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就活セクハラ防止措置が2026年10月より義務化。制度の概要とは
2026年10月1日より、改正男女雇用機会均等法が施行され、求職者等に対するセクシュアルハラスメント(就活セクハラ)の防止措置が事業主に義務付けられました。
これまで社内の従業員向けに求められていたハラスメント対策が、社外の求職者や学生にまで拡大されることになります。
この法改正は、同日に施行されたカスタマーハラスメント(カスハラ)対策の義務化とセットで行われたものです。採用活動に関わるすべての企業にとって、新たな実務対応が急務となっています。
改正男女雇用機会均等法の背景と目的
就活セクハラ対策が義務化された背景には、採用現場におけるハラスメント被害の深刻な実態があります。厚生労働省の調査によると、就職活動中にセクハラを受けたと回答した学生は約3割にのぼることが明らかになっています。
一方で、過去3年間に企業側が就活セクハラの相談を受けた割合はわずか0.7%にとどまっており、被害の声が企業に届いていないという課題がありました。
このようなギャップを埋め、立場の弱い求職者を保護することが今回の法改正の大きな目的です。
保護対象となる「求職者等」の広い範囲
今回の義務化で見落としがちなのが、保護対象となる「求職者等」の範囲の広さです。単に採用面接に応募してきた候補者だけが対象になるわけではありません。
具体的には、以下のような活動に参加する人々も広く保護の対象に含まれます。対面での接触だけでなく、SNSなどオンライン上でのやり取りも対象となる点に注意が必要です。
- 採用面接や就職説明会の参加者
- インターンシップの参加者
- 教育実習や看護実習などの実習生
- OB・OG訪問を行う学生
企業規模を問わず全事業主が対象
就活セクハラの防止措置義務は、従業員を雇用して採用活動を行うすべての事業主が対象となります。大企業だけでなく、中小企業に対する猶予期間も設けられていません。
「うちは規模が小さいから関係ない」という認識は通用せず、2026年10月1日の施行にともない、対応が義務化されました。限られた人員で採用を行うスタートアップやベンチャー企業であっても、体制整備は必須です。
企業に義務付けられる4つの防止措置

改正法に基づき、厚生労働省の指針では企業が講ずべき具体的な措置が定められています。これらは、すでに社内向けに義務付けられている職場のセクハラ防止措置と同じ枠組みで構成されています。
大きく分けて4つの柱となる防止措置があり、企業はこれらを漏れなく実施しなければなりません。それぞれの具体的な内容について詳しく見ていきましょう。
事業主の方針の明確化および周知・啓発
まず企業は、「求職者等に対するセクハラを行ってはならない」「行為者には厳正に対処する」という方針を明確に打ち出す必要があります。
この方針は経営層が決定し、社内外に発信することが求められます。
具体的には、就業規則やハラスメント防止規程に明記した上で、社内報や研修を通じて全従業員に周知・啓発を行います。また、採用サイトやパンフレットなどを通じて、求職者側にも企業の方針を伝えることが重要です。
求職者からの相談体制の整備
求職者等がセクハラ被害に遭った際、安心して相談できる窓口を設置し、適切に対応できる体制を整えることが義務付けられます。既存の従業員向けハラスメント相談窓口の対象範囲を、社外の求職者等にまで広げる対応が一般的です。
窓口を設置するだけでなく、その存在を採用サイトや説明会資料などで求職者に知らせることが不可欠です。相談窓口の担当者が、内容を決めつけずに適切に聞き取りを行えるよう、対応マニュアルの整備も求められます。
事案発生時の迅速かつ適切な事後対応
万が一、就活セクハラの相談が寄せられた場合には、迅速かつ正確に事実関係を確認するフローをあらかじめ決めておく必要があります。
事実が確認できた場合は、被害者への配慮のための措置と、行為者に対する懲戒処分などの厳正な対処を行います。
さらに、事案の解決だけで終わらせず、再発防止に向けた具体的な取り組みを実施することまでが義務に含まれます。初動対応の遅れはトラブルの拡大を招くため、緊急時の連絡網や対応手順を明確にしておくことが重要です。
プライバシー保護と不利益取扱いの禁止
相談者や行為者、事実確認に協力した第三者のプライバシーを保護するために、必要な措置を講じることが求められます。相談窓口の担当者には守秘義務を徹底し、情報管理のルールを定めて周知する必要があります。
また、相談したことや事実確認に協力したことを理由とする不利益な取扱いは固く禁止されています。採用選考において不利な評価を下したり、内定を取り消したりするような行為は絶対に行ってはなりません。
違反時のリスクと企業に与える影響

就活セクハラの防止措置を怠った場合、企業はさまざまなリスクを抱えることになります。直接的な刑事罰は設けられていないものの、経営に与えるダメージは決して小さくありません。
法的なペナルティだけでなく、社会的な信用の失墜や採用活動への悪影響など、多角的な視点でリスクを認識しておく必要があります。具体的な影響について確認しておきましょう。
厚生労働省による是正勧告と企業名公表制度
防止措置の義務に違反していると判断された場合、都道府県労働局から行政指導(助言、指導、勧告)を受ける可能性があります。
指導を受けても改善が見られない悪質なケースでは、厚生労働大臣による是正勧告が行われます。
この是正勧告にも従わない場合、最終的には企業名が公表される制度が設けられています。企業名が公表されれば「ブラック企業」としてのレッテルを貼られ、社会的な信頼を大きく損なうことになります。
SNSでの炎上や採用ブランドの低下リスク
現代の就職活動において、企業が最も警戒すべきリスクの一つがSNSを通じた情報の拡散です。
就活セクハラの被害を受けた求職者が、その事実をSNSや口コミサイトに書き込むことで、一気に炎上する危険性があります。
一度炎上してしまうと、採用ブランドは致命的な打撃を受け、優秀な人材の確保が極めて困難になります。さらに、被害者から民事上の損害賠償を請求されるリスクもあり、企業防衛の観点からも徹底した対策が不可欠です。
人事担当者が今すぐ着手すべき実務対応ステップ
2026年10月の義務化にともない、人事・採用担当者は速やかな体制整備・運用の見直しが求められます。違反リスクを防ぎ適切に運用できるよう、早急に実務対応を進めましょう。
ここでは、企業が優先して取り組むべき4つの実務対応ステップを解説します。自社の現状と照らし合わせながら、不足している部分を補強していきましょう。
就業規則とハラスメント防止規程の改定
まずは、社内のルールブックである就業規則やハラスメント防止規程を見直すことから始めます。
既存のセクハラ防止に関する条文を確認し、保護の対象に「求職者等」が含まれるように改定を行います。
同時に、就活セクハラを行った従業員に対する懲戒処分の根拠となる規定も整備しておく必要があります。規程を改定した後は、社内イントラネットや掲示板などを活用して、全従業員へ確実に周知することが重要です。
採用面談ルールの策定
就活セクハラは、密室や1対1の状況で発生しやすい傾向があるため、採用活動における具体的なルールを策定することが効果的です。
面談を実施する時間帯や場所をあらかじめ指定し、原則としてオープンな環境で行うなどの基準を設けます。
また、求職者との連絡手段についても、個人のSNSアカウントでのやり取りを禁止し、会社が把握できる公式ツールに限定するといったルール化が必要です。OB・OG訪問についても、会社の業務として公式に管理する仕組みを整えましょう。
相談窓口のDX化と外部連携の活用
求職者が心理的なハードルを感じずに相談できるよう、窓口の利便性を高める工夫が求められます。Webフォームや専用のチャットツールを導入するなど、相談窓口のDX化を進めることで、迅速な情報収集が可能になります。
社内の担当者だけでは対応が難しいケースに備えて、弁護士や社会保険労務士などの外部専門家と連携する体制を構築するのも一つの方法です。外部の相談窓口サービスを活用することで、より客観的かつ専門的な対応が期待できます。
採用担当者および全従業員への研修実施
制度やルールを整えるだけでなく、現場で働く従業員の意識をアップデートするための教育が不可欠です。
全従業員を対象としたハラスメント研修の中に、就活セクハラに関する内容を盛り込んで実施します。
特に、面接官を務める採用担当者や、リクルーター、インターンシップの受け入れ部署の社員に対しては、より実践的な個別研修を行うことが推奨されます。無自覚な言動がハラスメントに該当するリスクを、具体的な事例を交えて伝えることが重要です。
就活セクハラ義務化への適切な対応で健全な採用活動を
就活セクハラの防止措置義務化は、企業にとって採用活動のあり方を根本から見直す契機となります。義務化がスタートした今、あらためて社内体制の点検と見直しを行うことが、企業のリスクマネジメントにおいて極めて重要です。
適切なハラスメント対策を講じることは、単なる法令遵守にとどまらず、求職者から選ばれる魅力的な企業ブランドの構築に直結します。すべての求職者が安心して就職活動に取り組める健全な環境を提供し、企業の持続的な成長へと繋げていきましょう。









