50人未満もストレスチェック義務化!いつから?対応策と助成金を解説

佐藤東 監修者
社会保険労務士法人はた楽/株式会社はた楽
CEO / Founder
佐藤 東

大阪市立大学(現:大阪公立大学)法学部在学中に、社会保険労務士資格を取得。
株式会社新経営サービスにて、人事制度構築コンサルティングに従事。株式会社アントレプレナーファクトリー執行役員を経て、株式会社はた楽(人事コンサルティング&介護事業)、社会保険労務士法人はた楽を設立。労務DX&給与労務BPOを強みに、全国でサポートを展開中。

50人未満の事業場もストレスチェックが義務化へ!法改正のポイント

はた楽 50人未満もストレスチェック義務化

2025年5月に労働安全衛生法が改正され、従業員50人未満の事業場でもストレスチェックが義務化されることが決定しました。これまで50人未満の小規模事業場における実施は「努力義務」とされていましたが、今後は企業規模にかかわらず対応が求められます。

この法改正に伴い、厚生労働省は2026年2月25日に「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表しました。すべての企業が職場のメンタルヘルス対策を講じる必要があり、早めの情報収集と準備が重要になります。

ストレスチェック義務化はいつから?法改正のスケジュールと背景

ストレスチェックの義務化拡大は、メンタルヘルス不調による労災認定の増加が大きな要因となっています。また、小規模事業場における実施率の低さも課題として挙げられていました。

こうした背景から、企業規模による健康管理の格差をなくすため、全事業場への義務化へと踏み切る形になりました。具体的なスケジュールと現状の課題について詳しく見ていきましょう。

改正労働安全衛生法の施行スケジュール(最長2028年5月まで)

改正労働安全衛生法は2025年5月14日に公布され、ストレスチェックの義務化拡大が正式に決まりました。施行日は「公布後3年以内に政令で定める日」と規定されています。

そのため、遅くとも2028年5月までには全事業場での義務化がスタートする見通しです。2026年2月には厚労省から小規模事業場向けのマニュアルも公表されており、すでに各企業は準備期間に入っています。

義務化の背景:50人未満の事業場におけるメンタルヘルス対策の現状

近年、仕事の強いストレスを原因とする精神障害の労災請求件数や支給決定件数は、過去最多を更新し続けています。一方で、50人以上の事業場ではストレスチェックの実施率が約90%に達しているのに対し、50人未満の事業場では3割台にとどまっているのが現状です。

特に小規模な組織では、一人の休職や離職が事業継続に与える影響が極めて大きいという課題があります。このようなメンタルヘルス対策の遅れを是正し、すべての労働者が安心して働ける環境を整備することが今回の法改正の目的です。

ストレスチェック導入で企業が享受できる4つのメリット

はた楽 ストレスチェック導入4つのメリット

ストレスチェックの導入は、単なる法令対応にとどまらず、企業にとって多くのプラスの効果をもたらします。従業員の健康を守ることは、組織全体の生産性向上にも直結します。

ここでは、ストレスチェックを実施することで企業が得られる具体的なメリットを4つの視点から解説します。制度を有効活用して、より良い組織づくりに役立てましょう。

1. 従業員のメンタル不調を早期発見し休職・離職を防ぐ

ストレスチェックを実施することで、従業員自身が自分のストレス状態に気づき、早めにセルフケアを行うきっかけになります。また、高ストレスと判定された従業員を早期に発見し、医師の面接指導など適切なサポートへつなげることが可能です。

このように潜在的な不調を未然に防ぐアプローチにより、メンタルヘルス悪化による長期休職や離職のリスクを大幅に減らすことができます。結果として、貴重な人材の損失を防ぐことにつながります。

2. 客観的データで職場環境の課題を可視化・改善できる

個人の検査結果を部署やチームごとに集計する「集団分析」を行うことで、組織全体のストレス傾向を客観的なデータとして把握できます。業務量の多さや裁量権の有無、人間関係のサポート体制など、職場ごとの具体的な課題が明確になります。

課題が可視化されれば、業務分担の見直しやコミュニケーション施策の導入など的確な改善策を打つことができます。感覚ではなくデータに基づいた職場環境の改善が可能になる点が大きなメリットです。

3. 「健康経営」の実践で企業イメージと採用力を向上

従業員の心身の健康に配慮する「健康経営」の取り組みは、企業の社会的評価を高める重要な要素です。ストレスチェックを積極的に活用し、働きやすい環境を整備している姿勢は、社外への強力なアピール材料になります。

近年は求職者も企業選びの際に健康経営の取り組みを重視する傾向にあります。従業員を大切にする企業というイメージが定着することで、採用力の強化や優秀な人材の確保に大きく貢献します。

4. 労務DXで効率化し、より良い職場づくりへ

ストレスチェックを紙の調査票ではなく、Webやクラウドシステムを利用して実施することで、配布や回収、集計にかかる手間を大幅に削減できます。未受検者へのリマインドや労働基準監督署への報告書作成なども自動化できるため、管理業務が非常にスムーズになります。

このように労務DXを推進して事務作業を効率化することで、人事担当者は集団分析の活用や職場改善の企画など、より本質的な業務に時間を割けるようになります。結果として、組織全体の生産性向上につながります。

50人未満の企業向け|ストレスチェック実施5つのステップ

はた楽 ストレスチェック実施5つのステップ

初めてストレスチェックを導入する小規模事業場では、何から手をつければよいか迷うことも多いでしょう。法令に則り、スムーズに運用を開始するためには、計画的な手順を踏むことが大切です。

ここでは、50人未満の企業がストレスチェックを実施するための具体的な流れを5つのステップに分けて解説します。各段階でのポイントを押さえて準備を進めましょう。

ステップ1:方針決定と体制整備(外部委託の検討)

まずは衛生委員会やそれに準ずる労使の話し合いの場で、ストレスチェックの実施時期や使用する調査票、実施方法などの基本方針を審議して決定します。同時に、検査を実施・評価する「実施者(医師や保健師など)」や、事務作業をサポートする「実施事務従事者」を選任する必要があります。

50人未満の事業場では、産業医などの専門職が不在のケースが多く、社内リソースも限られています。そのため、従業員のプライバシー保護や業務負担軽減の観点から外部機関への委託が強く推奨されています。

ステップ2:従業員への説明とストレスチェックの実施

実施体制が整ったら、ストレスチェックの目的や個人情報の取り扱いルールについて、事前に対象となる従業員へ丁寧に説明を行います。従業員が安心して回答できる環境を作ることが、受検率を高めるための重要なポイントです。

実際の検査では、厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票(57項目など)」を用いるのが一般的です。Webシステムや紙のマークシートなど、自社に合った方法で調査票を配布し、回答を回収します。

ステップ3:結果の通知とプライバシー保護の徹底

回収した調査票のデータは実施者によって評価され、その結果は実施者から直接、従業員本人に通知されます。この際、個人のストレス状況などの結果データは要配慮個人情報として厳重に扱われます。

法律により、本人の同意がない限り、検査結果を会社側(人事担当者や上司など)に提供することは禁止されています。プライバシー保護を徹底し、情報漏洩が起きないよう管理体制を整えることが必須です。

ステップ4:高ストレス者への面接指導と事後措置

結果通知の際、高ストレスと判定された従業員に対しては、医師による面接指導を受けるよう勧奨を行います。対象者から面接指導の申し出があった場合、会社は速やかに医師による面談を実施する義務があります。

面接指導が行われた後は、医師から意見を聴取し、必要に応じて就業上の事後措置を講じなければなりません。具体的には、労働時間の短縮や深夜業の制限、就業場所の変更など、従業員の健康を守るための配慮が求められます。

ステップ5:集団分析と職場環境改善への活用(努力義務)

個人の結果を部署や職種などのグループ単位で集計し、組織のストレス傾向を把握する「集団分析」を行います。法律上、集団分析の実施は努力義務とされていますが、メンタルヘルス不調を未然に防ぐためには非常に重要なプロセスです。

分析結果をもとに、業務量の偏りやコミュニケーション不足などの課題を特定し、具体的な職場環境改善につなげます。なお、個人の特定を防ぐため、原則として10人未満の小さな集団での結果提供は行わないよう配慮が必要です。

義務化対応で注意すべき3つのポイントとリスク

はた楽 義務化対応で注意すべきポイントとリスク

ストレスチェックの義務化に向けて、企業は単に検査を実施するだけでなく、法令遵守やリスク管理の観点から気をつけるべき点があります。対応を誤ると、思わぬトラブルに発展する可能性もあります。

ここでは、制度運用において特に注意が必要な3つのポイントと、それに伴うリスクについて詳しく解説します。安全かつ適切な運用を目指しましょう。

罰則と「安全配慮義務違反」のリスク

ストレスチェックを実施しなかったこと自体に対する直接的な罰則規定はありませんが、労働基準監督署への実施報告を怠ったり虚偽の報告をした場合は、最大50万円の罰金が科される可能性があります。ただし、50人未満の事業場については当面の間、報告義務は免除される方針が示されています。

より深刻なのは、未実施のまま従業員がメンタルヘルス不調で倒れた場合のリスクです。企業は労働契約法に基づく「安全配慮義務」を負っており、適切な健康管理を怠ったとして安全配慮義務違反に問われ、損害賠償請求を受ける恐れがあります。

産業医がいない場合の面接指導(地域産業保健センターの活用)

50人未満の事業場では産業医の選任義務がないため、高ストレス者から面接指導の申し出があった際、どの医師に依頼すべきかが課題となります。自社で独自のツテがない場合、対応に困るケースも少なくありません。

このような小規模事業場を支援するため、独立行政法人労働者健康安全機構が運営する「地域産業保健センター(地域窓口)」が各地域に設置されています。事前の申し込みにより、医師による面接指導や健康相談などの産業保健サービスを無料で利用できるため、積極的に活用しましょう。

従業員が受検を拒否した場合の対応

50人未満の企業では、ストレスチェックの実施はこれまで努力義務でしたが法改正により義務化される一方、従業員個人には受検の義務はありません。そのため、会社側が受検を強制したり、受けないことを理由に罰則を設けたりすることは法令で禁止されています。

もし受検を拒否された場合は放置せず、制度の目的や、結果が会社に漏れず不利益な扱いを受けないことを丁寧に説明し、理解を求めることが大切です。安心して受検できる環境づくりや、社外の相談窓口を案内するなどの配慮を行いましょう。

コストを抑える助成金と外部サービスの選び方

ストレスチェックの導入には、システムの利用料や専門家への委託費用など、一定のコストがかかります。特に小規模事業場にとっては、費用負担をいかに抑えるかが重要な課題となります。

ここでは、費用負担を軽減するために活用できる公的な助成金制度と、失敗しない外部委託サービスの選び方について解説します。自社に合った最適な方法を見つけましょう。

活用できる助成金:「団体経由産業保健活動推進助成金」

以前は小規模事業場向けに「ストレスチェック助成金」という制度がありましたが、2022年度末をもって廃止されました。現在、50人未満の事業場がストレスチェック関連で利用できる主な支援制度は「団体経由産業保健活動推進助成金」です。

この制度は、事業主団体や労災保険の特別加入団体が、傘下の中小企業に対して産業保健サービスを提供する際の費用を助成するものです。個別企業が直接申請する仕組みではない点に注意が必要です。

助成金の対象活動と申請のポイント

「団体経由産業保健活動推進助成金」では、ストレスチェックの実施や集団分析、医師による面接指導、職場環境改善支援などにかかる費用が助成の対象となります。助成率は対象費用の90%で、上限額は原則500万円(一定の要件を満たす団体は1000万円)と手厚い内容になっています。

申請にあたっては、所属している事業主団体等がこの助成金を活用して事業を行っているかを確認する必要があります。団体を通じて実施計画書を作成し、承認を得てからサービスを実施するという流れになります。

外部委託サービスを選ぶ3つの比較ポイント

外部委託先を選ぶ際は、単に価格だけでなく、安全かつ効果的に運用できるかを見極める必要があります。以下の3つのポイントを基準に比較検討しましょう。

  • セキュリティ体制:プライバシーマーク(Pマーク)を取得しているなど、要配慮個人情報の保護体制が万全であるか。
  • サポート体制:高ストレス者への面接指導の案内や産業医の紹介、質の高い集団分析の提案など、実施後のフォローが手厚いか。
  • 受検のしやすさとシステム:Webやスマートフォンでの受検に対応しており、人事担当者の管理手間を省けるシステムが整っているか。

これらの条件を満たすサービスを選ぶことで、法令を遵守しつつ、担当者の負担を最小限に抑えた運用が可能になります。

50人未満のストレスチェック義務化に関するQ&A

ストレスチェックの義務化に向けて、対象者の範囲や実施後の対応など、実務に関する疑問を持つ担当者の方も多いでしょう。法令のルールを正しく理解しておくことが重要です。

ここでは、50人未満の事業場からよく寄せられるストレスチェックに関する代表的な質問にお答えします。自社の状況と照らし合わせて確認してください。

Q. 派遣社員やパート・アルバイトも対象ですか?

パートやアルバイトであっても、「契約期間が1年以上(更新見込みを含む)」かつ「週の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上」という条件を満たす場合は、ストレスチェックの対象者となります。正社員だけでなく、一定の基準を満たす非正規雇用の従業員も含まれる点に注意が必要です。

また、派遣社員については、法的な実施義務は雇用関係にある「派遣元(派遣会社)」にあります。ただし、正確な集団分析を行い職場環境を改善する観点から、派遣先企業が自社の従業員と一緒に実施することも推奨されています。

Q. 高ストレス者が出た場合、会社の対応義務は?

ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された従業員から申し出があった場合、50人未満の事業場では現在、医師による面接指導の実施は努力義務ですが、法改正により遅くとも2028年5月までに義務化される予定です。申し出を放置することは安全配慮義務違反につながる恐れがあります。

面接指導を実施した後は、医師から意見を聴取し、その結果を踏まえて就業場所の変更や労働時間の短縮など、適切な事後措置を講じなければなりません。従業員の健康を守るための具体的な対応が求められます。

Q. 集団分析は実施しなくても罰則はありませんか?

集団分析の実施は法律上「努力義務」と位置づけられているため、実施しなかったとしても直接的な罰則が科されることはありません。しかし、個人の結果を通知するだけでは、根本的なストレス要因の解決にはつながりにくいのが実情です。

メンタルヘルス不調を未然に防ぎ、働きやすい職場を作るという制度本来の目的を達成するためには、集団分析を行って組織の課題を把握し、職場環境の改善に活かすことが強く推奨されています。

義務化を企業の成長機会に!計画的な準備で健やかな職場環境を実現しよう

はた楽 義務化を企業の成長機会に

50人未満の事業場におけるストレスチェックの義務化は、最長でも2028年5月までに施行されます。直前になって慌てないよう、今から外部委託先の選定や社内体制の整備など、計画的に準備を進めることが大切です。

この法改正を単なる義務や負担と捉えるのではなく、従業員の健康を守り、組織の生産性を高める「健康経営」推進のチャンスとして活用しましょう。健やかな職場環境の実現は、企業の持続的な成長と採用力の強化に必ずつながります。

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