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労働保険の年度更新とは?年度更新の手続きの流れをわかりやすく紹介

労働保険の年度更新について知りたいと悩んでいませんか?

この記事では「労働保険の年度更新とは?」について紹介していきます。

結論、労働保険は前年度の確定保険料と今年度の概算保険料を申告する年度更新の手続きが必要になります。

他にも「労働保険の年度更新の手続きの流れ」や「労働保険の年度更新の注意点」についても解説します。

また「就業規則とは?」について知りたい方については、こちらにて解説を行っております。

目次

そもそも労働保険とは?

労働保険は、労災保険と雇用保険を併せた保険の総称を指し、労働者の保護を目的にしています。

以下にて、労災保険と雇用保険について紹介していきます。

労災保険

労災保険とは、労働者が業務中や通勤時に病気や事故によって負傷などをしてしまった際に、一定の給付を行う保険を指します。

被災労働者や遺族を保護する目的も含まれています。

具体的に労災保険の給付内容については、以下が挙げられます。

労災保険の種類内容
休業給付労働災害が原因によって、療養のため休業して賃金を受けられなくなった際には、休業4日目から休業1日につき、給付基礎日額の60%相当額の支給を受けられます。また、給付基礎日額の20%が特別支給金として支給されるので、実質80%の収入を受け取ることが可能です。
障害給付労働災害によって、後遺症が生じた場合に、障害等級に応じて一時金の支給または年金を受けられる制度を指します。障害等級が1〜7級は障害年金としての年金支給、8〜14級は障害一時金として支給を受け取れます。
療養給付労働災害によって傷病を負った際に、原則として病院で自己負担なく治療を全て受けられる制度です。治療費の他にも、入院費用や看護料なども含まれます。
遺族給付労働災害によって労働者が亡くなってしまった場合に、遺族に対して遺族年金が支給されます。
傷病給付労働災害によって傷病を負ってしまい、療養を開始して1年6ヶ月経過しても治療完了しない場合には、傷病年金が支給されます。
介護給付障害年金受給権や傷病年金を有している労働者が、介護を受けている場合には、介護給付が支給されます。

上記のように、幅広い保証内容があり、労働者や遺族の生活を守るための社会保険の一つです。

雇用保険

雇用保険は、会社都合で雇用の継続ができなくなったり、労働者が失業したりした際に、労働者の雇用や生活の安定化を目的にしている保険です。

具体的に雇用保険の給付内容については、以下が挙げられます。

雇用保険の種類内容
基本手当失業保険とも呼ばれており、失業してしまった労働者が、新しい職場を探し、1日でも早く再就職する目的で支給を行います。支給を受けられる日数は、離職理由や雇用保険の被保険者だった期間などによって異なります。
就職促進給付なるべく早く再就職してもらうことを目的としている給付金をさします。定められている条件を満たすと再就職手当や就業手当、職業促進定着手当などの支給も受けられます。
教育訓練給付再就職に向けて資格を取得する際に、教育訓練受講に支払った費用の一部が支給される制度を指します。
雇用継続給付雇用が継続できない理由がある際に、所得が補償される制度を指します。育児休業給付や介護休業給付、高年齢雇用継続給付などが挙げられます。

このように、失業してしまった方でも、再就職のハードルが下がるメリットが挙げられます。

労働保険の年度更新とは?

労働保険料には、毎年4月1日から翌年3月31日までを1年間として計算を行い、毎年労働保険年度更新を行う費用があります。

労働保険に加入した年は、加入時に労働保険料を納付しますが、翌年度以降は毎年申告や納付を行う必要があります。

しかし、賃金総額によって労働保険料は異なるため、年度末にならないと金額が確定しません。
そのため納付する保険料はあくまで概算の金額になるので注意が必要です。

このように、労働保険の年度更新とは、今年度の概算保険料を納付するための手続きのことをさします。

労働保険の年度更新手続きの流れ

具体的に労働保険の年度更新手続きの流れについては、以下が挙げられます。

  1. 申告関係書類の確認
  2. 賃金集計表を作成する
  3. 申告書の記入
  4. 申告書の提出
  5. 保険料の納付

それぞれの項目について紹介していきます。

1.申告関係書類の確認

毎年5月から6月頃に労働基準監督署から緑色の封筒が届くので、申告関係書類の確認を行いましょう。

緑色の封筒の中身については、複写式の申告書や領収済通知書(納付書)、賃金集計表が入っています。

具体的に申告関係書類の確認項目については、以下の通り。

  • 労働保険番号
  • 労働保険料率
  • 申告済概算保険料額
  • 法人番号

上記項目の内容に誤りがないことを確認して、万が一間違いがあれば労働基準監督署に問い合わせましょう。

2.賃金集計表を作成する

賃金集計表に、雇用保険の対象労働者と労災保険の対象労働者について、賃金総額と対象労働者数を集計して記入を行います。

賃金総額については、事業主が労働者に支払うすべての金額を指し、社会保険料や税金を控除する前の総額です。

具体的に賃金に含めるものと含めないものについては、以下のとおりです。

項目内容
賃金に含まれるもの基本給・賞与・通勤手当・残業代など
賃金に含まれないもの立替経費・見舞金・実費代償的な手当・傷病手当金
解雇予告手当・役員報酬

3.申告書の記入

賃金集計表の作成が完了したら、申告書の記入を行います。

申告書には、労災保険と雇用保険の対象賃金や、従業員に支払う見込みの賃金総額などを記入していきます。

しかし、労災保険と雇用保険の被保険者の対象は異なるので、金額を分けて算出する必要があります。

4.申告書の提出

申告書の作成が完了したら、7月10日までに提出を行います。

具体的に提出先と提出方法については、以下のとおりです。

項目内容
申告書類の提出先労働基準監督署・労働局・銀行・郵便局
提出方法窓口・電子申請・郵送

しかし、以下の項目に当てはまる法人は、申告書の電子申請が義務化されています。

  • 投資法人
  • 特定目的法人
  • 相互会社
  • 資本金が1億円を超える法人

具体的な方法は、厚生労働省の「労働保険年度更新電子申請操作マニュアル」を確認するようにしましょう。

5.保険料の納付

最後に、保険料の納付を行います。

原則として、保険料の納付は一括になりますが、概算保険料が40万円以上であれば3分割で納付が可能です。

納付方法は、銀行や郵便局などで可能ですが、口座振替による納付方法の場合だと、納付期限が緩和されます。

労働保険の年度更新を行う上でのポイント

労働保険の年度更新を行う上でのポイントについては、以下が挙げられます。

  • 64歳以上は免除対象になる
  • 1円未満の端数は切り捨てる

それぞれのポイントについて紹介していきます。

64歳以上は免除対象になる

高齢者の福祉の増進と雇用促進を図る目的で、雇用保険料の支払いには免除制度があります。

対象になるのは、満64歳以上の高年齢被保険者になり、労働者負担はもちろん、事業主負担も免除になります。

しかし、以下のようなケースについては、雇用保険の免除はされません。

  • 満65歳を過ぎて新しく就職したケース
  • 短期雇用特例被保険者や日雇労働被保険者のケース

上記のように、満64歳を超えて継続雇用される場合のみ、雇用保険料が免除になります。

1円未満の端数は切り捨てる

賃金総額に保険料率を掛けて算出した確定保険料額に1円未満の端数がある場合には、切り捨てを行います。

賃金総額に1,000円未満の端数がある場合についても、切り捨てを行います。

具体的には、1円の差額が発生する場合には、労災保険料に1円追加して記載します。

労働保険の年度更新の注意点

労働保険の年度更新の注意点については、以下が挙げられます。

  • 賃金の該当種類を確認する
  • 65歳以上の手続きには注意が必要

それぞれの注意点について紹介していきます。

賃金の該当種類を確認する

基本的に労働保険料は賃金総額をベースにして算出を行いますが、賃金に含まれないものもあるので、事前に確認しておきましょう。

具体的に賃金に含まれないものとして、出張旅費や災害見舞金、役員報酬などの賃金は含まれません。

賃金に含まれるものとしては、給与や賞与、手当などが挙げられます。

65歳以上の手続きには注意が必要

従来は65歳以上の高齢者には雇用保険が適用されませんでした。

2017年からは65歳以上の労働者も雇用保険の適用対象になりましたが、2020年3月31日までは雇用保険料が免除されています。

しかし、2020年4月1日からは65歳以上の高年齢者でも雇用保険料の納付が必要になります。

このように、労働保険の年度更新を行う際には、65歳以上の従業員も雇用保険の対象として手続きを行いましょう。

労働保険の年度更新がイレギュラーなケース

労働保険の年度更新がイレギュラーなケースについては、以下が挙げられます。

  • 事務所が複数ある
  • 賃金の種類や雇用区分によって支払日が異なる
  • 年度途中で各種変更がある

それぞれのケースについて紹介していきます。

事務所が複数ある

事務所が複数ある場合には、それぞれの事務所ごとに労働保険の年度更新を行う必要があります。

基本的に労働保険は、会社単体ではなく事業所単位で加入する必要があります。

しかし、同一の事業主や、労災保険料率に定める事業の種類が同じ事業所については、条件を満たせばまとめて手続きができます。

事業所が複数ある場合には、あらかじめ労働局などのホームページを確認して、まとめて手続きを行えるかどうか確認をしておきましょう。

賃金の種類や雇用区分によって支払日が異なる

労働保険は、賃金の種類や雇用区分によって支払日が異なるので、注意が必要です。

確定保険料の申告は、4月1日から翌年3月31日までの労働に対して支払われた賃金の総額をさします。

しかし、正社員とパートやアルバイトによって、給料の締め日や支払日が異なる場合には、集計対象となる賃金台帳の期間が異なります。

また、同じ労働日に対する賃金が分かれているケースについても集計する際には注意が必要です。

年度途中で各種変更がある

年度途中で各種変更がある場合には、原則として10日以内に変更届が必要になります。

具体的な変更内容については、所在地や名称の変更、事業の廃止などが挙げられます。

所在地を変更する際には、管轄が変更されて労働保険番号が変わるので、労働保険の年度更新を行う時には、間違えないように注意が必要です。

また、事業を廃止した場合については、廃止日までに支払った賃金総額を元に確定保険料を計算して、50日以内に確定保険料を申告と納付を行います。

労働保険の年度更新について理解を深めよう!

今回は、労働保険の年度更新について知りたい方に向けて、労働保険の年度更新の手続きの流れや労働保険の年度更新の注意点を紹介しました。

労働保険の年度更新手続きの流れについては、以下が挙げられます。

  1. 申告関係書類の確認
  2. 賃金集計表を作成する
  3. 申告書の記入
  4. 申告書の提出
  5. 保険料の納付

また、労働保険の年度更新の注意点を把握しておくと、トラブルを未然に防ぐことにもつながります。

今回の記事を参考に、労働保険の年度更新について理解を深めてみてください。

上記のように労働保険の更新などは非常に複雑です。

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