【2028年改正】雇用保険の加入条件が週10時間へ!企業への影響と対策を解説

佐藤東 監修者
社会保険労務士法人はた楽/株式会社はた楽
CEO / Founder
佐藤 東

大阪市立大学(現:大阪公立大学)法学部在学中に、社会保険労務士資格を取得。
株式会社新経営サービスにて、人事制度構築コンサルティングに従事。株式会社アントレプレナーファクトリー執行役員を経て、株式会社はた楽(人事コンサルティング&介護事業)、社会保険労務士法人はた楽を設立。労務DX&給与労務BPOを強みに、全国でサポートを展開中。

はた楽 雇用保険の加入条件変更と適用拡大の概要

2028年の法改正で雇用保険の加入条件はどう変わる?適用拡大の概要

2024年5月に成立した改正雇用保険法により、2028年10月1日から雇用保険の適用範囲が大きく拡大されることが決定しました。この法改正は、パートタイムやアルバイトなど短時間で働く多くの労働者に影響を与える重要な変更です。

企業の人事労務担当者は、新たな加入対象者の把握や社内制度の見直しなど、多岐にわたる対応を迫られます。制度の変更点を正しく理解し、計画的に準備を進めることが不可欠です。

雇用保険の加入条件が「週20時間」から「週10時間」以上へ

現在の雇用保険制度では、加入条件の一つとして「1週間の所定労働時間が20時間以上」であることが定められています。しかし、2028年10月1日の改正法施行後は、この基準が「週10時間以上」へと引き下げられます。

この変更により、これまで対象外だった週10時間以上20時間未満の短時間労働者も新たに雇用保険の被保険者となります。新たに約500万人が雇用保険の対象になると見込まれており、企業規模を問わず多くの事業所に影響が及びます。

雇用保険法が改正された背景と目的

今回の法改正の背景には、非正規雇用の増加や共働き世帯の増加など、人々の働き方が多様化している現状があります。従来の制度では、短時間労働者が失業や育児休業に直面した際のセーフティネットが十分に機能していませんでした。

そのため、多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットを構築し、「人への投資」を強化することが改正の主な目的とされています。より多くの労働者が安心して働ける環境を整備することが、国全体としての重要な課題となっています。

被保険者期間の算定基準の緩和と失業認定基準の見直し

適用拡大に伴い、失業給付を受けるための被保険者期間の算定基準も現行の半分に緩和されます。具体的には、1ヶ月としてカウントされる基準が「賃金支払基礎日数が11日以上または労働時間が80時間以上」から「6日以上または40時間以上」に変更されます。

また、失業認定基準についても、労働した場合に失業日として認められる基準が「1日4時間未満」から「1日2時間未満」へと見直されます。短時間労働者が不利益を被らないよう制度全体が調整されているのが特徴です。

項目現行(週20時間基準)改正後(週10時間基準)
算定基準(日数)11日以上6日以上
算定基準(時間)80時間以上40時間以上
失業認定基準1日4時間未満1日2時間未満

2025年施行の雇用保険法改正による新たな給付金制度

はた楽 2025年施行の雇用保険法改正による新給付金制度

2028年の適用拡大に先立ち、2025年にも雇用保険法に関する重要な改正が段階的に施行されました。特に注目すべきは、育児支援や労働者のスキルアップを目的とした新たな給付金制度の創設です。

これらの新制度は、従業員のワークライフバランス向上やキャリア形成に直結するため、企業としても制度内容を正確に把握しておく必要があります。社内への周知や就業規則の整備を速やかに進めることが求められます。

【2025年4月】出生後休業支援給付金・育児時短就業給付金の創設

2025年4月1日より、共働き・共育てを推進するための「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」が新たにスタートしました。出生後休業支援給付金は、子の出生直後に両親がともに14日以上の育児休業を取得した場合、休業前賃金の13%が最大28日間上乗せ支給される制度です。

一方の育児時短就業給付金は、2歳未満の子を育てるために時短勤務を選択し、賃金が低下した労働者に対して支給されます。時短勤務中に支払われた賃金の10%が給付されるため、育児と仕事の両立を強力にサポートします。

【2025年10月】教育訓練休暇給付金の創設

2025年10月1日からは、労働者の自発的な学び直し(リスキリング)を支援する「教育訓練休暇給付金」が創設されます。これは、雇用保険の被保険者が教育訓練のために連続して30日以上の無給休暇を取得した場合に、生活費を保障する制度です。

受給には雇用保険の加入期間が5年以上あることなどの条件を満たす必要があり、失業給付の基本手当と同等の金額が支給されます。企業側は教育訓練休暇制度を就業規則に明記するなどの準備が必要です。

雇用保険の適用拡大が企業に与える影響

2028年の雇用保険適用拡大は、企業経営や人事労務の実務に多大な影響を及ぼします。特に、パートタイム労働者やアルバイトを多く雇用している小売業や飲食業などでは、その影響が顕著に表れるでしょう。

単なる保険手続きの増加にとどまらず、コスト面や労務管理の手法そのものを見直す必要が生じます。企業はどのような課題が発生するのかを事前にシミュレーションしておくことが重要です。

雇用保険料の会社負担額が増加する

雇用保険の加入対象者が拡大することで、企業が負担すべき雇用保険料の総額は確実に増加します。これまで保険料が発生していなかった週10時間以上20時間未満の従業員についても、新たに労使双方で保険料を納める義務が生じるためです。

対象となる従業員数が多い企業ほど、人件費の増加による財務へのインパクトは大きくなります。早い段階で対象者数を把握し、将来のコスト増加分を予算に組み込んでおくことが求められます。

資格取得・喪失などの労務手続きが激増する

適用拡大に伴い、人事労務部門における雇用保険の資格取得や喪失に関する手続きの件数が大幅に増加します。特に、学生アルバイトや短時間パートの入れ替わりが激しい職場では、入退社のたびにハローワークへの届出が必要となります。

また、退職時には離職票の作成業務も発生するため、担当者の業務負荷はこれまで以上に重くなることが予想されます。手作業での対応には限界があるため、業務フローの抜本的な見直しが不可欠です。

労働時間の厳格な管理が求められる

加入条件が週10時間以上となることで、従業員一人ひとりの労働時間をより厳密に管理する必要性が高まります。シフトの変動や残業によって、意図せず週10時間の基準を超えてしまうケースが発生しやすくなるためです。

加入要件を満たしているにもかかわらず手続きを怠ると、法令違反となるリスクがあります。リアルタイムで労働時間を把握できる勤怠管理体制を構築することが急務となります。

雇用保険の適用拡大が労働者に与える影響

はた楽 雇用保険の適用拡大が労働者に与える影響

雇用保険の適用拡大は、企業だけでなく働く労働者自身にも直接的な影響をもたらします。新たに被保険者となることで得られるメリットがある一方で、毎月の給与明細に変化が生じる点には注意が必要です。

企業側は、労働者が抱く不安や疑問を解消するため、制度変更による影響を正しく伝える義務があります。メリットとデメリットの双方を包み隠さず説明することが、労使間のトラブルを防ぐ鍵となります。

保険料控除による手取り額の減少

新たに雇用保険に加入することになった労働者は、毎月の給与から雇用保険料(労働者負担分)が天引きされるようになります。そのため、これまでと同じ時間働いたとしても、保険料が控除される分だけ手取り額は減少してしまいます。

特に収入が少ない短時間労働者にとって、手取り額の減少は生活に直結する切実な問題です。手取りの減少を理由とした離職を防ぐため、事前の丁寧な説明が欠かせません。

失業手当や育児休業給付などのセーフティネット拡充

手取り額が減る一方で、労働者は雇用保険による手厚いセーフティネットの恩恵を受けられるようになります。万が一仕事を失った場合には失業給付(基本手当)を受給でき、安心して次の仕事を探すことが可能です。

また、育児休業給付金や介護休業給付金、教育訓練給付金などの対象にもなるため、ライフステージの変化にも柔軟に対応できるようになります。労働者にとって非常に大きな安心材料となる制度拡充と言えます。

  • 失業時の基本手当(失業保険)
  • 育児休業給付金・介護休業給付金
  • 教育訓練給付金・教育訓練休暇給付金

2028年の雇用保険法改正に向けて企業が行うべき対策

2028年10月の施行に向けて、企業は今から計画的に準備を進める必要があります。直前になって慌てることがないよう、自社の現状を分析し、必要な対策を順次実行していくことが求められます。

ここでは、企業が優先的に取り組むべき具体的な対策ステップを解説します。人事・労務部門だけでなく、経営層も巻き込んだ全社的な対応が成功のポイントです。

対象となる従業員の現状把握と保険料の試算

まずは、自社で週10時間以上20時間未満働いている従業員が何人いるのかを正確にリストアップすることから始めます。対象者の人数が把握できたら、新たに発生する雇用保険料の企業負担額を試算します。

この試算結果をもとに、今後の採用計画や人件費予算の見直しを行うことが重要です。複数の労働条件で働く従業員がいる場合は、漏れなくチェックするよう注意してください。

雇用契約書および就業規則の見直し

適用拡大に合わせて、短時間労働者の雇用契約書や労働条件通知書の記載内容を見直す必要があります。雇用保険の加入有無に関する項目を最新の基準に修正し、適切な契約管理を行える状態に整えます。

同時に、就業規則や育児・介護休業規程なども確認し、新たな給付金制度や加入条件に対応した内容へ改定します。法的なトラブルを防ぐためにも、専門家である社会保険労務士に相談することをおすすめします。

従業員への制度周知と丁寧な説明

新たに対象となる従業員に対しては、制度変更の趣旨や影響について個別に丁寧な説明を行うことが不可欠です。特に、手取り額が減少することへの懸念に対しては、失業給付や育児休業給付などのメリットを併せて伝えることが重要です。

説明会を開催したり、分かりやすい案内資料を配布したりして、従業員の理解と納得を得るよう努めましょう。働き控えによる人手不足を招かないよう、早めのコミュニケーションを心がけてください。

勤怠管理・給与計算システムのDX化による事務負担の軽減

手続きの増加や厳格な労働時間管理に対応するためには、アナログな業務フローからの脱却が急務です。クラウド型の勤怠管理システムや給与計算システムを導入し、人事労務業務のDX化を推進しましょう。

システムを活用することで、週10時間の基準超過を自動でアラート通知したり、保険料計算を正確に行ったりすることが可能になります。電子申請(e-Gov)との連携機能を持つシステムを選べば、ハローワークへの届出もスムーズになります。

助成金を活用した社内環境の整備

制度改正に伴うコスト増加やシステム導入の負担を軽減するため、国が提供する各種助成金の活用を検討しましょう。例えば、短時間労働者の処遇改善や正社員化に取り組む場合には、キャリアアップ助成金などが利用できる可能性があります。

また、業務効率化のためのITツール導入には、IT導入補助金などの支援策が役立ちます。自社の課題に合った助成金を見極め、要件を満たすよう計画的に申請準備を進めてください。

2028年の雇用保険の加入条件改正に向けて計画的な準備を

2028年の雇用保険適用拡大は、週10時間以上働く多くの労働者を対象とする大規模な制度改正です。企業にとっては保険料負担の増加や事務手続きの煩雑化といった課題が生じますが、労働者にとってはセーフティネットが拡充される重要な機会でもあります。

施行までにはまだ時間があるため、今から対象者の把握やシステムのDX化、就業規則の見直しなどを着実に進めておくことが大切です。従業員が安心して働ける環境を整え、企業の持続的な成長に繋げていきましょう

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