しするための強力な支援策となっています。訓練開始前には、キャリアコンサルタントによる面談を実施するなどの独自の要件が設けられています。

人材育成支援コースの助成額と助成率(中小企業の場合)

はた楽 人材育成支援コースの助成額と助成率

人材育成支援コースで支給される助成額や助成率は、選択する訓練メニューや対象となる労働者の雇用形態によって細かく設定されています。また、企業規模(中小企業か大企業か)によっても助成水準が異なります。ここでは、中小企業が各訓練メニューを利用した場合の基本的な助成率と、支給限度額について整理して解説します。自社がどの程度の助成を受けられるのか、事前にしっかりとシミュレーションしておくことが大切です。

各訓練メニューの基本助成率と支給限度額

中小企業の場合、人材育成訓練(正規雇用向け)の経費助成率は45%、賃金助成は1時間あたり800円となります。有期実習型訓練の場合は経費助成率が75%と高く設定されており、さらにOJT実施助成として10万円が支給されます。なお、1事業所が1年度あたりに受給できる助成金の限度額は、全メニュー共通で1,000万円までと定められています。

訓練メニュー経費助成率賃金・OJT助成
人材育成訓練(正規)45%800円/時
人材育成訓練(非正規)70%800円/時
有期実習型訓練75%10万円(OJT)
中高年齢者実習型訓練60%10万円(OJT)

賃金要件や資格等手当要件の達成による加算措置

人材育成支援コースには、一定の要件を満たすことで助成額が大幅にアップする加算措置が用意されています。訓練終了後に受講者の賃金を5%以上増額改定する「賃金要件」を満たすと、中小企業の場合は経費助成率が15%上乗せされます。また、資格取得時に手当を支給して賃金を3%以上増額させる「資格等手当要件」を満たした場合も、同様の加算を受けることができます。賃金助成についても1時間あたり200円が加算されるため、従業員の待遇改善とセットで活用することで非常に大きなメリットを得られます。

有期実習型訓練とキャリアアップ助成金の併用スキーム

非正規社員の正社員化を目指す「有期実習型訓練」は、キャリアアップ助成金(正社員化コース)と併用することで助成額を最大化できる強力なスキームです。有期実習型訓練を実施した後に、対象者を正規雇用労働者へ転換させることで、両方の助成金を受給することが可能になります。キャリアアップ助成金の基本助成額(最大80万円)に加えて、人材開発支援助成金の訓練加算額(95,000円など)が上乗せされるため、企業にとって非常に魅力的な制度設計となっています。この併用スキームを活用することで、正社員化に必要な有期雇用期間を短縮できるメリットもあります。

人材育成支援コースの対象となる訓練と対象外の訓練

人材育成支援コースを利用する上で注意しなければならないのは、企業が実施するすべての研修が助成の対象になるわけではないという点です。助成金を受給するためには、厚生労働省が定める「対象となる訓練」の要件を厳密に満たしている必要があります。ここでは、助成対象として認められる訓練の条件と、対象外となってしまう研修の具体例について解説します。計画を立てる前に、自社が予定している研修が要件に合致しているかを必ず確認してください。

助成対象として認められるOFF-JTとOJTの要件

助成対象となる訓練の大前提は、従業員の「職務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための訓練」であることです。OFF-JT(座学や外部研修)の場合は、通常の事業活動とは完全に切り離された環境で実施され、原則として10時間以上の訓練時間が確保されている必要があります。一方、OJT(実務を通じた訓練)を実施する場合は、適格な指導者の下で、あらかじめ作成された計画に基づいて体系的に行われることが求められます。単なる日常業務の延長や、指導者が明確でないOJTは助成の対象として認められません。

助成対象外となるマナー研修や普通免許取得などの訓練

職務に直接関連しない訓練や、間接的に必要となる程度の知識・技能を習得させる訓練は、助成の対象外となります。例えば、普通自動車免許の取得講習などは、特定の職務に限定されないため対象として認められません。また、ビジネスマナー研修や接遇研修といった、職業人として共通して必要となる一般的な研修も対象外となります。その他、日常英会話などの趣味教養を目的とするものや、自社製品の操作説明といった通常の業務遂行とみなされる研修も助成を受けることができません。

対象外の理由具体的な研修例
直接関連しない普通自動車免許の取得
一般的な研修ビジネスマナー・接遇
趣味教養の目的日常英会話講習など
通常業務の延長自社製品の操作説明

人材育成支援コースを受給するための申請スケジュール

はた楽 人材育成支援コースの申請スケジュールと手続きの流れ

人材育成支援コースの助成金を確実に受給するためには、国が定めた厳格なスケジュールに沿って手続きを進める必要があります。事前の計画提出から訓練の実施、そして事後の支給申請まで、各ステップで期限が設けられています。期限を1日でも過ぎてしまうと助成金を受け取ることができなくなるため、スケジュール管理は非常に重要です。ここでは、申請から受給までの具体的な4つのステップと、それぞれの期限について詳しく解説します。

1. 職業能力開発推進者の選任と事業内計画の策定

申請手続きの最初のステップとして、社内で職業能力開発の取り組みを推進するキーパーソンとなる「職業能力開発推進者」を選任する必要があります。教育訓練部門の部課長や人事担当者など、適切な権限を持つ人物を配置してください。同時に、自社の人材育成の基本的な方針を定めた「事業内職業能力開発計画」を策定し、従業員に対して周知することが求められます。これらの準備は、次に説明する計画届を提出する日までに完了させておかなければなりません。

2. 訓練開始1か月前までの職業訓練実施計画届の提出

社内での準備が整ったら、管轄の都道府県労働局に対して「職業訓練実施計画届」を提出します。この計画届は、訓練開始日から起算して1か月前までに提出しなければならないという厳格なルールがあります。例えば、5月1日に訓練を開始する場合、遅くとも4月1日までに労働局へ書類を提出し、受理される必要があります。事後提出は一切認められないため、研修の日程が決まったら、余裕を持って書類作成と提出の準備を進めることが不可欠です。

3. 計画に沿った訓練の実施と受講費用の全額支払い

計画届が受理されたら、提出した内容に沿って従業員に訓練を受講させます。訓練期間中は、出勤簿やタイムカードを用いて受講者の出欠状況を正確に記録・管理することが重要です。また、外部の教育訓練機関を利用した場合の受講料などの経費は、事業主が全額を負担し、支給申請を行う日までに支払いを完了させておく必要があります。従業員に費用を立て替えさせたり、支払いが遅れたりすると、助成の対象外となってしまうため注意が必要です。

4. 訓練終了日の翌日から2か月以内の支給申請

すべての訓練が終了し、費用の支払いが完了したら、いよいよ助成金の支給申請を行います。支給申請書は、訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に管轄の労働局へ提出しなければなりません。この期限を過ぎてしまうと、それまでの手続きがすべて無効となり、助成金を受け取ることができなくなります。申請時には、賃金台帳や領収書、訓練の実施状況を証明する書類など、多くの添付書類が必要となるため、訓練終了後速やかに準備に取り掛かることをお勧めします。

人材育成支援コースの申請で失敗しないための注意点

人材育成支援コースは非常にメリットの大きい制度ですが、要件が細かく設定されているため、手続きのミスで不支給となってしまうケースも少なくありません。せっかく時間とコストをかけて訓練を実施したのに、助成金が受け取れないという事態は絶対に避けたいものです。ここでは、申請手続きにおいて企業が陥りやすい失敗例と、それを防ぐための重要な注意点について解説します。実務担当者はこれらのポイントをしっかりと押さえておきましょう。

訓練費用の支払いは必ず支給申請前に完了させる

助成金の支給要件として、訓練にかかった経費は事業主が全額負担していることが求められます。そのため、教育訓練機関への受講料などの支払いは、必ず支給申請日までに完了していなければなりません。クレジットカード払いや分割払いを利用した場合、支給申請の時点で口座からの引き落としが完了していないと、支払いが済んでいないとみなされ不支給となるリスクがあります。経費の支払いは銀行振込など、支払い期日が明確に証明できる方法で行い、領収書や振込明細書を確実に保管しておきましょう。

訓練予定の変更時は事前に計画変更届を提出する

最初に提出した職業訓練実施計画届の内容から、訓練の日程や受講者、利用する教育訓練機関などに変更が生じることは実務上よくあります。このような場合、変更された訓練を実施する前までに、必ず労働局へ「計画変更届」を提出しなければなりません。事前の変更届を提出せずに、当初の計画と異なる訓練を実施してしまうと、その訓練にかかった費用や賃金は助成の対象外となってしまいます。予定の変更が判明した時点で、速やかに労働局へ相談し、適切な手続きを行うことが重要です。

2026年5月以降必須の「価格設定に関する疎明書」への対応

2026年(令和8年)5月14日の制度改正により、支給申請時の提出書類に関する重要なルール変更が行われました。同日以降に支給申請を行う場合、新たに「受講料等の価格設定に関する疎明書(様式第28号)」の提出が必須となっています。さらに、すでに支給申請を行っている場合でも、5月14日時点で支給決定または不支給決定がされていない案件については、労働局からこの疎明書の追加提出が求められます。最新の様式を厚生労働省のホームページからダウンロードし、漏れなく対応するようにしてください。

人材開発支援助成金「人材育成支援コース」とは?制度を理解し企業成長へ

人材開発支援助成金の「人材育成支援コース」は、従業員のスキルアップと企業の生産性向上を強力に後押しする非常に有益な制度です。正規・非正規を問わず幅広い労働者を対象としており、2026年の改正で新設された中高年齢者向けの訓練など、企業の多様なニーズに応えるメニューが揃っています。一方で、事前の計画提出や厳格なスケジュール管理、対象外となる訓練の把握など、制度のルールを正確に理解して運用することが不可欠です。自社の人材育成ビジョンと助成金制度をうまく連携させ、企業の持続的な成長へとつなげていきましょう。

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