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食事補助の非課税枠が7,500円へ!42年ぶり改正がもたらす「第3の賃上げ」効果とは

2025年12月に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」において、企業が従業員に提供する食事補助の非課税限度額が大幅に引き上げられることが明記されました。これまで月額3,500円だった上限が、月額7,500円へと倍増する見込みです。この改正は1984年以来、実に42年ぶりの歴史的な見直しとなります。
物価高騰が続く中、基本給のベースアップだけでなく、福利厚生を通じた従業員への還元が注目を集めています。非課税枠の拡大を活用した食事補助は、税金や社会保険料の負担を増やさずに従業員の実質的な手取りを増やせるため、「第3の賃上げ」として多くの企業から期待が寄せられています。
令和8年度税制改正のポイント:食事補助の非課税枠はどう変わるか
今回の税制改正では、食事補助に関する非課税の基準が大きく緩和されます。企業の人事労務担当者が押さえておくべき具体的な変更点について、詳しく解説します。
月額3,500円から7,500円へ2倍以上に引き上げ
最も大きな変更点は、企業が負担する食事補助の非課税限度額の引き上げです。現行制度では月額3,500円(税抜)が上限でしたが、改正後は月額7,500円(税抜)まで拡大されます。これにより、企業はより手厚い食事サポートを非課税で提供できるようになります。
| 項目 | 現行制度 | 改正後 |
|---|---|---|
| 非課税限度額(月額) | 3,500円(税抜) | 7,500円(税抜) |
| 1日あたりの目安 | 約175円 | 約375円 |
深夜勤務者の夜食代の非課税枠も拡大
通常の食事補助は現物支給が原則ですが、深夜勤務者に夜食を現物で支給できない場合に限り、現金支給が認められています。この深夜勤務者の夜食代に関する非課税枠も、今回の改正で引き上げの対象となりました。現行の1回あたり300円(税抜)以下から、1回あたり650円(税抜)以下へと拡充されます。
医療、介護、物流、警備など、夜勤が多い業種においては、実務上の影響が非常に大きい改正です。夜間勤務者の福利厚生改善に直結するため、該当する企業は制度の見直しが急務となります。
改正の適用は2026年度(令和8年度)からの見込み
この税制改正は、今後国会で可決・成立すれば、2026年(令和8年)4月1日以後に支給される給与から適用される見込みです。企業は4月以降の運用に向けて、社内規程の改訂や給与計算システムの設定変更など、事前の準備を進める必要があります。
42年間据え置きだった非課税枠、改正の背景にある物価高騰と賃上げ機運
月額3,500円という現行の非課税枠は、1984年(昭和59年)に設定された基準です。当時は妥当な金額でしたが、近年の急激な物価高騰や外食・中食価格の上昇により、1日あたり約175円の補助ではランチ代の支援として実態にそぐわなくなっていました。経済界からも、制度の実効性を高めるための見直しを求める声が強く上がっていました。
また、政府が推進する賃上げ政策の一環としても位置づけられています。基本給の引き上げだけでなく、福利厚生を通じた従業員の生活支援を後押しすることで、実質的な手取りアップを実現し、経済の好循環を生み出す狙いがあります。
【人事労務担当者必見】食事補助を非課税で運用するための3つの必須要件

食事補助を福利厚生費として非課税で処理するためには、国税庁が定める厳格な要件をクリアする必要があります。要件を満たさない場合、補助額全額が給与として課税されてしまうため、人事労務担当者は以下の3つのポイントを正確に理解しておかなければなりません。
要件1:従業員が食事価額の50%以上を負担すること
非課税となるための第一の要件は、従業員が食事代(食事の価額)の半分以上を負担していることです。企業が食事代の全額を負担して無料で提供した場合、その全額が給与課税の対象となります。例えば、1食600円の弁当を提供する場合、従業員は300円以上を負担しなければなりません。
要件2:企業の月額負担が7,500円(税抜)以下であること
第二の要件は、企業が負担する金額(食事の価額から従業員の負担額を引いた金額)が、従業員1人あたり月額7,500円(税抜)以下であることです。この上限額が、今回の改正で3,500円から7,500円へと引き上げられます。もし企業負担額が上限を超えた場合、超過分だけでなく企業が負担した全額が課税対象となるため注意が必要です。
要件3:全従業員が公平に対象であること
第三の要件は、福利厚生の原則として、すべての従業員に対して公平に制度が適用されることです。役員のみ、あるいは特定の部署の従業員のみを対象とした食事補助は、福利厚生費として認められず、給与として課税されます。また、原則として現金支給ではなく、弁当の現物支給や提携店で使える食事チケットなど「現物支給」の形をとる必要があります。
非課税枠の拡大がもたらす企業と従業員双方のメリット

食事補助の非課税枠が7,500円に拡大することは、企業と従業員の双方に大きなメリットをもたらします。単なるコスト増ではなく、戦略的な投資として捉えることが重要です。
【企業側】採用力強化・人材定着と社会保険料負担の軽減
企業側のメリットとして、充実した食事補助は求職者への強力なアピールポイントとなり、採用力の強化や既存社員の離職防止に貢献します。また、健康的な食事をサポートすることで、健康経営の推進にもつながります。
さらに財務的なメリットも見逃せません。基本給を月額7,500円引き上げた場合、企業が負担する社会保険料も増加します。しかし、非課税の食事補助として支給すれば社会保険料の算定基礎に含まれないため、法定福利費の増加を抑えつつ従業員に還元することが可能です。
【従業員側】所得税などの負担なき「実質的な手取りアップ」
従業員側の最大のメリットは、税金や社会保険料を引かれることなく、補助額をそのまま生活費の足しにできる点です。給与として7,500円を受け取った場合、所得税や住民税、社会保険料が引かれるため、実際の手取り額は目減りしてしまいます。
非課税の食事補助であれば、額面通りの価値を享受できるため、物価高で家計が圧迫される中、非常に満足度の高い福利厚生となります。
改正に向け企業が今すぐ準備すべきこと|人事労務DXの視点から

2026年4月の適用開始に向けて、企業は計画的に準備を進める必要があります。人事労務DXの観点を取り入れ、効率的かつ確実に対応するための4つのステップを解説します。
Step1:現行制度の利用状況の把握と従業員ニーズの再確認
まずは、現在導入している食事補助制度の利用率や、従業員の負担額・企業負担額の実績をデータで把握します。同時に、リモートワークの普及など多様化する働き方に合わせて、従業員がどのような食事サポートを求めているのか、アンケート等でニーズを再確認することが重要です。
Step2:改正後のコストと効果のシミュレーション
非課税枠の上限を7,500円まで引き上げた場合、企業負担がどれくらい増加するのかをシミュレーションします。単なるコスト増として捉えるのではなく、給与引き上げと比較した場合の社会保険料の削減効果や、採用・定着率向上による採用コストの削減効果なども含めて、総合的な費用対効果を検証します。
Step3:就業規則・福利厚生規程の見直しと変更手続き
制度の変更内容が固まったら、就業規則や福利厚生規程の改訂を行います。規程には、食事補助の目的、対象者、会社負担の上限額(月額7,500円)、従業員の自己負担割合(50%以上)などを明確に記載する必要があります。また、深夜勤務者の夜食代に関する規定がある場合は、上限額を650円に変更します。
Step4:給与計算システムの設定変更と福利厚生DXの推進
最後に、給与計算システムにおいて、非課税限度額のマスター設定を3,500円から7,500円に変更します。また、食事補助の運用管理が手作業になっている場合は、この機に外部の食事補助サービスや福利厚生管理システムを導入し、業務のDX化を推進することをおすすめします。
多様化する働き方に合わせた食事補助サービスの種類と選び方
食事補助を非課税で提供するためには、原則として「現物支給」の要件を満たす必要があります。自社の働き方や従業員のニーズに合ったサービスを選ぶことが、制度を成功させる鍵となります。
社員食堂・仕出し弁当
社内に食堂を設置したり、指定の業者から弁当を配達してもらったりする、最も伝統的な方法です。栄養バランスの取れた食事を提供しやすく、社内コミュニケーションの活性化にもつながります。一方で、導入コストや固定費がかかる点や、リモートワークの従業員が利用できない点が課題となります。
食事チケット・ICカード型サービス
提携している全国の飲食店やコンビニエンスストアで、食事代の決済に利用できる専用の電子カードやチケットを配布するサービスです。従業員が好きな場所・タイミングで利用できるため、外回りが多い営業職やリモートワークの従業員にも公平に提供できるのが最大のメリットです。管理側の精算業務もシステム化されており、導入企業が増加しています。
設置型社食サービス
オフィス内に専用の冷蔵庫や冷凍庫を設置し、惣菜や弁当を常備するサービスです。従業員は好きな時に安価で購入でき、企業側は初期費用を抑えて手軽に導入できます。24時間利用可能なサービスも多く、夜間勤務やシフト制の職場でも活用しやすいのが特徴です。
食事補助の非課税枠改正を追い風に、企業の健やかな成長を実現する

42年ぶりとなる食事補助の非課税枠拡大は、企業にとって従業員のエンゲージメントを高める絶好の機会です。月額7,500円という新しい基準を最大限に活用することで、税負担を抑えながら実質的な賃上げを実現し、人材の確保と定着を図ることができます。
制度の導入や見直しにあたっては、非課税要件を正確に遵守するとともに、自社の働き方に適した運用方法を選択することが重要です。人事労務DXを推進し、管理部門の負担を軽減しながら、すべての従業員が健やかに働ける環境づくりを進めていきましょう。









