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2026年10月施行!カスハラ・就活セクハラ対策義務化の概要

2025年6月に労働施策総合推進法等の一部を改正する法律が成立し、2026年10月1日から施行される予定です。これにより、企業にはカスタマーハラスメント(カスハラ)および就活セクハラを防止するための措置が義務付けられます。
これまではパワハラや社内でのセクハラ対策が中心でしたが、今後は社外からの不当な要求や、求職者に対するハラスメントへの対応も必須となります。企業規模を問わず全ての事業主が対象となるため、早急な準備が求められています。
なぜ今、ハラスメント対策の義務化が求められるのか
厚生労働省の調査によると、過去3年間に顧客等からの著しい迷惑行為の相談があった企業の割合は19.5%に上ります。また、実際に被害を経験した労働者も15.0%存在しており、カスハラは深刻な社会問題となっています。
出典: 厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和2年度)
カスハラは労働者に過度な精神的ストレスを与え、仕事への意欲減退や休職、さらには離職につながる恐れがあります。企業にとっても生産性の低下や多大な経済的損失を招くため、国を挙げての対策が急務とされました。
一方、就活セクハラについても、就職活動中やインターンシップ中の学生の約4人に1人が被害を経験しているというデータがあります。立場の弱い学生を守り、公正な採用活動を行うための法整備が強く求められていた背景があります。
「カスハラ」「就活セクハラ」の定義と事業主が講ずべき措置
法律に基づく指針では、カスハラと就活セクハラの定義が明確に定められています。企業はこれらの定義を正しく理解し、適切な対策を講じる必要があります。
| カスハラの定義 | 顧客等の言動で社会通念上許容される範囲を超え就業環境を害するもの |
|---|---|
| 就活セクハラの定義 | 労働者の性的な言動により求職者等の求職活動が阻害されるもの |
| 講ずべき措置 | 方針の明確化、相談体制の整備、事後の迅速な対応など |
カスハラについては、顧客からの正当なクレームと不当な要求を区別する基準を設けることが重要です。事業主はこれらのハラスメントを防ぐための雇用管理上の措置を講じることが法的に義務付けられます。
企業が取り組むべきハラスメント防止措置の3つのポイント

2026年10月の施行に向けて、企業は具体的なハラスメント防止措置を計画し、実行に移す必要があります。厚生労働省の指針案では、事業主が講ずべき措置として大きく5つの柱が示されています。ここでは実務上特に重要な3つのポイントに整理して解説します。
これらの措置は、単にルールを作るだけでなく、実際に機能する体制を構築することが求められます。現場の従業員が安心して働ける環境を整えるための具体的なポイントを順番に見ていきましょう。
1. 方針の明確化と就業規則への規定、全従業員への周知・啓発
まず企業は、カスハラや就活セクハラに対して毅然とした態度で対応し、労働者を保護するという基本方針を明確にする必要があります。そして、ハラスメントの内容や対処方針を就業規則などの服務規律を定めた文書に規定します。
定めた方針やルールは、管理監督者を含む全従業員に対して、社内報や研修などを通じて周知・啓発することが求められます。顧客に対してもハラスメントを許容しない姿勢を明確に伝える仕組みづくりが重要です。
2. 相談窓口の設置とプライバシー保護の徹底
従業員や求職者がハラスメントを受けた際に、安心して相談できる窓口をあらかじめ定め、広く周知する必要があります。相談窓口の担当者が適切に対応できるよう、マニュアルの整備や担当者への研修を実施しましょう。
また、相談者や行為者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨を周知することも義務付けられています。相談したことを理由とする解雇などの不利益な取扱いを禁止する規定も必ず設けてください。
3. 事後の迅速かつ適切な対応と再発防止策
ハラスメント事案が発生した際は、被害者や関係者から情報を集め、事実関係を迅速かつ正確に確認することが求められます。事実確認後は、速やかに被害者のメンタルヘルスケアなど配慮のための措置を適正に行います。
悪質なカスハラに対しては、あらかじめ定めた方針に基づき、複数名や組織全体で毅然と対応し、必要に応じて警察や弁護士等との連携も検討します。同様の問題を防ぐために対応マニュアルを定期的に見直すなど、再発防止に向けた措置を講じることが重要です。
人事労務DXで推進する効率的なハラスメント対策

企業におけるハラスメント対策は、人事労務DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用することで、業務効率化と高度化を同時に実現できます。デジタル技術やデータを活用することで、表面化しにくいハラスメントの早期発見が可能になります。
また、全従業員への均質な教育や、複雑化する規定の管理・周知もスムーズに行えるようになります。最新のシステムを導入して対策の実効性を高める具体的なアプローチを紹介します。
オンライン相談窓口とデータ活用による傾向分析
匿名性が高く、24時間いつでも相談できるオンライン相談窓口やAIを活用した相談システムを導入することで、従業員が心理的ハードルを感じずに声を上げやすくなります。これにより、潜在的なハラスメントのリスクを早期に把握できます。
相談窓口に寄せられたデータやアンケート調査の結果を集計・分析することで、部署別や役職別などの傾向を可視化できます。データを活用した傾向分析により先手を打った組織改善につなげることが可能になります。
eラーニングによる効果的な研修と意識浸透
ハラスメント対策で最も重要な従業員教育において、eラーニングを活用することで、全従業員に対して均質かつ効率的な研修を実施できます。従業員は自身の都合の良いタイミングで、PCやスマートフォンから受講できるため非常に便利です。
多拠点展開している企業やリモートワーク環境でも受講率を高めやすく、管理職向けなど階層別のカリキュラム設定も容易です。継続的な学習を通じて組織全体へのコンプライアンス意識の浸透を図ることができます。
規定管理システムで就業規則の整備・周知を効率化
カスハラや就活セクハラ対策の義務化に伴い、就業規則や各種規程の改定が必要となりますが、規程管理システムを導入することで作成や編集業務を大幅に効率化できます。テンプレートの活用や新旧対照表の自動作成機能が非常に役立ちます。
変更履歴の管理機能により、法改正に合わせた迅速な規程のアップデートが可能になります。クラウド上で最新の規程を一元管理し従業員へ効率的に周知することで、労働基準法等で求められる義務を確実に果たすことができます。
ハラスメント防止措置の義務化を組織成長の機会に

ハラスメント対策は、単なる法令遵守やリスク回避の手段にとどまらず、従業員の離職防止や生産性向上といった経営課題に直結します。企業がハラスメントを許さないという毅然とした姿勢を示すことが、組織の基盤を強くします。
従業員が安心して働ける心理的安全性の高い職場環境を整えることで、会社への貢献意欲であるエンゲージメントが高まります。働きやすい環境は優秀な人材の定着や獲得に有利に働き、結果として企業の競争力強化や持続的な組織成長につながるのです。









