最近ではパートスタッフの時給相場もどんどん上がり、せっかく定着してくれたスタッフさんが離職しないよう、何らかの手立てを考えられる会社様も増えてきました。
また、令和3年度は2年ぶりの「最低賃金引上げ」もあり、業種・都道府県によっては、時給引き上げを迫られるケースも想定されます。
そんな中おすすめなのが、「キャリアアップ助成金」の活用です。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは?
ここでは、「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」というものが適用できます。
パートのままの場合は「正社員化」ではないのでややこしいですが、この制度の中にいくつかのパターンがあります。
①有期契約→正規契約への転換(いわゆる正社員化):一人当たり57万円
②有期契約→無期契約への転換(正社員以外の無期契約への転換):一人当たり28.5万円
③無期契約→正規契約への転換:一人当たり28.5万円
今回想定するのは、勤務形態としては「パート(時給)」のままで、雇用形態として「有期→無期」へ転換するという、上記②のバターンです。
申請要件(対象となるスタッフ)は?
①雇用形態を、「有期雇用→無期雇用」に切り替える
想定されるケースとしては、
「初回の契約は、お互いの見極め期間として6か月の有期雇用契約」を結んでおいて、6か月経過後に、「勤務し続けててもらうことに問題がなく、ずっと定着してほしい」と思える場合に、「無期契約(定年年齢まで勤めてもらえる契約)」に切り替えます。
有期雇用の期間は必ずしも6か月に限定されませんが、雇用期間が6か月以上3年以下のスタッフが助成金申請の対象となります。
②時給を3%アップする
①で雇用形態を転換した日を境に、「前6か月」「後6か月」の時間単価を比較し、「後6か月」「前6か月」に比べて3%アップしていることが必要です。
分かりにくいので、単純な例を挙げますと、
令和3年4月1日~9月30日:時給1,000円
↓ (転換日:令和3年10月1日)
令和3年10月1日~令和4年3月31日:時給1,030円
で賃金を支払えば、「3%アップ要件」はクリアです。
令和2年度までは「5%アップ」が要件だったのですが、令和3年度から「3%アップに引き下げ」られてますので、さらに使い勝手が良くなりました。
③転換日以後は、必ず「雇用保険に加入」する
申請するスタッフは、「雇用保険被保険者」に限定されます。雇用保険加入には「週20時間以上」の勤務が前提となります。
転換日(上記②の例いえば、令和3年10月1日)以後は、必ず雇用保険に加入していなければなりません。転換日より前から雇用保険に入っていることは問題ありません。
また、併せて社会保険加入の要件も満たす方は社保加入も必要です。
(労働時間を延長して、社会保険に加入した場合の助成金もあります)
パートスタッフを社会保険に加入することで申請できる助成金とは?
④転換後6か月間、辞めずに勤務してもらう
無期契約に切り替えただけでは申請はできず、「転換後6か月間分の給与を支払い終わってから」申請が可能となります。
ちなみに、この6か月をカウントする際には、出勤日が11日以上ある月である必要があります。未達の月があれば、11日以上出勤月が延べ6か月以上になってから申請ができます。
必要な事前準備
無期契約への切り替えを行うまでに、『キャリアアップ計画書の作成・提出』と、『就業規則への転換規定明記』を行っておく必要があります。
以上の適用により、中小企業の場合は一人当たり28.5万円(生産性要件を満たす会社なら36万円)の助成金が申請できます。
スタッフにとっては時給がアップするメリットがあり、会社にとっては定着してほしいスタッフの昇給原資も助成金で賄うことができます。入社からの雇用契約の流れと転換のルールを、この機会に整理しておくと良いでしょう。
特に、毎年10月に施行される「最低賃金引上げ」のタイミングに合わせて3%昇給することで、申請の幅はグッと広がります。
はた楽では、キャリアアップ助成金の事前準備から申請完了までを、以下の代行サービスにてサポートしています。
助成金申請は、なかなか面倒で複雑なため、専門の社労士にお任せいただくことをお勧めします。どうぞご活用ください。