被扶養者認定の年間収入見直しを解説!150万円への緩和と残業代の扱い

佐藤東 監修者
社会保険労務士法人はた楽/株式会社はた楽
CEO / Founder
佐藤 東

大阪市立大学(現:大阪公立大学)法学部在学中に、社会保険労務士資格を取得。
株式会社新経営サービスにて、人事制度構築コンサルティングに従事。株式会社アントレプレナーファクトリー執行役員を経て、株式会社はた楽(人事コンサルティング&介護事業)、社会保険労務士法人はた楽を設立。労務DX&給与労務BPOを強みに、全国でサポートを展開中。

【2025・2026年改正】健康保険の被扶養者認定における年間収入の取り扱いが変わります

はた楽 被扶養者認定における年間収入の改正

健康保険の被扶養者認定における年間収入の取り扱いについて、2025年10月に重要な改正が施行され、さらに2026年4月にも改正が予定されています。この改正は、パートやアルバイトとして働く家族を持つ従業員にとって、働き方に直結する大きな変更です。

人事労務担当者は、制度の変更点を正しく理解し、適切な対応をとることが求められます。最新のルールを把握し、社内への周知や手続きの準備を進めましょう。

まずは基本をおさらい!現行の被扶養者認定における年間収入の要件

改正内容を確認する前に、現行の被扶養者認定における年間収入の要件をおさらいしましょう。原則として、被扶養者となるための年間収入の限度額は「130万円未満」(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)と定められています。

対象者年間収入の限度額
原則(60歳未満)130万円未満
60歳以上または障害者180万円未満

これまでの制度では、この年間収入の判定において、過去の収入実績や現時点の収入、さらには将来の収入見込みなどを総合的に判断していました。そのため、基本給だけでなく、残業代や交通費なども含めた実際の収入見込みをもとに審査されていました。

【2025年10月施行】19歳以上23歳未満の被扶養者は年間収入150万円未満に要件緩和

はた楽 19歳以上23歳未満の年間収入150万円緩和

2025年10月1日より、特定の年齢層に対する被扶養者認定の年間収入要件が緩和されました。具体的には、19歳以上23歳未満の被扶養者について、年間収入の上限が従来の「130万円未満」から「150万円未満」へと引き上げられています。

これにより、大学生世代の家族が扶養の範囲内でより多くの収入を得やすくなりました。この変更は、すでに扶養認定されている方にも適用されます。

年齢の判定方法と対象者の範囲

この要件緩和の対象となる年齢は、「扶養認定日が属する年の12月31日時点」の年齢で判定されます。つまり、その年の年末時点で19歳以上23歳未満であれば、年間収入150万円未満の基準が適用されます。

学生であるかどうかは問われず、就職活動中の方やパート・アルバイトとして働いている方も対象に含まれます。幅広い層がこの要件緩和の恩恵を受けることができます。

配偶者は対象外となる点に注意

年齢要件を満たしていても、被保険者の配偶者(事実上の婚姻関係にある場合を含む)については、この要件緩和の対象外となります。配偶者の場合は、引き続き従来の「年間収入130万円未満」という基準が適用されます。

そのため、手続きの際には対象者が配偶者に該当しないかどうかの確認が必要です。誤った基準で案内しないよう注意しましょう。

【2026年4月施行】年間収入は「労働契約」に基づき判定!残業代の扱いが変わる

はた楽 労働契約に基づく年間収入判定

2026年4月1日からは、給与収入のみの方を対象に、年間収入の判定方法が大きく変わります。最大のポイントは、年間収入の判定が実際の収入見込みではなく、「労働契約書(労働条件通知書)」に記載された内容に基づいて行われるようになる点です。

これにより、契約上の年収が基準額未満であれば、原則として扶養にとどまることが可能になります。実務においても、契約内容の確認がより重要視されることになります。

なぜ判定方法が見直されるのか?改正の背景

従来の制度では、残業代を含めた実際の収入見込みで判定されていたため、繁忙期にシフトを増やすと扶養から外れてしまう可能性がありました。そのため、扶養内に収めるためにあえて労働時間を抑える「働き控え(就業調整)」が発生していました。

深刻な人手不足が続く中、この働き控えを防ぎ、従業員が安心して働ける環境を整えることが今回の改正の主な目的です。企業にとっても労働力確保の観点からプラスに働く変更と言えます。

労働契約等に基づき年間収入の見込みを判断

新ルールでは、労働条件通知書や雇用契約書に定められた内容から、向こう1年間の年間収入見込み額を算出します。契約締結段階では予測が難しい残業代などは、原則として年間収入の算出には含めないことになりました。

区分対象となる賃金・収入
含まれるもの基本給、諸手当(通勤手当含む)、賞与、固定残業代
含まれないもの予測できない残業代、臨時的な収入

なお、所得税の計算では一定額まで非課税となる通勤手当も、社会保険の扶養認定では全額が収入に含まれる点には引き続き注意が必要です。固定残業代が規定されている場合は、固定的賃金として算定対象となります。

一時的な収入増で基準額を超えた場合の取り扱い

労働契約上の年間収入見込み額が基準額未満であれば、繁忙期の残業などで一時的に実際の収入が増加し、結果として基準額を超えてしまった場合でも、直ちに扶養から外れることはありません。その超過が「社会通念上妥当である範囲」にとどまる限り、被扶養者の資格は継続されます。

ただし、臨時収入が支給されることを前提として、契約書に賃金や労働時間を不当に低く記載していた場合などは認められません。実態に即した適正な労働契約を結ぶことが大前提となります。

人事労務担当者が押さえるべき実務対応のポイント

はた楽 人事労務担当者の実務対応ポイント

これらの改正に伴い、企業の人事労務担当者は実務フローの見直しを行う必要があります。特に2026年4月以降は、被扶養者認定の審査において、労働契約の内容がこれまで以上に重要視されることになります。

スムーズな手続きを行うために、社内の管理体制を整えておくことが求められます。具体的な対応ポイントを順番に確認していきましょう。

労働契約に関する書類の記載内容を再確認する

扶養認定の申請時には、労働条件通知書や雇用契約書など、労働契約の内容が確認できる書類の提出が求められます。そのため、基本給や諸手当、所定労働時間などが正確に記載されているか、改めて確認することが重要です。

契約内容を示す書類が提出できない場合は、従来どおり収入証明書等により年間収入を判定されることになります。従業員に対して、適切な労働条件通知書が交付されているかを点検しましょう。

給与収入以外の収入がある場合は従来通りの対応

今回の「労働契約に基づく判定」への変更は、あくまで「給与収入のみ」の方が対象です。事業収入、不動産収入、年金収入など、給与以外の収入がある方については、この改正の対象とはなりません。

給与以外の収入がある場合は、従来通りすべての収入を総合的に考慮して認定の可否を判定します。対象者には「給与収入のみである」旨の申立てを求めることで確認を行います。

従業員への丁寧な周知と説明が不可欠

制度の変更を従業員に正しく理解してもらうことが、働き控えの解消につながります。「19歳以上23歳未満の家族は150万円まで扶養に入れること」や、「契約上の年収が基準内であれば、一時的な残業代は判定に含まれないこと」などを社内で丁寧に周知しましょう。

新ルールのメリットや注意点を分かりやすく説明することで、従業員とその家族が安心して働けるようになります。社内報や説明会などを活用して、積極的な情報発信を心がけてください。

被扶養者の年間収入見直しに備え、企業の労務管理体制をアップデートしましょう

はた楽 労務管理体制のアップデート

2025年10月の要件緩和と、2026年4月の判定方法の変更は、従業員の家族の働き方に大きな影響を与えます。人事労務担当者は、最新の情報を常にキャッチアップし、労働条件通知書の適切な運用など必要な実務対応を進めていく必要があります。

制度改正を機に社内の労務管理体制をアップデートし、従業員が働きやすい環境づくりを推進していきましょう。正確な知識を持って対応することが、企業の継続した健やかな成長に寄与します。

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