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従業員の休息時間確保は義務?勤務間インターバル制度の基本
働き方改革が進む中、「休息時間の確保」は企業の大きな課題となっています。特に注目されているのが「勤務間インターバル制度」です。
まずは、この制度の基本と法的な位置付けについて解説します。
勤務間インターバル制度とは?
勤務間インターバル制度とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する仕組みのことです。
例えば、インターバルを「11時間」と設定した場合、深夜23時に仕事が終わったら、翌日の始業は午前10時以降としなければなりません。これにより、従業員は睡眠時間や生活時間を十分に確保でき、疲労回復や健康維持につながります。
現状は「努力義務」だが過労死防止の観点から重要性が高まる
現在、この制度の導入は法律上の「義務」ではなく、「努力義務」とされています。2019年4月に施行された「労働時間等設定改善法」により、企業は制度の導入に努めることと定められました。
しかし、厚生労働省の調査によると、実際に導入している企業は6%程度にとどまっており、普及はまだ道半ばです。それでも、過労死防止や従業員の健康確保の観点から、国は導入を強く推奨しており、今後の法改正議論の中心的なテーマとなっています。
勤務間インターバル制度、義務化への最新動向【2026年法改正?】
「2026年に義務化されるのでは?」という噂を耳にしたことがある方も多いかもしれません。ここでは、義務化に向けた議論の背景と、最新の検討状況について解説します。
なぜ今、休息時間の確保が義務化へ?国際的な背景と国内の議論
義務化が議論される最大の理由は、国際的な基準との乖離です。EU(欧州連合)では「労働時間指令」により、24時間につき最低連続11時間の休息期間を設けることが加盟国に義務付けられています。
一方、日本では長時間労働による過労死が依然として社会問題となっており、「過労死等防止対策大綱」においても勤務間インターバル制度の導入促進が数値目標として掲げられています。こうした背景から、日本でも国際水準に合わせた法規制の強化が必要だという声が高まっています。
厚生労働省の検討状況と今後のスケジュール
厚生労働省の「労働基準関係法制研究会」では、勤務間インターバル制度の義務化を含む法改正の提言が行われてきました。しかし、最近の報道によると、政府内での調整の結果、2026年の通常国会への法案提出は見送られる方針が固まったと報じられています。
これは、政府の労働時間規制に関する方針などが影響していると見られており、義務化のスケジュールは当初の想定よりも不透明になっています。とはいえ、過労死防止という目的は変わらないため、今後も議論が継続されることは間違いないでしょう。
義務化された場合の罰則は?想定されるリスクを解説
現時点では努力義務であるため、導入しなくても罰則はありません。しかし、もし将来的に義務化されれば、労働基準法に基づく罰則(懲役や罰金)が設けられる可能性があります。
また、義務化の有無にかかわらず、企業には従業員の健康を守る「安全配慮義務」があります。十分な休息を与えずに従業員が健康被害を受けた場合、民事上の損害賠償責任を問われるリスクがあることは認識しておくべきでしょう。
確保すべき休息時間は何時間が適切か?【9時間・11時間】

では、具体的に何時間の休息を確保すればよいのでしょうか。ここでは、推奨される基準と最低限守るべきラインについて解説します。
推奨される「11時間」と最低ラインの「9時間」
厚生労働省は、勤務間インターバルとして「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」の確保を推奨しています。特にEU基準でもある「11時間」は、理想的な休息時間とされています。
一方で、「9時間」は最低限のラインと考えられています。通勤時間や食事、入浴などの生活時間を考慮すると、9時間のインターバルで確保できる睡眠時間はギリギリの水準だからです。
休息時間8時間以下で高まるリスクと企業の安全配慮義務
インターバルが8時間以下になると、睡眠時間が6時間を切る可能性が高まります。研究によると、睡眠不足は脳・心臓疾患や精神疾患のリスクを著しく高めることが分かっています。
このような状態で従業員を働かせ続けることは、企業の安全配慮義務違反に問われる可能性が高く、非常に危険です。企業としては、少なくとも9時間、できれば11時間のインターバル確保を目指すべきです。
義務化に備える!企業が今すぐ始めるべき4つの対策

法改正の行方は不透明ですが、従業員の健康を守るために企業ができることはたくさんあります。今すぐ始めるべき4つの対策を紹介します。
【Step1】勤怠管理システムで客観的な休息時間を把握する
まずは、自社の現状を把握することから始めましょう。自己申告ではなく、PCログや入退室記録と連携した勤怠管理システムを導入し、客観的な始業・終業時刻を記録することが重要です。
正確なデータがなければ、どの部署でインターバル不足が起きているかを把握できず、効果的な対策が打てません。
【Step2】就業規則への明記と従業員への周知徹底
次に、就業規則に勤務間インターバル制度の規定を盛り込みます。対象となる従業員の範囲や、休息時間数(例:11時間)、例外的な取り扱い(緊急時の対応など)を明確に定義します。
制度を作っただけでは意味がありません。従業員に対して説明会を開くなどして、制度の目的とルールを周知徹底することが重要です。
【Step3】業務フローの見直しと無理のないシフト管理体制の構築
インターバルを確保するためには、業務フローそのものの見直しが不可欠です。特定の個人に業務が集中しないよう属人化を解消したり、翌日の始業時間を柔軟に遅らせることができるシフト体制を構築したりする必要があります。
無理なシフトは制度の形骸化を招きます。現場の実態に即した、実現可能な運用ルールを作りましょう。
【Step4】勤務間インターバル導入に使える助成金【最新情報】
制度導入にはコストがかかる場合がありますが、国の助成金を活用できます。「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」は、最新年度においても継続して実施されています。
| 取組内容 | 助成額(上限) |
|---|---|
| 新規導入(11時間以上) | 120万円 |
| 新規導入(9〜11時間) | 100万円 |
| 適用範囲の拡大など | 60万円 |
この助成金は、就業規則の作成費用や、労務管理用機器の導入費用などに充てることができます。ぜひ活用を検討してください。
休息時間の確保がもたらす企業へのメリット

勤務間インターバル制度は、単なる「規制への対応」ではありません。企業にとっても大きなメリットをもたらします。
従業員の健康維持と離職率の低下
十分な睡眠時間を確保することで、従業員の心身の健康が保たれます。これにより、メンタルヘルス不調による休職や、健康問題を理由とした離職を防ぐことができます。
長く健康に働いてもらうことは、採用コストの削減やノウハウの蓄積にもつながります。
集中力向上による労働生産性の改善
疲労が蓄積した状態では、集中力が低下し、ミスが発生しやすくなります。しっかり休息を取ることで、翌日のパフォーマンスが向上し、結果として労働生産性が高まります。
短時間で質の高い仕事ができるようになれば、残業時間の削減にもつながる好循環が生まれます。
「働きやすい企業」としての人材確保・定着
求職者は「働きやすさ」を重視しています。勤務間インターバル制度を導入していることは、「従業員の健康を大切にする企業」という強力なメッセージになります。
優秀な人材を確保し、定着させるためにも、この制度は大きな武器となるでしょう。
休息時間の確保は企業成長の好機!継続的な改善を
勤務間インターバル制度は、法的な義務化の有無にかかわらず、企業が取り組むべき重要な課題です。従業員の健康を守り、生産性を高めることは、企業の持続的な成長に不可欠だからです。
まずは現状を把握し、できるところから少しずつ対策を始めてみてください。それが「選ばれる企業」への第一歩となるはずです。









