令和6年税制改正大綱により、所得税および住民税の定額減税実施が決定されました。
こうなると、「給与計算担当者として何をすればいいのか?」が悩ましいところです。今回は、給与計算担当者としての対応ポイントに絞って、必要な準備・処理内容を解説いたします。
(参考)国税庁 定額減税特設サイト
(参考)給与等の源泉徴収事務に係る令和6年分所得税の定額減税のしかた
(参考)令和6年分所得税の定額減税Q&A
目次
「定額減税の対象者」は誰か?
給与支給対象者のうち、だれが定額減税の対象となるのでしょうか。
①給与収入2,000万円以下
令和6年度の合計所得金額が1805万円以下(給与所得のみで、年収2,000万円以下)の方が全て対象となります。
②国内居住者
日本国内の住居のある人が全て対象です。
「減税される額」はいくらか?
対象となる人について、以下の額が減税されます。
【所得税】
「本人30,000円」+「同一生計配偶者または扶養親族の人数 × 30,000円」
【住民税】
「本人10,000円」+「同一生計配偶者または扶養親族の人数 × 10,000円」
「同一生計配偶者」の範囲は?
定額減税額を計算するうえで、ここが少し難しい点となります。
「同一生計配偶者」とは?
何をもって「同一生計配偶者」とみなすか?については、「給与収入のみで103万円」(合計所得金額が48万円以下)という基準で判断します。
※国内居住者のみ対象
また、給与所得者本人の合計所得金額が900万円を超えるため、「扶養控除等申告書」に源泉控除対象配偶者として記載していない場合も、上記基準を満たせば「同一生計配偶者」として対象となる場合があります。
「扶養親族」の範囲は?
①控除対象扶養親族
こちらは「所得税法上の控除対象扶養親族」のことで、「給与所得者本人と同一生計にある、配偶者以外の16歳以上の親族」となります。
②16歳未満の扶養親族
①に加えて、「16歳未満の扶養親族」も、定額減税の人数カウントに含まれるのが、通常の年末調整との違いであり、大きなポイントです。
※①②ともに、国内居住者のみ対象
所得税の定額減税の計算方法は?
①月次減税
2024年6月1日以後に支払う給与・賞与から、その時点の定額減税額を控除します。
②年調減税
年末調整の際、年末調整時点の定額減税額に基づき精算を行います。
「月次減税」の方法は?
①2024年6月1日時点での在籍者
翻ると、「2024年5月31日以前に退職した人」「2024年6月2日以降に入社した人」は対象外、となります。
②甲欄
「扶養控除等申告書」を提出している人が対象です。副業・他社勤務がある従業員の場合、自社でメインの給与を受け取っている従業員が対象となります。
「乙欄」(本人にとってメインの給与の支払い元ではない人)、「丙欄」(日雇労働者)は対象外となります。
①2024年6月1日以後に支給する最初の給与・賞与から、定額減税額を控除します。
②控除しきれない額が残った場合は、2024年中の以後の給与・賞与から、順次控除します。
③従業員ごとの控除実績について、各月の控除額・控除しきれなかった残額を「各人別控除事績簿」にて管理していきます。
「年調減税」の方法は?
①対象者の確認
年末調整の対象者が、原則として年調減税額控除の対象となります。
※2024年6月2日以降に中途入社した人は、月次減税の対象とはせず、年調減税のみ対象とします。
※令和6年度の合計所得金額が1805万円(給与所得のみで年収2,000万円)を超える見込みの人は、対象外となります。
②年調減税額の計算
「扶養控除等申告書」や「配偶者控除等申告書」から、年末調整行う際の現況における「同一生計配偶者」「扶養親族」の人数を確認
「本人30,000円」+「同一生計配偶者+扶養親族1名あたり30,000円」の合計額を算出
③年調減税額の控除
住宅ローン控除後の所得金額を限度に、②の年調減税額を控除
「住民税」の定額減税の計算方法は?
以下、給与計算実務の対象となる「特別徴収」の場合の手順を解説します。
①2024年6月分の徴収は無し
通常の徴収方法と大きく異なる点として、6月分の徴収額は0として、残りの11か月分の徴収額が決定されます。
②2024年7月~2025年5月分給与から控除
「定額減税後の年税額」を、11か月で平均した税額を控除します。
育休中の定額減税の扱いは?
育休中のスタッフについて、定額減税の扱いをどうするか?(対象に含めるか?)が迷うところですが、これについて国税庁は、
「令和6年6月1日現在において、会社から実際に給与の支払を受けていなくても、同日時点で従業員としての身分があり、かつ、会社に扶養控除等申告書を提出している限り、定額減税の対象となる」
という見解を発表しています。
そのため、令和6年中に復帰し、給与の支給を受ける場合に、その月の給与から月次減税の対象となります。
また、育休取得者も「年末調整」の対象となりますので、その際に「年調減税」で処理するかの、いずれかの扱いとなります。
「定額減税枠(所得税3万円)を引ききれない」という場合、これはご本人側で市町村への申請が必要となりますが「調整給付金」により給付がなされます。
クラウド型給与計算システム主要2社の対応方法
主要なクラウド型給与計算システム2社(freee人事労務/マネーフォワードクラウド給与)における、定額減税への対応方法についてお知らせします。
①freee人事労務
freee人事労務では、いち早く定額減税の対応方法が、具体的な操作手順として整備されています。
②マネーフォワードクラウド給与/年末調整
2024年5月中に、控除対象者の抽出から各種帳票の出力までの一連の業務をクラウド上で完結できるよう、機能拡充を予定しています。
『マネーフォワード クラウド給与』『マネーフォワード クラウド年末調整』、令和6年の定額減税への対応を決定
③SmartHR
月次減税事務手続きに必要な「扶養親族情報を収集」する方法について、発表されています。
SmartHR『月次減税事務手続きに必要な家族情報を収集する』
はた楽の「定額減税サポートサービス」
社会保険労務士法人はた楽では、「給与計算らくらくパック」の導入企業様に対して、「定額減税に対応した給与計算サポート」を提供いたします。
全国どの都道府県でもサポート提供が可能です。ぜひ、以下のページも参照ください。
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